王子の独り言15(終)
カエが呟き、そのまま眠ってしまうと、真っ赤になった俺は動けなかった。
・・・・・・・・今のは、幻聴じゃないよな?
とりあえず、ローニャや兄さん達、ハーリカには起きた事を知らせて来ねば・・
と、思うのに、体が動かない。
スヤスヤと安心しきった顔で眠るカエを見ると、照れくさくてカエを見られない自分と、本当だったら・・と思うと嬉しくて、今すぐにでも起こしてもう一度あの言葉を聞きたい自分がいて、どうしたらいいのか・・分からなかった・・・。
腰掛けていた体をずらして、カエの顔のそばまで近寄る。
「・・・・・・・もう一度言ってくれ・・・」
思わず呟く。
・・・覚えていなかったら、いつものように挨拶をして、きっとすぐに種の事や、植物の事を聞くのだろう。いつも通りに俺に接するんだろうな・・・。そう思うと胸がチリチリと痛む。
あの言葉を忘れたくない。
あの言葉を忘れて欲しくない。
そう思ったら、行動するしかないな・・と決意し、立ち上がる。
どこか遠慮していた気持ちはスッパリと消え、カエを見つめる。
カエの頬をそっと撫でると、ローニャを呼び、部屋を出る。
翌日。
カエが目覚めたようで、ローニャが珍しく大きな声で怒っていた。
あいつ、カエを気に入ってるからなぁ・・。
ドアをノックして部屋へ入ると、挨拶するものの、あれ?と、不思議そうな顔をして、俺をじっと見る。その様子が面白くて、思わず笑みが漏れる。
成長を止めていた事を説明すると、目を丸くし、ただただ驚くカエにローニャが説明する。
「セレム様は本来大人なんですが、片翼が来るまで成長を止めてらしたんです。」
「えっ?!そんなことできるの?ちょっとチートすぎない?!」
「片翼がある程度の年齢まで現れないと、成長を止める竜族は結構いるんです。」
へぇえええ・・?!と、理解はしているようだが、混乱しているようだ。
「え・・・じゃあ、今まではモルの実で大人になってたけど、今度はちゃんとした大人になるって事?っていうか、どうして突然そうなったの?」
「一つは、完全に大人になった方が何かあった際には、カエが守れるからだな。もう一つは、カエが求婚に了承してくれたからだ。」
一瞬の間があってから、驚愕の顔になるカエに、ニヤリと笑う。
畳み掛けるようにローニャが祝いの言葉を言うと、大慌てで否定するカエ。
その辺も予想通りだ。
「キスした」
「し、した覚えがありません!!!」
真っ赤な顔で否定し、逃げ場を探すようなカエだったが、あと一手・・。
「バリスが来た日だ」
思い当たったのか、ピタリと動きが止まる。
ゲームのチェックメイトを宣言している気分だった。
「え・・・だって、知らなかったし・・・ノーカンじゃない・・?」
「ノーカンが何かは知らないが、求愛した者の体のどこかにキスすれば、了承した事になる。」
そう・・。
その事実を、俺は言わなかった。
この世界のルールを知らないカエでは、仕方ない・・と思っていた。
でも、昨日の呟きを聞いて、逃げ道を潰す事にした。
あの言葉をまた聞きたいから。
俺のそばにずっといて欲しいから。
ああ、きっとお互いいい香りが出ているだろう。
言葉にならない声を出しているカエを、病み上がりだとわかっていても
止められない自分の気持ちをぶつける。
カエの前に立って、手を握り、耳元で囁く。
「もう絶対逃がさない。」
片翼のカエからいい香りがする・・。首筋の匂いを嗅ぐと、
カエの絶叫がこだまするが、俺は満足な気分に浸っていた。
これからが楽しみだ・・・と。
これにて、セレムサイド終了です〜。
甘々をとにかく書きたい!と言う一心で書き倒した気分です・・。
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王子の独り言お読み頂きありがとうございました!