課題の量。
しゃがんでジッと見ると、丸い物体は黒目をぱちっと開けると、何度か瞬きして、
こちらを真似するように見つめてくる。
淡く発光してるけど、モフモフの毛で覆われているようだ・・。
「か、可愛い〜〜〜」
思わず手を出すと、後ろへあとずさる・・。
そうだよねぇ、こんな所に人がいたら驚くよね。
さっき食べたモルの実を思い出して、一つ取り出し、手に乗せてみる。
「・・・・食べてみる?」
そっと、手を差し出すとモフモフした丸い物体は「ミ?」と鳴いて、目をパチパチする。
「美味しいよ〜、甘いよ〜」
赤ちゃんに言うみたいに、話しかけてみる。
「ミ・・・」ちょっと戸惑っていたけど、そろそろと前に手の近くに寄ってきて、匂いを嗅いでいるのか、スンスンと音が聞こえる。やばい、可愛い・・。
意を決したように、指先に乗り、シャクっとモルの実を噛んでみると・・
「ミ!」と鳴いて、シャクシャク言いながらあっという間に実を食べてしまった。
そして食べ終えて「ミ?」と、手の上をモルの実を探し始めるモフモフ・・。
え、ちょっとこれ本当に可愛いんだけど・・・。
「ごめんねぇ・・、実はあるけど、帰れないと困るからもうあげられないんだ」
そう言うと、モフモフは「ミー・・」と鳴いて、手の平から下りていく。
うぅ、可愛いモフモフ・・さらば・・・。
と、私の足元をポンポンと飛び跳ねる。
なんとなく・・・なんとなーくだけど・・ちょっと思った・・・。
「もしかして・・・出口、知ってる?」
「ミ!」
「外へ出られる?」
「ミ!」
「案内してくれる?」
「ミー!!」
今は何も頼るものがない私・・・。
いきなり知らない生き物の言葉を信じていいか・・・?
でも、言葉わかってるっぽいしなぁ。
・・ちょっと考えたけど、どうせ何もできないなら・・行ってみるかー。
「じゃあ、出口まで連れて行ってくれたら、モルの実をお礼にあげるので、よろしくお願いします!」
私はモフモフした生き物に託すことにした。
手の平に乗ったモフモフをおもちみたいだな・・って思った。
おもちと呼ぶと「ミ!」と返事した。気に入ったようだ。
よし、君は今日からおもちだ!
「さて、おもち・・出口はどっちなの?」
そう聞くと、おもちは手から下りて、湖の方へポンポンとボールのように跳ねていき、水の中へトプンと入っていく。
「わ、ちょっと待って!」
急いでズボンの裾を捲り、膝上まで上げてついていく。
水の中に入れそうな段差のような場所があったので、そっと足をつけてみる。
良かった・・・冷たくない・・。
深い所でも、膝くらいの深さだったので多少濡れてもいいや・・と、思いながら、側から見たらボールが浮いているようだが、前へ進んでいくおもちについて行く。
ジャブジャブと水を掻き分けるたび、青の波紋が広がっていき、幻想的な光景にうっとりする。
「すごく綺麗・・・。」
さっきまで怖かったのに、現金だな・・なんて思いつつ。
しばらくおもちについて行くと、「ミ」と鳴いて、大きな岩場へ近付いて行った。
「ここに登るの?」
「ミ!」
そう鳴くと、おもちはポンと水から飛び出て、あっという間に岩場に飛び乗る。
「え、すご!!ちょ、ちょっと待ってね!」
私は岩場に上がれそうな場所を探し、なんとか窪みに爪先を引っ掛けて、岩場をよじ登る。
「ぶは・・!!!」
岩場を登ると、青い岩肌・・・でなく、地上で見た真っ黒なペンキみたいな穢れが辺り一面広がっていた。
「え・・・、もしかしてここも穢れてるの?」
「ミ」
周囲を見ると、50メートルくらいの半円形のような岩場になっていて、真ん中に小さな池がある。でも、その周りを黒いペンキのような穢れが囲っている。池から水が湧いているようだったが、黒い穢れに触れると、ジュッと音がして、蒸発している。
・・・これは、大変な所へ連れてこられたようだ・・。
ちょっと目が遠くなる・・。