現場確認。
お茶を頂いて、一息つくと早速ハーリカさんに畑を案内してもらう。
広大な畑は、向こう側が霞んでみえる・・・。
主に麦や大豆、根菜類、葉物類を多く作ってるらしいけど・・、それほぼ全部じゃない?
「果物や、キノコ類はまた違う地方ですね。近年、困った事に多く食べられる物が全体的に収穫量が減ってしまって・・・。テュダが誇る農作物ですから、難儀しているんです。」
「なるほどぉ・・・。」
3分の1を占める農作物の主力が減るのは、国としても心配だもんね。
畑にはすでに種は蒔かれているけれど、発芽がやはり例年より遅いらしい。
大きく育て〜って言うにも、こんなに広いのは初めてだしなぁ・・。
「ハーリカさん、畑の土を触ってみてもいいですか?」
「はい、構いませんが・・・」
畑なんて広範囲な所で、言霊の力がどう働くかわからない・・。
土を触りながら、どうして実りが悪いのか・・
どうすれば作物が育つのか考えていると
小さく囁く声が聞こえた。
「え?」
周囲を見るけど、セレムとハーリカさんは、何やら話しているし、護衛の人達はそれを静かに見ているだけだ。
おかしいなぁ・・手に掴んだ土を見ると
キコエル?
コエ、キコエル?
んんんん????土から声がする?!
「き、聞こえる・・・よ」
小声で土に向かって言うと、手の中の土がふわっと温かくなったのを感じる。
手の中の土に耳を近づけると、さっきりより、はっきり声が聞こえる。
『森が焼けたからね・・いいお水が川から来ないの。』
『だから大きくなれないの。』
「森・・・・?」
ふと考える。
森が燃えて、川から栄養が来ない・・・
なんだっけーー授業で、森と生きる・・みたいなタイトルで、ドキュメンタリー観たな・・。確か、森にある微生物の力が川に流れて、その周辺の地域の農作物とか、果ては海産物がよく採れる・・
だから、森を守ろう!って、いうの観た記憶が・・。
コンクリートに囲まれて、どう守れって言うんだ!って思ったな・・。
いや、それよりも・・・
「ハーリカさん、この辺りで燃えた森とか・・ありますか?」
いつの間にかこちらをじっと見ていたハーリカさんに声を掛けると
「森・・ですか、確かに3年ほど前にちょうど川が分かれる所にある森が、山火事で焼けた事が・・・」
「そこかな・・・」
私が考え込んでいると、セレムがそばに来て、私の手の中の土を見る。
「何かわかったのか?」
「・・・私も初めての事だから、ちょっと戸惑ってる・・。この土の声が聞こえたの・・。植物も聞こえた事がないのに・・。でも、私のいた国では、森にある栄養が川を流れて、田畑を栄養豊かな土地にするって学んだの。」
力の事がバレないように、小声でセレムに話すと、セレムはハーリカさんに森の位置を詳しく聞きたい・・と、地図を持ってくるよう伝える。
早速地図が用意され、土の声が聞こえたことは伏せたまま、森から栄養が来る事を伝えると、意外にも知らなかったようで、ハーリカさんやそばにいた人達は一様に驚いていた。
「だから、この国は農作物がなかなか実らないのか・・」
「確かに森の数は少ないしな・・」
「陛下達が住まうアストルは、確かに緑豊かだから・・」
と、皆さん何となくおかしいな・・と、思っていた事が繋がってスッキリしたっぽい。
「セレム、まずは焼けた森を見に行ったほうがいいかも・・。」
「そうだな、俺もそう思っていた。場所はわかったから転移で行くか」
お、気合が入ってる?そうだよね、大事な国なんだし・・
「早く終えて、カエにララの花のお茶を飲ませたい」
いやそこかい!私はいいから!!!森とか畑大事だからね?!
どこかブレないセレムを呆れて見ると、ハーリカさんはゲラゲラ笑っていた・・。