表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/118

改善結果。


サワサワと木々の葉擦れがする森になった場所を、しゃがんでいた私は立ち上がって見上げた。

まさかお願いしてみたら、こんな一瞬で戻るなんて聞いてない・・。


「カエ!体は大丈夫か?」


セレムが慌てて駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んでくる。

アップになった美少年のが心臓に悪い。


「だ、大丈夫・・ありがとう。試しに力が送れるかなって思って、お願いしつつやってみたんだけど、こんな一瞬で戻るなんて思わなくて・・かなりびっくりしてる・・・。」

「だろうな・・俺もだ。まさかここまでとは・・」


セレムは、キュっと私の手を握る。

その手の温かさに、強ばっていた体から力が抜けた。

ハーリカさんも、私達のそばへやって来て、


「お話では聞いておりましたが、ここまでとは・・。いやはや驚きです・・。」


周囲を見渡して、嬉しそうにニコニコしている。


「いやぁ・・私も初めての事で驚いてます。これで川下のハーリカさんの畑に栄養が行けばいいんですが・・」


そういえば、この近くに流れる川から栄養が流れていくはず・・。

川はどこかな・・


「ハーリカさん、川はどの辺りにありますか?」

「すぐそこです。5分ほどなので、歩いて行きましょう」


そう言って、ハーリカさんが案内してくれる方へと、皆で歩いていく。


さっきまで鳥も見かけなかったのに、木の上に止まってチチチ・・と鳴いている。

新緑・・といった色合いの木々は綺麗で、歩いていて気持ちよかった。


「綺麗・・・気持ちいいねぇ」

「ああ、こんなに綺麗な森はこの国にはない」

「え?!そうなの?」

「ああ、カエの言ってた、土の問題もあるかもしれない・・。今後調べる必要がある。」


どこか遠くを見つめるセレムの横顔は普通の少年と違って、大人びて見える。やっぱり国を守る王子様・・なんだなぁ。私の中学生の頃の男子なんて・・・まぁお子ちゃまだったな。私もだけど。


「着きました。こちらが川です。」


河原に着くと、ハーリカさんが教えてくれる。

辺りには白い平べったい小石があり、その奥にキラキラと日の光が反射している川があった。


「わぁ・・綺麗!」


うちの近くの川はお世辞にも綺麗ではなかった。

それでも昔よりは綺麗になったって、近くに住むばあちゃんが言ってたけど。


セレムに川の土を触ってみても大丈夫かと聞くと、一緒に川のそばへ行って、土が取りやすい所へ案内してくれた。


少し冷たい水の中から、土を落とさないようにすくいだし、そっと耳に当てる。

小さいけれど、高い囁くような声が聞こえる。



キモチイイ・・

ココ・・アタタカイ・・


良かった・・どうやら大丈夫そうだ・・。

川の土に「教えてくれてありがとう」と囁くと、土はわずかに笑うように光る。

そっと手を水の中に落として、土を戻す。


そばにいたセレムに、


「とりあえず、大丈夫そう。観察も兼ねて森の手入れもしていけば、畑も実っていくかもだけど・・。土にもお願いできそうだし、テュダに戻って畑にも力を送ってみたいな。」


セレムに言うと、後ろでハーリカさんは、心配そうに


「しかし、お体は大丈夫ですか?あれほどの力を使ったのに・・」

「体は大丈夫です。特に疲れも感じてないし・・、少しでも力になれるようなら、

早い方がいいかなって・・。」


セレムは少し考えていたようだが、


「わかった・・・一旦戻って、実験してみよう。ただし、今日はそれで終了だ。カエの体調も様子を見た方がいいだろうし・・。」


そう言って、セレムは腰につけていたポーチから、包みに入ったモルの実を出した。


「お前が大きくしたモルの木から取ってきた。念のため食べておけ。」


そういうと口を開けろとばかりに、セレムが私の口をトントンと指で指す。

え、まじですか?公衆の面前であーんですか???

あ、でもさっきから土を触って確かに衛生的ではないか・・・と思い直し、目線を逸らしつつ、口をそっと開けると、モルの実をセレムがそっと入れてくれた。


うあぁあ、はっず!!!

セレムからふわっと香りがする。


目線を戻すと、セレムの目元がちょっと赤い。


「・・・・・・・セレム・・、今、ちょっとこっち見ないで・・・・・・」


きっと私も顔が赤い。

さっと目線を逸らすと、セレムがふっと笑った気配がした。

く、くそ・・・・!!!セレムのくせに!!!


モルの実は、マスカットの味がして美味しかった。

帰ったら、取って食べよっと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お願いしたら一瞬で戻った森。。。。 無数の芽が出て ぐんぐん育って 森になる。。。。 映像になったらとても綺麗そうです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ