春が来る。その4
翌日は、朝から元気いっぱいのカヒルさんとラナさんに、植物を発芽させる所を見せて欲しいとお願いされ、早速発芽させると、ものすごく褒めて頂き、頭を撫でくりまわされ、セレムに回収された。
うーん・・朝からパワーがすごい。
セレムは、少しでも早く私から遠ざけたいらしく、本城へ連れて行こうとする。・・え、どうせなら私も赤ちゃんのレオ君みたい・・でも、大勢で行っちゃうとお邪魔かも・・と思い直した。
ラナさんが、なんとか連れ出そうとするセレムを宥めつつ、私に一つ鉱石をくれた。水晶のようにところどころ突き出た石は、薄ピンクの淡く光る色合いが綺麗で、なんなら甘い匂いがする。
「え、これ・・匂いがするんですね!」
「珍しいでしょう〜。これ、香り石って言うの!不思議な力があるらしいんだけど・・。結婚式へも行けなかったせめてものお詫び!受け取ってくれると嬉しいわ〜」
「いいんですか!?あ、ありがとうございます!!」
淡く光る薄いピンクの石は、とても綺麗で嬉しかった。
カヒルさんは、その石を見て、
「水に入れても淡く光って綺麗だぞ!試してみるといい」
と、嬉しそうに教えてくれた。
そっか、鉱石や魔石が好きって言ってたな・・そう思い出して、
「香りがする石の他に、どんな石があるんですか?」
そう聞いたら、そこから鉱石と魔石トークが炸裂した。すごい勢いで色々説明してくれた。竜の守り石も色んな種類があって、私の蒼い石は守りの力が大きいと教えてくれた。色によって効果が違うなんて面白い!
「色んな種類があったら、確かに探しに行くの楽しいでしょうね」
そういうと、カヒルさんは目がキラキラするし、ラナさんは同士を見つけたような目になる。
「わかってくれる人がやっといたわ〜!!」
「カエさん、今度鉱石探しに行こう!!」
同時に言われた。
うん、パワーがすごい・・。
セレムがものすごい勢いで、私を腕の中に収納した・・・。抱きしめるとかでなく、収納・・がピッタリだった。
「ダメです!!!」
割といつも冷静なセレムが、城の中心で叫んだ。
カエさんを独り占めしてずるい!!と、文句を言ってるご両親を、ローニャさんが気を利かせて、バリスさんを呼んでくれて説得の末、また会おうね!!と、ぎゅうぎゅうにハグされて、別れを告げた。
すごい・・・濃かった・・・。
「ローニャさん、本当にありがとう・・・。助かった・・」
「いえ、早く帰って頂いて、私も助かりました」
「本音がダダ漏れだね・・」
しかし、否定はしない・・。一緒にバリスさんとカヒルさん達を送って行ったセレムが帰ってきたら、また慰めよう。
その後、ヨロヨロしながら帰ってきたセレムにお茶を淹れて、たくさん労いました。セレムは、エフェクさんが撮った新しいレオ君の写真を持ってきてくれて、私はその可愛さにメロメロだった。
ちっちゃい子可愛い・・。
「小ちゃいセレムも可愛かったな・・」
思わず呟いて、隣に座るセレムを見る。
実はリファートさんから薬はもらってる。
・・・ちっちゃくなって欲しいなぁ〜〜、頭なでなでしたいなぁ・・・。
「・・ならないぞ」
「見たいなぁ・・」
「・・・他に方法もあるが・・」
「え?!何?あるの??」
魔法とかで小さいセレム出せるんだろうか、ワクワクしてセレムを見る。
「・・・エフェク兄さん家みたいに・・その、」
照れくさそうにセレムが言う。
私は、すぐ理解できなかった。エフェクさん家、みたいに・・・・、赤ちゃん・・あ、はい、そういう。
「・・・・そ、そうだね・・・」
私はじわじわと赤くなっていく。
家族が増えれば、と、いうことですよね・・・。
セレムがそっと手を握る。
「もう少し、カエを独り占めしたいから・・その、いざとなったら小さくなるけど・・」
珍しく目を逸らしながら言うセレムに笑ってしまった。
私達は、どんな親になるのかな・・。
カヒルさん達にみたいにパワフルになるんだろうか・・
何だかワクワクして、いつか出会う存在に思いを馳せると、ちょっと楽しみになった。




