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突然問題提起。

2番目のお兄さん・・いわゆる次男のバリスさんは、物腰の柔らかい人だった。

濃紺の髪に、濃紺のまつ毛。綺麗な形の眉、薄いグレーの瞳はじっと見ていたくなるくらい綺麗だった。あと本当に美形。めちゃくちゃ美形。王子様って美形必須なのかな?


バリスさんは銀色の細いフチの付いた眼鏡を少し指で上げると、柔らかい声で

食後のお茶のカップが片付けられる様子を見ている私に話し始める。


「カエさん、この度はテュダの地がお世話になりました。宰相として、厚く御礼申し上げます。」


静かに礼をするので、私は慌てた。


「い、いえいえ!こちらこそ突然来たのに、セレム・・さんにお世話になりっぱなしで・・。こちらこそ本当に助かっています!あの・・ありがとうございます。」


お礼をすると、右隣から「セレムさん・・」と笑う声が聞こえる。

おい、こら。


「昨日、セレムから話を聞いて驚きました。そして、もしかしたらこの世界全体の問題を大きく変えてくれるのでは・・と思い、今朝こちらへ参りました。」

「世界全体の問題?」


な、何??

そんな深刻な問題を私ごときが何かできるの?

ドキドキしつつ、バリスさんを見る。


「この国、そして世界には魔物がいるのはご存知ですね?」

「はい。」

「魔物は人を襲ったりするので困った面もあるのですが、魔物からしか取れない素材もあり、その恩恵に預かるのも、また私達なんです。けれど、先の大戦でメリットとデメリットのバランスが大きく変わってしまったんです。」

「戦争で・・?」


確か30年前の話・・だよね。


「そう・・・、この世界で2番目の国が、1番目の国を得ようと争いを始めたんです。他国も巻き込んで・・。そのために多くの血が流され、土地が穢れてしまったんです。昔からあった作物は減り、植物がなくなってしまったり・・。以前は、魔物が住んでも土地が浄化されていたのに、どんどん穢れが広がるようになってしまった・・。」

「え?戦争は終わったのに?」


「・・・・そうです。どの国も戦争が終わってもなお・・です。我々は神の平和の教えに反してしまったから・・」


え?でも、そもそもコルトの国の人は、巻き込まれただけじゃ・・


「止められなかったんだ。罰があってもおかしくない。」


セレムがハッキリ言い切る。

そんな・・。なんだかやるせなくなった。


「そんな時、セレムから貴方の話を聞き、もしかしたら・・と思って」


そういって、ジャケットの内側からバリスさんは白い包みを出して、セレムと私の前にそれを広げる。

中には、2つの種がある。


薄い黄緑の丸い形の種と、薄い白いひまわりみたいな種。


「綺麗な種ですね。」

「大戦以前はどこの国にも生えていたものなのです。こちらの薄い黄緑の種は土を浄化する種・・。白い種の方は、水を浄化する種です。けれど今はどこにもありません。」


これを増やせばいいのかな・・・?


「貴方の話を聞いた時、穢れの多い土地を持つ国が貴方を狙うだろうと思いました。」

「えっ!!?」

「コルトも穢れはありますが、他の国はその比ではないのです。この種を苗木にし、穢れた地域に植えて自生できるようになれば、その危険性も減る。なおかつ、我が国としては主力産業の一つにもなる可能性もある。」

「美味しいですねぇ。」


感心したように話すと、バリスさんはにっこり笑う。


「最後の産業はおまけです。重要なのは貴方を守る事です。ただ、無理強いはしませんし、うまくいかなかったら、次の手を考えますよ。」


セレムがテーブルに置いていた私の手をそっと包む。

・・・昨日慌ただしく出かけたのは、このためだったんだ・・・。

そう思ったら、嬉しくて、胸がぎゅっとつかまれるような気持ちになった。

私はバリスさん、セレムを見て、


「・・・色々と考えてくださって、本当にありがとうございます!種を大きくしたいです!お手伝いさせてください!!」


やるぞーーー!!!!

私の安全のためと、この世界のために!!

と、ついでに産業のために!!!!




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