現地は大変。
川が分かれる森へは、私とセレム、ハーリカさんと護衛の騎士さん2人で行く事になる。
私の力を使うかもしれないので、人数は絞った方がいいだろうと考えての人数配分だ。まぁ、そうだよね。
種と苗はテュダ用と、森用で分けて持って行くことにする。
「よし、行くぞ」
セレムがパチっと指を鳴らすと、集まった私達の足元に魔法陣ができる。
か、かっこいい〜〜〜。異世界〜〜〜!!
一人テンションが上がる私の手をセレムが握る。
「目を閉じていた方がいい。初めては酔う可能性がある」
「う、うん?」
慌てて目を閉じると、スゥっと体の内側が引っ張られる感覚になる。
うわ、いきなり来た!
足元が吸われるような感覚になって・・
不意に、トンっと足元に地面が着く感覚になる。
あ、これエレベーターに似てる。
「着いたぞ」
セレムの声に目をそっと開ける。
辺りに森だったんだろうな・・と、思われる焼けた木が重なった場所が見える。
「大丈夫だったか?」
心配そうに見つめるセレムに、コクっとうなづくとホッとしていた。
「こちらが3年前、山火事で焼けてしまった森です。焼けたのは確認していたのですが、3年前と比べてみると、わずかに緑が増えた・・くらいの違いですね。」
ハーリカさんが説明してくれて、私も周りを見渡す。
確かに、草木はわずかに生えているけれど、森・・とは呼べないな。
さっきみたいに土の声が聞こえるかな・・・?
そう思って、土を掬って耳に当ててみる。
サムイ・・・
土ガカタクテサムイ・・・
囁くような小さい声だった。
でも聞こえた!!土の声も聞こえるって事は、植物も意識してなかったけど
聞こえるかも?
私は、そばにあった小さな木にそっと耳を当ててみた。
火事デツチカタイ・・・
もう少し大きく聞こえた!!わーーー言霊の力?なのかな??
ともかく原因はわかった!
「ハーリカさん、セレム、森が回復しないのは火事で土が固くなったからみたいなんです。この土って、燃えたり熱が加わると、固くなるんですか?」
ハーリカさんとセレムは目を丸くする。
そりゃいきなり土に触ったり、木に耳を当ててみればなぁ・・。
でも、ふと思い当たる事があったのか、セレムが
「鉱山の土は、確かに粘度が高い。南側は焼き物が名産だし・・熱が加われば土が固くなる性質があるのかも・・。」
「南側のシューレも、農産物の収穫量が減ってきている・・と言われていますし、可能性はありますね」
ハーリカさんとセレムで、いくつかの疑問点を点を繋ぐように推理している。
植物が育つのは、土と水とお日様の力だもんね。
言霊の力は植物に効くってセレムが言ってたけど、土はどうだろ?
しゃがんで土に手を置いて、土が柔らかくなりますように・・・
植物がたくさん育って、豊かな森になりますように・・
そう願って手からパワーが流れるイメージで目をつむる。
と、手がじわじわ暖かくなって、体もほかほかしてくる。
わぁ、なんか気持ちいいなぁ〜と思っていると、
「カエ!!!!!」
セレムの声がして目を開けると、私の足元から緑の草が円状にものすごい勢いで広がっていく。
ハーリカさんとセレム、騎士さん達も慌てて自分の足元をみる。
「・・え・・?ええ???」
草が広がったところから、さっき耳を当てた小さな木や、倒れていた木々がどんどん大きくなり、奥の方も木が伸びていくのが見える。目を丸くしてあっけにとられていると、さっきまで森と呼べなかった場所が、木々が茂り、葉擦れが聞こえるほどの森になっていた。
しゃがんでいた私を囲うように・・・。