王子の独り言8
カエの言霊の力で大きくなったモルの実は、驚くべきものだった・・・。
大人になった俺は、体に合った服に魔法で調節すると、少し離れた所で様子を見ているカエを盗み見る。
真っ赤になって慌てふためき、照れている姿が可愛くて、やるべき事も、調べるべき事もあるだろうに、ツカツカと歩み寄って、本来の年齢の姿で、耳元で求婚する。
「み、耳元で囁くなって、さっき照れたくせに!!」
「大人だったら、プロポーズ受ける・・?」
唸るように照れて、なんとか言葉を繋ぐカエに微笑んでしまう。
「いや、大きいとか小さいとかで決めないよ?!あとのんびりまったりゆったりお付き合いって言ったからね?回数を増やしても変わりません!」
そんな受け答えを聞いて、今の俺でも、本来の俺でも・・カエは受け止めてくれるんだろうな・・そう思うと、ジンワリと心が温かくなる。無理強いはダメ!と、注意するカエから離れたくなかったが、嫌がる事はしたくない。
渋々離れると、カエがこちらを見ないようにしつつ手を出す。
「・・・手ならいいよ・・・。」
どこまでも優しいカエに相当甘えているな・・と笑って手を握った瞬間、元に戻った。
・・・・・嗚呼、本来の姿でカエを堪能したかった・・・。
カエの安心した顔を、ちょっと恨みがましく見つめてしまった。
それからというもの、カエは植物のコントロールが出来るようにと練習をした。
「何か役に立てたら嬉しいし・・・」
そう話す横顔に、仮にそんな力が無くても、片翼でなくとも、カエがいてくれれば
それだけでいいと思う。
そうこうする内に、兄からテュダに住むハーリカの作物の収穫問題について相談に
乗って欲しいと連絡が来た。
カエの植物のへの言霊の力の話をしたので、兄達も淡い期待が合ったのだろう。
上手くいくかはわからないし、それでもいい・・無理だけはするな、とも綴ってあり、会ってもいないカエを心配してくれる兄達の心遣いが嬉しかった・・。
カエの身の安全第一なので、ハーリカに厳重に秘密を守るよう約束して欲しいと手紙を出すと、返信が「大切な姫を必ずお守りします」と来た時は、ちょっと頭痛がした。長く片翼のいない俺をずっと心配していたハーリカだ・・。
張り切って出迎える用意してるだろうと、想像できた・・。
今まで城でしか過ごしていないカエに出かける事を告げると、弾けるように笑顔になり喜んだ。
笑顔に思わず見惚れると、後ろでローニャがニヤニヤする・・。
・・あいつ・・また何か企んでるな。
カエを竜になって乗せる事になると、その意味を知ったカエは真っ赤になって大いに照れていた。そんな様子も可愛らしかったが、ローニャによって出発直前にまた違う意味を知って、パニックになっている姿はちょっと面白かったが、黙っておいた・・・。
初めての空の旅は最初は緊張していたようだが、風景を楽しそうに見ていてホッとする。
目的地に無事着いて、ハーリカに久しぶりに会うと、カエの話を兄達から聞いていたのだろう。カエと、俺を嬉しそうに見つめるハーリカに照れ臭くなる・・・。
いつもと違う状況に、緊張していた様子のカエだったが、天幕の中の雰囲気にはしゃぐ姿は年相応だな・・と感じた。周囲にいた者達も、素直に喜ぶ姿に和んでいた。
お茶を用意してもらうと、カエは遠い故郷を思い出したのか
「・・・私の国も、似たような木がありました。そうかぁ・・今度は見て見たいなぁ」
どこか遠い目で、カップを覗く姿に思わず焦る。
「今度、一緒に見よう。」
ここに・・ずっといて欲しい。来年もその先も・・・。
どこか願いを込めて言うと
「・・楽しみにしてる。ありがとう。」
その言葉だけで、安心してしまう。
ふっと笑うと・・、ハーリカもそんな俺やカエを見て目を細めて笑う。