あらゆる事が突然なのに対処とか無理だから。
普通の日常を、ずっと過ごしていくものだと思っていたのに、
ある日私、田名城かえは、異世界の森へ気付くと立っていた。
バイトへ行こうと家のドアをスマホを見つつ、
ドアを開けて、顔を上げたら、まごう事なく森。鬱蒼とした森。
ギャアギャアと、どこかで鳥の鳴き声がする。
「え・・・・・・・・・?」
慌てて周りを見たら、家もない。
昼間なのに、見た事がないくらい高い木々に覆われて、日の光がほとんど差さない薄暗い森に一人・・・。
スマホを見ると、はい、真っ暗。
え・・、デジタルネイティブの世代にこんな状況どうしろと・・?
なんとか冷静になろうとして、深呼吸する。
うん、森の香りが胸いっぱいに広がるけれど、ちょっと待ってくれ!
この前、友達に貸してもらった転生ものの小説を読んだけど・・きっとここは・・多分どうしたって異世界・・と、思おう。とりあえず。
ひとまず森を抜けて、誰かに助けを求めよう。
頭の中に「モンスター遭遇」とか「いきなり奴隷」とか「餓死」とか
「バッドエンド」とか、不穏な単語が思い浮かぶけど、「ないないない!!!!」と、手を振りつつ、近くに落ちていた木の棒を拾って、枝をかき分けつつ、明るそうな場所を探して歩いていく。
1時間くらい経っただろうか・・森の中をかき分けて歩いていて、足は歩き慣れないでこぼした道で若干ふらつき、汗もじわっとかいている。
「喉乾いてきた・・」
コンビニにバイト前に寄ればいいやと、思っていた自分を殴りたくなった。
水も食料も持ってない・・。これ、確実に死ぬんじゃない・・・???
そう、ふと嫌な予感がじわじわした時
ふわっといい香りが鼻を掠めた。
甘い?柑橘系っぽい匂いだなって思って、どこかに実ってるのかな?と、辺りを見回すけど、鬱蒼と茂る木々。
でも、甘い香りは、どんどん近くに感じる。
できれば食べられる実だといいな。
そう思って、枝をかき分けると不意に草原が見えた。
やった!!!森からの脱出!!!
草原へ一歩出た時、匂いが強くなった途端、
目の前が暗くなった。
「・・・・・んん?」
上を見上げた瞬間、SFとかアニメでしか見た事ない、
大きな黒い竜が自分めがけて真っ直ぐ飛んできた。
瞬間、体が固まって動けなくなる。
黒い竜は、大きな体の割にふわっと静かに私の前に降りたち、
こちらをじっと蒼い夏空のような目を見た瞬間、頭がキャパオーバーして、ちょっと昔の漫画みたいに頭が真っ白になって気を失って倒れた。