お礼は3割り増しで。
明日はシューレという森へ行く・・という事で、中庭に植えてあるモルの実をいくつか採っておく。
私とセレムで持っておいて、何かの時に使えるようにだ。
まぁ、使わないに越した事はないけど・・。
あと、個人的にモルの実が美味しいので、土に植えて発芽をお願いしたら、
あっという間に実った。わーい、ありがとう!
つまみ食いしておいた。
籠の中にモルの実を入れて、ローニャさんと部屋へ戻ると大きな箱が所狭しと置いてあった。
「え???なにこれ???」
「・・どうやらハーリカ様からの贈り物のようです」
「野菜かな?」
「・・・・・・・・・・・中を確認いたしましょう」
ワクワクしながら箱を開けると、ローニャさん曰く、テュダの名産品と名高い綺麗な色彩の絨毯だったり、鉱石や魔石で細工されたアクセサリーが入っていた。
野菜はないのかぁ・・と思っていると、蜂蜜とお茶、お菓子も入っていた。
さすがハーリカさん・・・私をよくわかってる。
「明日、お菓子持っていこうかな・・」
遠足のノリだが、行く先は魔物が出るし・・お菓子を食べて、のんびりって場合ではないかな・・と、ちょっと冷静になって、お菓子を箱に戻す。うん、次回にしとこ。
「今回は、こちらをお持ちになった方が良いかと・・」
ローニャさんが、アクセサリーの箱を開けて見せてくれた。
艶消しされた銀色の指輪に、蒼い宝石が埋め込まれたものだ。
蒼い宝石は、淡く発光している。
「うわぁ・・・綺麗だね。」
「竜族が守り石と呼んでいるもので、危険があった時に一度だけ身代わりになってくれるんです。」
「え、すごいね?!」
「ええ、すごいんです。ですから、今回はこれを付けていく事を強くお勧めします。」
「強く・・・あ、はい」
そっと薬指に指輪をはめてみる。
「あ、ピッタリだ!」
「魔法で調節可能です」
「魔法、万能すぎない?!」
と、ドアのノックする音が聞こえる。
「はーい」
声を掛けるとセレムが入ってくる。
「ローニャ、悪いがこの書簡を執務室へ持っていってくれ」
「かしこまりました」
「ありがとう」
王子様は忙しそうだ・・。
「ハーリカからの贈り物を身につけたのか?」
「あ、うん・・。なんかこんなに貰っちゃって悪いような・・」
「これでも足りないくらいだぞ?」
「いや、もう十分です!!!手紙とか、送る文化あるよね?お礼を書きたいんだけど・・」
「ああ、そうだな・・。じゃあ、用意させる」
良かった・・・。せめてお礼を言わないと申し訳なさすぎて・・
「カエは謙虚だな」
「食い意地は張ってるから、欲深いと思うよ?」
「これだけの事をしたんだから、もっと・・と言っても」
「どんだけの事をしてるか実感がわかないし・・、もう十分私は大事にされてるよ」
ふっと静かにセレムは笑う。
「な、何・・?」
「大事にされてるっていうのは、理解してるんだ」
「・・・いや、これで大事にされてないって思うの無理があるでしょ?」
「俺はもっと大事にしたい」
セレムが指輪をつけた手をそっと握る。
う、その甘い顔やめれ・・・。
「本当は、ずっとここにいて欲しい」
「え?いるじゃん・・」
「・・・ここ」
そういって、セレムの胸に私の手を置く。
うわーーーーーー!!!!
なんかもう砂糖菓子を口いっぱい詰め込まれたー!!!
にっがいコーヒー飲むぅううう!!!!
「・・・・わかんない・・・・・」
「大丈夫だ。わかってもらう」
「言い切ったね?!っていうか、恥ずかしくて死にそうなんで手を離して!」
顔から火が出てると思う・・。
ニコニコと余裕の笑みのセレムが悔しくて、なんかやり返したい・・・。
セレムの空いた手をぐいっと引っ張って、手の甲にキスしてやった。
一瞬の間があって、セレムが見た事ないくらい真っ赤な顔になった。
やられたらやり返してやる!!!
倍返し・・・は無理だけど。