王子の独り言10
カエの持つ植物への言霊の力は、なかなか実る事がなかった作物まで結果的に実らせた。しかし、危惧していた事が現実になった。
ハーリカと相談して、俺の魔法の実験の結果実った・・という事にした。
カエが畑を見ている間に、ハーリカがそっとやって来て、
「陛下達に、事の顛末を余計なお世話かと思いましたが、伝えておきました。」
「・・構わない、礼を言う」
ハーリカも勘付いたのだろう・・。
穢れていない地域でも、作物が実りにくいのは、穢れによって汚染されつつある状態だという事を。そんな状態の地で、発芽させたり、森を治したとあれば、欲深いもの達がする事は、言葉にしなくてもわかる。
もちろん、絶対にそんな事態にはさせないが・・・。
ハーリカの領民が作物のなった畑を喜んでいる様子を、嬉しそうに見るカエの横顔を見て、胸が切なくなる。あの笑みだけは、必ず守る・・・。
ハーリカが「私にも、セレム様のお姫様を守らせてくださいね」なんて、カエを見ている俺にいうものだから、思わず吹き出す・・。そうだった・・いつも肩の力を抜けとばかりに茶々を入れてくるよな・・。
礼を言うと、嬉しそうに笑うから、俺も静かに笑う。
カエは沢山の野菜や、美味しいと言っていたララのお茶をもらって、嬉しそうだった。
・・・・・・ララのお茶の意味は、あえて黙っておいた。
ハーリカに、また来て欲しいと言われて、ニコニコ笑うカエがちょっと面白くなかった。
すぐにカエの手を握って、転移魔法で帰ろうとするとハーリカの苦笑する姿が見えたが無視した。
無事に帰ってくると、兄達から連絡が来ていると知らせが入る。
早速部屋へ戻ると、俺と同じ予想をした手紙の内容だった。
本城へ一旦来て欲しいとも書いてあったので、すぐに行く旨を知らせ、カエに伝えに行く。
ドアをノックして開けると、ララのお茶の香りがする。
ああ・・・ここだけ昼食の時のような、穏やかな時間がするな・・。
「ララのお茶を淹れたのか?」
ローニャから意味を知らされたのか、嬉しそうに聞く俺の顔をみると、照れ臭そうにうなづく。
飲んでみる?と言うので、快諾する。
緊張した様子で、ソファーに座った俺にお茶を置くと、じっとこちらを見る。
「・・・美味しいな。ホッとする・・・。」
にっこり笑うと、カエが照れ臭そうに顔を逸らす。
可愛い・・・。ずっとここにいたい・・・。
だが、カエの事を一刻も早く兄達に相談しなければいけない・・・。行儀が悪かったが、一気に飲んで礼を言って、立ち上がる。
ふいに「いってらっしゃい」という言葉に、足を止める。
カエが来て以来、そばにいる事が多かったので、あまり聞かない言葉だった。
「見送ってもらえるのも、いいものだな・・。」
「帰ってきたら、お迎えくらいしますけど?」
ああ・・・それはいいな・・。帰ったら、カエが待っててくれる。
「それもお願いしたい。」
「わかりましたー。」
ニコっと笑うカエに、意味が分かっているのか・・と思ってしまう。
カエの言葉に一喜一憂し、笑顔に、仕草に、翻弄されてる。
もっと・・俺を意識して欲しい。
もっと・・そばにいたい。
そう思って、カエの手をそっと握り、手の甲にキスをする。
途端、ブワリと片翼の香りがカエからする。
きっと俺も匂っているだろう。
「今日は本当に有難う。カエのおかげでテュダも助かった。
・・迎えて欲しいが、遅くなりそうだから、今日は先に休んでてくれ。
一晩だけでも、カエの中に俺を住まわせて欲しい・・。
そう願いながら、本城へ足早に向った。




