視察終了。
なんかちょっと甘い空気の中で食べるお昼は、だいぶソワソワした。
甘いのはお菓子だけでいいと思いまーす。
ちょうどお昼が食べ終えた頃、ハーリカさんが領民さん達と一緒に馬に乗って戻ってくる。
領民さん達は、一様に目を丸くして畑を見て、
「奇跡だ!!!」
「有り難い!!!」
「ここ最近、見たことがないくらい作物が元気だ!」
と、大喜びだったのでセレムの後ろに隠れていた私は大いに照れた。
良かった〜〜〜。このまま作物がスクスク成長しますように!
領民さん達は、セレムに土下座じゃない?!ってくらいにお礼を言っていた。
感謝の仕方、半端ないなぁ・・。
残って欲しそうだったが、私を心配して転移して帰ることになった。
ハーリカさんは、私が好きだと言ったララの花のお茶を、薄桃色の袋に入れてプレゼントしてくれた。可愛い。
「作物と森の報告も兼ねて近くお礼に参りますが、またこちらへも遊びにいらして下さい。秋は実りの季節で美味しい物も沢山ありますから。」
「はい!ありがとうございます!」
美味しい物・・という響きに、めちゃくちゃ良い返事になった・・。
ふふっと笑いつつ、ハーリカさんはガッシリと大きい手で握手してくれた。
「セレム様が、あのように嬉しそうにしている所を久々に見ました。長く待っていらした片翼に会えた喜びもあるのでしょうが、カエ様のような優しい方だからこそでしょう。どうぞお二人仲良くお過ごし下さいね。」
パチっとウインクされて、ドキッてしてしまった・・。
イケオジのウインクの破壊力ーー。
後ろでセレムが面白くないという風な仏頂面になってたけど見ないふりをした。
護衛騎士さん達と、私、セレムは挨拶を終えると、一瞬で転移魔法で帰る。
領民さん達に、これでもかと持ちきれないほどの野菜を抱えて・・。
帰ったら食べるの楽しみだなぁ〜。
「ただいま〜〜〜!」
飛び立った大きなバルコニーに、一瞬で戻ると、ローニャさんが綺麗なお辞儀で迎えてくれる。
「おかえりなさいませ。ご無事で何よりです。」
「こちらは変わりないか?」
「はい。」
「では、カエ、一度部屋へ戻って一息入れてから、話があるから俺の所へ後できてくれ。」
「はーい」
帰ってくると、セレムは足早に仕事なのか執務室へ・・と、護衛騎士さんを連れて行ってしまう。色々やらかしちゃったからなぁ・・仕事、増やしちゃったかな・・。心配していると、ローニャさんがいつもああですから大丈夫ですよ、と話してくれた。
そうだよね・・気にしても、私が出来る事は今はないし。
「そういえば、ハーリカさんっていう領主さんにララのお茶を貰ったんだ!
すっごく美味しかったから、ローニャさんも一緒に飲まない?」
「婚姻のお祝いで飲まれるお茶ですので、私は遠慮しておきます。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・こんいん」
「結婚のお祝いですね。」
「あ、うん・・・それはわかる。わかるけども、私まだ結婚してない。」
「時間の問題ではないでしょうか?」
「いやぁ?!」
竜族の人って、ちょっとせっかちやしないかい?
あの・・プ、プロポーズとかされちゃったけど、そもそも一回も「好き」とか
言われてないし・・・。あれ、もしかして言わないの?空気読め?
いや、この場合匂いを読め??
あーーーーー、竜族わからない事が多いよー!!!
「ローニャさん、竜族のお付き合いの仕方・・みたいな、わかりやすい本とかあります?」
「まぁ、やはり求婚をお受けになるんですね?」
「・・・あれ、ちょっと待って・・・。私、求婚された事言いましたっけ?」
「あら、あちらのお花が綺麗に咲いておりますわ」
「分かりやすいくらいにはぐらかした!!!」
一体、どこで情報が漏れた?!
ローニャさんのしれっとした顔に、これは気をつけなくては・・と、
警戒心を強めるも、美味しいお菓子を出されて、あっけなく解けた。




