視察の副産物。
部屋へ戻って、ローニャさんから着替えを受け取り、紺のワンピースを着る。
下着は地球と似てるし、服も自分で着替えられる形の物で良かった・・。
転生もののコルセットとか、絶対無理〜って思ってたし。
どうも青が好きらしいと思われたのか、最初は紺系が多かったが、なんか最近は誰かさんの瞳の色の服が増えているような気がして、執着・・というワードが思い浮かぶ。
ま、いっか。着れればいい!
深く考えない方がいい時もある!
ララのお茶は、せっかく頂いたのでローニャさんに淹れてもらう。
こ、婚姻とか考えない!!
「はぁ・・・美味しい。」
桜が舞っていた季節に香る甘い匂いにうっとりする。
「淹れ方、ローニャさん教えてくれる?」
「結婚を考えてらっしゃるのですね!」
「そんな、ああ成る程!みたいな顔しないでください。純粋に味を楽しみたいという感情からの言葉です。」
うっかり「今ならお得なこの商品も・・!」みたいな感じで、結婚を進めないで欲しい。王子はエアコンとか、お茶とか、洗剤じゃないだろうに・・・。
「まあ、遅かれ早かれ・・」
「いえ、早いことだけはないですよ?」
本当にサラッと怖い事言うわ〜・・。
まぁ、そう言いつつ淹れ方を丁寧に教えてくれるけど。
ちょうど自分でお茶を淹れた時、トントンとドアをノックする音がすると、セレムが入ってくる。
「カエ、すまない・・。来て欲しいと言ったが、急用が入って一旦出かける。」
「え、帰って来て早々に大変だね。」
王子様とはかくも多忙な生き物だな・・・。
「ララのお茶を淹れたのか?」
嬉しそうにお茶を見る。
婚姻というワードと羞恥心を頭の奥底へぶん投げる。
「あ、うん。ローニャさんに教えてもらってお茶淹れてみたの!飲んでみる?」
「・・・うん、貰おうかな」
なんというか照れ臭そうに笑ってソファーに座るセレムに、そわそわと落ち着かない気分だったが、お茶の入ったカップをソーサーに乗せ、セレムの前に置く。
そっとお茶を飲むセレムを思わずじっと見てしまう。
「・・・美味しいな。ホッとする・・・。」
心底嬉しそうに笑うから、もうなんかそわそわどころじゃなくなってきた。
「・・・よ、良かった・・です。」
くっ・・・!!!!
セレムからいい匂いがする・・・。
思わず顔を逸らすと、小さく笑う声がする。
目線だけ戻すと、セレムはゴクゴク飲んで、カップをソーサーに戻す。
「行儀が悪くて、すまない・・。行ってくる。」
本当に忙しいんだな・・。ちょっと眉を下げて笑っているセレムを見ると、少し歯がゆい。
「うん、気をつけてね。いってらっしゃい。」
そう言うと、少し驚いてニコッと笑う。
「見送ってもらえるのも、いいものだな・・。」
「帰ってきたら、お迎えくらいしますけど?」
「それもお願いしたい。」
「わかりましたー。」
私もニコッと笑ってみる。
私が出来る事なんて、それくらいだし。
セレムは私をじっと見て、そっと私の手を握ると、すっと持ち上げ、
そっと手の甲にキスをする。
「・・・・・・・・・・・・・!!!!!」
ん?
んんーーーーーーー????
んんんーーーーーーーーーー!!!!!
「今日は本当に有難う。カエのおかげでテュダも助かった。
・・迎えて欲しいが、遅くなりそうだから、今日は先に休んでてくれ。」
そっと手を離されると、良い香りをまといながらセレムが部屋を出ていく。
キスされた手の甲が、熱を持っているように熱くて、
その手をどうしたらいいか・・
多分真っ赤であろうこの顔の熱もどうすればいいか・・
自分の気持ちを持て余していた私を残して・・。




