現実と架空の世界。
無事、2つの種が発芽してくれて、種を再び大量収穫できたので、バリスさんは感動しきりだった。
「まさか、こんな一瞬でできるとは思っていなかったので・・。これは兄上にも報告せねば・・。あとはこの種が、穢れた土地で発芽するかも見てみたいな。」
「それだと、シューレの森がいいかもな・・。あそこは魔物も多い」
二人は、植物の種を見ながら、どこへ植えようかと相談している。
私はというと・・、ローニャさんにお茶菓子をもらって、もそもそ食べている。
あ、このプチタルトみたいなの美味しい。
いきなり拾われて、お城で大事にされて、ちょっと申し訳ないなぁ・・・と、思っていたので、どうやら役に立てたので、今日は特にお茶もお菓子も美味しくいただける。
3個目のプチタルト、食べようかな・・と思っていると、セレムが
「カエ、明日シューレの森へ行って実験してみたいんだが、一緒に来てくれるか?」
「もちろん行くよ〜!種が発芽できるか見たいし」
おお、またお出かけか!楽しみだ!!
と、ちょっとワクワクしていた私に、バリスさんが
「あそこは魔物が出るから、くれぐれも気をつけてくれよ。まぁ、セレムがいれば大丈夫だと思うが・・。」
あ、やっぱり気をつけた方がいいんですね。
セレムの戦う姿なんて見たことないけど、えらい強いのは知っているので、多分大丈夫・・かな?
「カエさん、私は取り急ぎ兄上の方へ報告のため戻りますが、また近くこちらへ伺いますね。ああ、あと種の事と、ご自身の力の事は、くれぐれも安全のためにご内密にお願いいたします。森へ行く際には、ぜひ御身を大切になさって下さいね。セレムを盾代わりにいくらでも使って下さい。」
「た、盾?」
「丈夫が取り柄の竜族ですから。」
すっごくいい笑顔で答えたバリスさんは、多分半分以上本気のようだった・・。
ちろっと横に立っているセレムを見て、
「わかりました!活用させていただきます!」
「・・・・おい」
ぜひとも身の安全のために役立ってもらおう。
バリスさんが手を差し出したので、握手かな?と思って手を差し出すと、バリスさんは片膝をついて私の手の甲に騎士がするように、静かに唇を寄せる。
「・・・・・・・・っ!!!!!」
イケメンの見上げてくる様子に心臓が止まる。マジで。
「カエ様、貴方がなさってくださった事をどれほどの感謝を込めても、お礼をし尽くす事ができません・・。このご恩、竜族フォンタム家は生涯忘れる事がないと誓います。」
「は・・・はい・・」
真っ赤な顔の私の脳内では、リングでぶっ倒れて「レフェリー!こいつもう死んでるぜ!」っていう声しか聞こえない。マジで死にそう・・・。イケメンの騎士が誓う姿なんて・・・死ぬ・・。
転生ものとか「きゃっときめき〜!」みたいな描写だけど、こんなん死ぬよ。
微笑を浮かべて、バリスさんは立ち上がると、仏頂面のセレムの肩に手を置いて
「セレム、頼んだぞ。」
セレムはゆっくりうなづくと、私の手を握る。
バリスさんはフッと笑ってお兄ちゃんの顔になる。
仲の良い兄弟っていいな・・。
ふと弟の事を思い出した。あいつ、私のアイス黙って勝手に食べたっけな・・絶対許さん。
バリスさんは、半分に分けた種を持って、転移魔法で慌ただしく帰っていった。
一瞬、部屋が静かになる。
「・・・・カエ、手を洗って清めよう。」
「待って、第一声がそれ?!」
「さっきバリスにキスされた方を入念に洗おう」
「ちょっと待っ・・・いてて、本気で手をひっぱ・・っちょー!!!」
「カエの手は俺のものだ。」
「サラッと恐い事言わない!私の体は私のものーー!!!!」
・・・結局、入念に石鹸でセレムに手を洗われてから、日課の植物の水やりをビッタリくっついたセレムとするのだった。し、仕事しなよ〜〜〜〜!!!!!