いざ異世界旅行!その3
なんだかんだで、まったりとお茶をしてから、お屋敷から長い廊下で繋がれている別棟に、アイシェさんと、セレム、後ろにローニャさんが付いて移動する。
長い渡り廊下から見える工房は、白いレンガの外壁に、鉄枠でできている窓がいくつかあり、屋根からは煙突が出ている。煙の色が、色が青くなったり、黄色くなったりと、色が変わっていくので、見ていて面白い。
「わぁ・・・」
これだけでも異世界なんだなぁ〜って感動してしまう。
今やおはようからおやすみまで、常時手を繋いでいるセレムが、
「あの煙は様々な金属や、魔石を燃やしているから、ああいう色になるんだ」
と、教えてくれる。なるほど〜。
「魔石ってそういえば、どういうものなの?」
「魔物がいた場所や、魔力の多い土地で採れるものだが、魔道具の核として使ったり、護符に込めたり、アクセサリーとして使う事が多いな。」
「流れるような丁寧な説明!そっかぁ、色々細工ができる物なんだ」
「カエちゃん、すぐ理解しちゃうのね〜。賢いわ!」
「ありがとうございます・・」
会話を聞いてたアイシェさんに、頭をなでなでして頂いた。
て、照れくさいぜ!あ、ちょっとセレム!手に力入ってる!痛い、痛い!!
長い廊下の突き当たりに、工房のドアが見える。
ドアの前に立っている兵士さんが、重そうな鉄の扉を開け、私達は一歩中へ入る。
「・・うわ!!」
工房の奥には、大きな黒い炉のようなものがあり、鉄の扉が時々開くと、轟々と燃えている火が見える。
炉を囲うように、透明のパネルが立ててあり、それが熱気を防いでるようだ。それでも暑さを感じる。その手前で小さなおじいちゃんみたいな小人・・・なのかな?忙しなく動いている。大きな四角い石の上で、金槌を使って金属同士を打ち付けたり、側では透明なガラスを手で伸ばして、クルクルとボールのように丸めている。
「わーーー、わーーーー!!!」
見ているだけで、興奮しちゃう!
異世界感〜〜〜〜!!!!これはワクワクしちゃう!!
「面白いか?」
セレムが、こちらを面白そうに見ているのに気付く。
金属の打ち付け合う音や、何かを切る音が大きくて、耳元で聞いてくる。
うぅ・・・、こっちは心臓に悪い・・。
「面白いよ!物を作れるって、すごいよね!!何作ってるのかな・・」
ちょっと大きな声で答える。
もう一度工房の中を見ると、右側に大きなテーブルがあり、リファートさんの姿が見える。何やら小さなおじいさん達と、テーブルに大きな紙を広げ、話し込んでいる。
「近くまで行ってみましょう」
アイシェさんにそう言われ、そばへ行く。
リファートさんも気付いたのか、手をあげて挨拶する。
「工房をちょっと見に来たの」
アイシェさんがリファートさんのそばで説明すると、リファートさんが私を手招きする。
「カエさん、カメラの形とか・・覚えている事だけでいいので、この紙に描いてもらえますか?図でもいいですし、部品とかでも・・」
お、おう・・・?デジタルカメラ・・じゃない方ですよね・・。
ああ、スマホが欲しい。って、スマホないんだ。
なんとか思いつく限りの、カメラに使われていた部品らしきものを書くと、小さいおじいちゃん達が「なるほど・・」「これ、作れるかもなあ」「上手いこと考えたなぁ」と、感心しきりで見ていた。うぅ、恥ずかしい。
でも、本当にカメラが出来たら、色々撮りたいな。
この世界の景色、すっごく綺麗だし。
「これは、楽しみだ〜〜〜!!!」
リファートさんが目をキラキラさせて、私の紙を大事そうに抱える。て、照れるーーー。あと、セレム、目が座ってる!!外交大事だから、笑顔になってくれ。
「発明品って、ここにも置いてあるんですか?」
リファートさんの後ろの箱に、乱雑に入っている物をちらっと見る。
「あるよー!これはね、食べた物を覚えていてくれる腕輪で、これは、計算を自動でしてくれるもの!」
次々出てくる!!っていうか、片付け方・・。
箱を重ねて置いてあるのに、あれこれ出すものだから、ガタガタいってる!
「リファートさん、危ない・・」
リファートさんが発明品を引き抜いた瞬間、箱が大きくぐらつく。
慌てて抑えようとした私の上に、物が落ちてくるのが見えて、瞬間目を瞑るとセレムの濃紺のマントで視界が遮られ、ガシャン・・!!!と、音がする。
何か落ちた??セレムが庇ってくれたのかな・・?
「せ、セレム?!ごめん・・大丈夫!?」
濃紺のマントを手で避けると、そこにはパチクリと目を開けた8歳くらいの男の子がいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・セレム?」
アイシェさんが「縮んでる」と呟くと、周囲は一瞬にして騒然となった。
え・・・えーーーーーーーーーーー????!!