春が来る。その3
セレムのお父さんと、お母さんにようやく会えた!
お父さんはカヒルさん、お母さんはラナさんだ。
突然の出会いだったが、挨拶をして、二人はセレムの勧めでソファーに座って、優雅にお茶を飲んでいる。
「いやぁ〜、ドルのとこがあんまり良くない事してるって言うから、ちょっと鉱山の見物がてら見に行ったら、閉じ込めようとするから、ちょっと軽くいなしてやったんだが、バリスとセレムが急に止めにくるから・・」
「うふふ、貴方ったら久しぶりに暴れてたから、楽しそうだったわね〜」
会話は、大変物騒だが・・・。
私は隣に座るセレムをチラッと見ると、大変疲れた顔でこちらを見るので、あとで慰めておこう・・と、心に誓った。
「まぁ、これで当分ドル国も、静かにするんじゃないか?あそこは、す〜ぐ悪さを働こうとする奴らがいるがな・・。あ、カエさんだっけか?神に相談とかできるか?ちょっと大人しくさせて欲しいんだが・・」
「父上・・!カエをそう気軽に使おうとしないで下さい!」
セレムが怒って言うものだから、私は慌ててしまう。
「せ、セレム・・、落ち着いて・・。私も、戻ってこなかったら、神殿に行こうかな・・って思ってたし」
それは本当だ。
ここの所、わざと穢れを広めようとしたり、穢れさせた苗木を輸出したり・・、ちょっと良くないな・・と思っていたし。・・まぁ、ここの所、大雪で神殿から足が遠のいていたので、そこは反省だ。
「まぁあ、カエちゃんは小さいのに偉いのねぇ」
・・うーん、私、幾つに見えるんだろ・・・。
「あ、これでも18歳なので・・」
「まぁああああ、お姉さんだったのね〜」
う〜〜〜ん、とってもラウラさん思い出す〜〜〜〜。
私は曖昧に笑った。
「・・・・とりあえず、もう遅いですから、部屋を用意したんで、今日は泊まっていってください・・。明日、本城へ送ります。エフェク兄さんも赤ちゃんが生まれたし・・、初孫なんですから、顔くらい見てやって下さい」
「おお!!そう言えば生まれたって言ってたな!!」
「え〜と、男の子でしたっけ?女の子でしたっけ?名前は何かしら〜〜」
ゆ、緩い・・・。
ものすごい緩い空気が流れている・・・。
しかも覚えてないんかーい!私は心の中で突っ込んだ。
ちょうどセレムの机にアルバムを置いておいたので、エフェクさんの赤ちゃんの写真を見せ、名前はレオ君です・・と伝えると、いたく感動していた。
写真に。
・・・孫でなく、写真に。
鉱山で魔石探しに夢中で、カメラの存在を知らなかったそうだ。
王様・・だったんだよね?世事とか詳しくないとまずいのでは・・???
私が予備で持っていたカメラを譲ると、ものすごい力でお父さんのカヒルさんに喜びのハグをされ、一瞬意識が飛んで言った。・・・セレムが慌てて救出してくれて助かった・・・。
本当に死にそうだったよ・・・。
それをお母さんのラナさんが微笑ましく見ていて、
「じゃあ、カエちゃんとせっかくだし写真撮りましょう〜〜」
そう言って、ちょっと死んだ目の私と、ラナさんとカヒルさんで写真を撮ってから、ようやく休んで頂いた。
部屋へ戻った私とセレムは、ベッドに同時に倒れこんだ。
・・すごい、すごい濃い・・。
エフェクさんがものすごく常識人に見えるくらい、濃い!!!
「セレムと、バリスさんが死んだ目をしていたのがわかったよ・・」
「ドルに行ったら、鉱山で大暴れしていて・・止めるのに苦労した・・・。その仲介にバリス兄さんが入ったけど、もう・・どうやって纏めるのか・・気が遠くなったが、とりあえず2人をこちらへ連れてこないと・・と思って、連れ帰ったんだが・・、カエ・・すまない・・」
セレムがうつ伏せのまま、私を遠い目でこちらを見る。
私は、セレムがあまりにあまりにもなので、ちょっと体を動かして、ぎゅっと腕を回してみる。体が大きいから、ちっとも体を抱えることなんてできないけど。
「・・・お疲れ様でした」
そういって、私からキスすると、セレムはようやくいつもの優しい蒼い瞳に戻った。




