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春がくる。その5


雪解けを迎え、セレムのお城の周りが大分春めいてきた。

淡い薄黄緑の新芽が、遠くにある木々からも見えてきて、鳥も気持ちよさそうに鳴いていると、いよいよ春だ!と、ワクワクが止まらない。


まだちょっと風は冷たいけど、日差しは大分柔らかくて気持ちいい。


「はぁ〜〜、春っていいねぇ!」


私は、テラスでセレムにそう話しかけると、ニコニコ微笑むから、セレムも春が好き・・なのかな?


「ハーリカが、そろそろララの木の花が咲く・・と言ってたし、今度見にいくか」

「本当?楽しみだな〜!神殿へもこの間行った時、そういえば花が咲いてる木があったけど・・、あれとは違うんだよね?」

「あれは、ナナカの花だな」

「あ、お酒の・・」


にっこりと微笑むセレムさん。飲みませんってば・・。


つい最近行った神殿で、ドル国のことを神様に相談すると、今の政権を握っている王族でなく、支えていた王族に政権を変えるようにと、神託を下ろしてくれた。


流石に神様の神託は王族だろうがなんだろうが、無視する事は許されないので、ドル国は急遽支えていた王族側に政権が移ったそうだ。バリスさんが、ものすごい満面の笑みで教えてくれたので、本当にホッとした。

今度、神様にお礼でも持って行こう。


「私のいた国では、お花を見ながらお弁当を食べる・・とかしてたんだけど、こっちはそういうのする?」

「そうだな・・、似た事はするな」

「お花を見ながら食べたくなるのは、異世界も同じなのか・・」


なんだかおかしくて、思わず笑ってしまった。

笑う私をセレムが、ぎゅっと抱きしめてくる。



「もう少しで出会って一年だ」

「あ、そっか・・そうだったね」



シューレの森で、私とセレムが出会って一年・・あっという間だったな・・。

背の高いセレムを見上げると、蒼い瞳が優しい色で見つめてくる。



「・・会えて良かった・・」

「・・・・・・う、あ、はい・・」

「まだ照れるんだな・・」

「セレムさん・・・・、自分がすごく格好いいって忘れてる?」


私は、まだ照れますよ・・・。そんな優しい顔をしてくるイケメンなんて見慣れないよ・・。っていうか、見慣れる日なんて来るのだろうか・・。

セレムはそれはそれは嬉しそうに笑って、そっとキスしてくる。


ちょっと顔が赤いであろう私に、首元に顔を寄せてくるので非常にドキドキする。

本当に心臓に悪い・・。



「カエ様、ラウラ様からお酒が送られてきましたよ〜」


ローニャさんから、絶妙なタイミングで声がかかる。流石のローニャさん。

ピタッと動きを止めたセレムが、じっと私を見る。


「・・・飲みませんってば」


静かに今度は声に出していうと、静かにうなづかれた・・。

私、どんな酔い方したんだろ・・。

今度、セレムに聞こう。


来週、ハーリカさんの教えてくれたララの花が綺麗な場所へ行こうと約束し、私はカメラも用意しておく。


ララの木、ここでも植えられないかな・・そうすれば、お城でも見えていいかも!そう思って、ローニャさんに種があれば欲しい旨を伝えると、早速用意しておくと心強いお言葉を頂く。

やったー!嬉しいな。


ついでにもう一つ、ローニャさんに秘密の頼み事もする。

これには、ローニャさん・・ちょっと驚いた顔をしていたけど、静かにサムズアップしてくれた。


そうして、一日経つごとにどんどん暖かい陽気になり、春めくコルトに、皆、浮き足たっていた。

やっぱり異世界でも、春のパワーはすごいんだな・・。

お城の人がニコニコする姿を見ているだけでも、私は嬉しくなってしまう。


そうして、明日はいよいよララの花を見に行く!!


・・・と、思っていたのに、まさかの私が発熱。

えー・・・見に行きたかったー・・・と、しょんぼりベッドに寝かされ、セレムが常時見守りシステムのように私のそばに張り付く事態になったのだ。ええー・・・。





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