課題は的確に。
おもちという丸い生き物に、迷い込んだ地下から出口を教えてもらおうとついて行ったら、穢れている場所へ連れて行かれた・・・。うん、ちょっと遠い目をしたけど、現実に戻ってきた。
「これって、水が穢されてるって事でいいのかな・・」
そうなると、バリスさんから預かった水を浄化する種か・・。
こういう事、予測してたの?ちょっと優秀すぎやしないかい?
そう思いつつ、腰のポーチから白い種を出す。
「見たからには、浄化した方がいいだろうしね・・。」
でも、水の中じゃ種は浮いちゃうかな・・。
地上で蒔いてみたけど、結果を見ずに落ちちゃったしなぁ・・。
とりあえず黒い穢れの淵に種を植えてみよう。
「おもち〜、ちょっと離れててね」
「ミ!」
黒い淵は、ジュクジュクと泡が立っている。種・・大丈夫かな・・心配しつつ、いくつか蒔いてから、一歩離れてからしゃがみ、手を黒い淵の上にかざして念じてみる。
こんなに綺麗な所が、これ以上汚れるのは
嫌なので、たくさんの木がなって、
綺麗な場所に戻りますように!
綺麗な青い地底湖を思うと、どうしても咲いて欲しい・・
手の平がポカポカしだした。
体も温かくなる。
またさっきみたいに吸われるかな・・と思っていたけど、体の内側から光が
溢れてくるような感覚になる。
え?・・と初めての感覚に不思議に思って、目を開けると、
真っ黒だった場所は透明な水で満たされた小さな湖のようになっていた。よく見ると、水中には芽吹いた植物達が揺れていた。ユラっと揺れるたびに、水の中で花が咲き、また芽が出る。水の中はドンドン林のようになっていく。
そして、小さな湖の中が植物で満たされると、ユラユラと静かに揺れるだけになった。
「・・・浄化できたって事・・・?」
「ミーー!!」
おもちは嬉しそうに水の中へ飛び込み、中央の水が湧いている場所らしき所へ行くと、淡い光から、ピカピカと光る物体に変わる。
「え、おもち・・大丈夫?」
立ち上がろうとした瞬間、ズルッと足を滑らせ、水の中へ落ちる。
慌てて、顔を上げると胸くらいまでの深さだった。
「あ、びっくりした・・」
湖の奥を見ると、薄暗く奥に小さな光が見える。
苔が生えていないのかな・・。
もしかして、あそこが出口かも・・。
水から上がらず、そのまま泳いで行ってみよう・・と、足で地面を蹴って、水面を進む。
ピカピカと発光して喜んでいたおもちは、私の方へ戻ってきて、頭に乗っかると
嬉しそうにコロコロしていた。
向こう側の光が、徐々に光が大きく見えてきた。
水位は膝くらいの高さになったので、ちょっと足は重いけど、
だいぶ移動は楽だ。
そして、やっぱりお腹減った・・・・目まいもしてきたかも。
「おもち・・・危ないから手に持つ・・
「カエ!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・っへ?」
っへ?
大人セレムが突然目の前に現れた。
あれ、幻?あ、転移してきた?
そうこう思っているうちに、バシャバシャと大きく水音を立てながら、駆け寄ってきたセレムにギュッと抱きしめられる。
なんならぎゅうぎゅうに抱きしめられて痛い・・・。
「・・・・・・良かった・・・・・・・」
泣きそうな声に、顔が見えないけど、こっちも胸が締めつけられる。
そおっと両手でセレムの背中をあやすようにトントン叩く。
「心配かけてごめんね?大丈夫だよ・・」
「3日も探した」
「3日!??」
私の体感は1.2時間くらいかなぁ・・って思ってたのに3日!?
意識を長く失っていたって事なのかな・・・。
「ご、ごめんね・・・それじゃあ、相当心配したよね・・」
顔を上げたセレムが、私の顔を見つめて確認するかのように、恐々と触れてくる。
額を少し切っていたのか、そっと髪をかき分けると優しく撫でてキスしてくる。
「ちょっ、セレ・・」
頰にもキスしてきて、いよいよ体が固まってしまう。
いつの間にか腕の中に下りてきたおもちが、「ミ〜?」と見つめてる。
こら、見ちゃいけません!
「本当に生きてた・・・・良かった・・・・」
切なそうに、嬉しそうに目を細めて言うものだから、さっきまで怖かった事を不意に思い出して、ドッと安心感が押し寄せてきた。
・・何かあるとすぐ飛んできて、忙しいのに面倒を見てくれてたお陰で、この世界に馴染めたのはセレムのおかげだよね。ベタベタはしてくるけど、いつも喜んでくれるように安心できるように気遣ってくれるのもセレムだ。ギュウッて抱きしめて、顔をすり寄せてくるセレムが、す・・、好きだなぁ・・って思う。
うん、そっか・・・
心に住ませて欲しいって言ってたけど、私の心には
セレムはとっくにいたんだな・・。
そう思うと、ストンと自分の気持ちが腑に落ちた。
ついでに意識も落ち始める。
急にものすごい眠気で、体の力が抜けてしまって、「カエ?!」って言う声が遠くで聞こえる・・と思ったけど、そこで意識はプツリと途切れてしまった。