王子の独り言12
カエの手を入念に洗い、植物の水やりを一緒にやり終えると、仕事の山をローニャにプレゼントされ、執務室に籠らざるをえなかった・・。・・くそ、あいつめ・・。
それでも、明日はどうなるか予測がつかない分、多めにこなしておいた方がいいだろう・・。手早く済ませ、できる限りの事をする。
書簡をローニャに送ってもらおうと、カエの顔を見がてら声をかけに行く。
ローニャに書簡を渡すと、ハーリカからの贈り物を身につけたカエを見る。
竜族の守り石・・・。実は青色だけでないが、気を利かせて俺の瞳の色をカエに送ったことに気付く。自然と頰が緩む。
様々な贈り物に恐縮して、お礼を書きたいと言うカエに、謙虚だな・・と話すと、十分に大切にされているから・・と、申し訳なさそうにするカエに、思わず微笑む。
「な、何・・?」
「大事にされてるっていうのは、理解してるんだ」
「・・・いや、これで大事にされてないって思うの無理があるでしょ?」
「俺はもっと大事にしたい」
指輪をはめたカエの手を取ると、良い香りがして嬉しくなる。
「本当は、ずっとここにいて欲しい」
「え?いるじゃん・・」
不思議そうな顔をして、俺を見る。
「・・・ここ」
そう言って、その手を俺の胸に持っていく。
ここに・・俺の中にいて欲しい、同時にカエの心に住ませて欲しい・・そう願って。
意味がわかった途端、真っ赤になったカエは、絞り出すような声でわからないと呟く。もっとわかってもらえるように、するからいい・・と、話すと、恥ずかしがって手を離したがるので、シレっと無視する。
と、悔しそうに見ていたカエが、突然俺の空いた手を取り、手の甲にキスした。
「・・・・・・・・・!!!!」
・・・・・・・・・・・・キスは、求婚に対する承諾の証。
・・・わかってる・・・。
カエは知らずに、悔しくてやり返しただけだ・・・。
求婚に承諾なんてしてない・・。
真っ赤になって、思わずしゃがみこんでしまう・・。くそ・・わかっていないからの行動とはいえ・・・ずるい・・。俺だけこんなに動揺してる・・・。
やり返しただけ・・とはいえ、キスされて嬉しい気持ちと、竜族のしきたりを知らないカエに、これ以上いると手を出してしまいそうで・・。自分を叱咤して、部屋を出て行った。
その日、なんとか耐えた俺は自分を褒めた・・・・。
翌日、花束だけは花瓶に活けて部屋を出た。
朝食を一緒にとるのは・・、まだ気持ちに時間が必要だったので、別々にとった。
少し緊張した面持ちで行くと、カエはいつものように挨拶をする。
・・・くそ、俺ばっかり動揺してる。
思わず目線を逸らすと、大丈夫かと心配される。
・・いかん、これから大事な実験に行くというのに・・・。
気を取り直して、カエの手を握ると、ホッと安心した顔になっていた。
そうだよな・・この顔を見ていたいんだから・・と、気を引き締めて転移する。
シューレの森は、把握していた東の開けた場所がやはり穢れていた。
ジワジワと・・確実に広がりを見せていた穢れの地で、カエはなんなく土の浄化の種を発芽させる。テュダの地に一緒に行った護衛の騎士も、これには驚く。
更に種が採れるように・・と、カエが張り切るが、胸騒ぎがする。
何かあればすぐ助けられるようにと、すぐ後ろへ控える。
種を蒔き、手をかざして念じるようにカエが目をつむる。
一瞬の間があり、その途端、穢れた地が眩しいくらいに光りだす。
あまりの眩しさに、目がくらんだ瞬間、大きな水音がし、
「カエ!!!!」
叫んだが、気付くとそこは薄い黄緑の花が咲き誇った花畑になっていた。
何度呼んでも、花が揺らいでいるだけだった。
なんやかんやであっという間に50話でした・・。
ブクマと星・・ありがとうございます〜〜!




