気持ちの擦り合わせは慎重に。
私の植物に働く「言霊」の力は、どうやら植物に力をあげてしまうらしい。
その力が入ってる実を食べたセレムは、一時的に「大人」の状態になったようだ。
鏡の前で自分を確認して、そう分析したかと思うと、セレムは魔法であっという間に弾けとんだ服を、体に合ったサイズにしてしまう。つくづく魔法便利だな。私も使えないかな。
綺麗に服を着こなしたセレムは、180センチ以上はある大人だった。
少年から、25歳くらいの美青年になったセレムは、それはもう色気がまず凄まじい。長く艶やかな黒髪と鍛えぬかれた褐色の筋肉。まつ毛はバサバサだし、鼻筋スッとしてて・・、ジッと見つめられたら、腰抜かすレベルだわ・・・。美形すぎて、美形すぎて!!!(大切な事なので2回言った)
「と、とりあえず・・体は大丈夫なの?力が入ってる実を食べて、
痛いとことか・・苦しいとかはないの?」
そうだ・・・体は大丈夫なのか?!
とりあえず自分の口から出た言葉に、ハッと気付く。
口と思考のテンポが、完全にイケメンによって狂ってる・・。
「体は不調はないな。さっき魔法も難なく使えたし。むしろ力がいつもより満ちている感じだな。」
良かった・・・。いきなり食べちゃうし・・。
ホッとしていると、セレムはにっこり微笑んで私の方へやってくる。
あ、なんか嫌な予感しかしない・・。
後ろへ後ずさるが、壁だった。
ぎゃあ、に、逃げ場が!!!
振り返った私の耳元へセレムが囁く。
「カエ、結婚しよう・・」
って、あぁあああああ低音のイケボ!!耳元で囁くな!!!
くそ!!ちょっと顔が良いからって!!!
余裕の笑みがムカつく。
「カエ・・・?」
「み、耳元で囁くなって、さっき照れたくせに!!」
「大人だったら、プロポーズ受ける・・?」
「いや、大きいとか小さいとかで決めないよ?!あとのんびりまったりゆったりお付き合いって言ったからね?回数を増やしても変わりません!」
私の美少年のセレムを返せ!!!
大人になってもセレムから柑橘系のいい匂いがする。
嬉しそうに抱きしめられるが、胸筋って硬いんだ・・ってレビューに書こう。
って、ああもうちょっと全然思考がまとまらない!!!
「とりあえず、一回離れ・・
「やだ」
「食い気味に言ったね・・。だがセレム君、無理強いは良くないぞ!」
多分私からもめっちゃ匂いしてると思うけど、それとこれとは別なんでぃ!!!
女性には勝手に触ってはいけません!無理強いはもっとダメ!
・・・散々、抱きつかれてるけど。
セレムは、すごく残念そうな顔をしつつ、そっと体を離してくれた。
・・よ、良かった。ホッとして、右手を差し出す。
「・・・手ならいいよ・・・。」
一瞬、シュンってうな垂れていたセレムの顔がパァって輝く。
んああああーーーーー超恥ずかしい!!!
甘いんだよ!!!この空間!!!でも、ほら、ちゃんと我慢できたし!!!
お姉ちゃん気質だから、つい甘やかしちゃうんだよきっと!!
嬉しそうにセレムが手を握った瞬間、
シュンっと音と共に、美青年セレムから、美少年セレムに戻る。
「「・・・・・・・・あっ・・・・・・・・・」」
二人でポカンと口をあける。
どうやら効力は10分くらいのようだった。
っはーーーーー!!!!色々やばかった!!!
守られたぜ、私の何かが!
そう思ってセレムを見ると、ものすごく落ち込んでる。
真っ暗な影が後ろに見えるくらい・・・。
「え?なんで・・?!」
「・・・カエをもっと堪能したかった・・」
「ご、誤解を生む言い方!!!!!」
・・しかし、私としては美青年セレムは大変心臓に悪かったので、落ち込んでいる美少年セレムの姿を見て、ホッとしている。言ったら、落ち込みそうだから黙っておく。
植物係兼(仮)婚約者は空気を読むのだ。




