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4.チームバトルに加わりたい

 次の日、私はカイとレイトに連れられて、センターとやらに行くことになった。


 そこで登録印とやらを押してもらえば、通信機を使えるようになるらしい。そうすれば他の拠点と連絡できるし、この拠点に保存されている各種データの閲覧もできるようになるとのことだ。他の拠点に連絡する必要は今のところ感じないけど、データの方はちょっと気になる。


「それで、センターまではどれだけかかるんですか?」


「徒歩で片道三時間といったところだ。マーキノイドに出会わなければ」


 遠い。そもそも拠点の人間がみんな一度は登録しに行く必要があるというのに、なぜセンターが拠点の近くにないのか。どう考えても不便だ。


 そんな疑問が顔に出ていたらしく、カイが説明してくれた。


「センターは二十年前くらいに各地に作られることになったんだが、その性質上多く作れなかったらしい。そのせいで、拠点の数に比べて圧倒的にセンターの数が少なくならざるを得なかった。だから、各拠点の中間の位置にセンターを作ることにしたらしい」


 ふーん、だったら他の拠点の人もそのセンターを使ってたりするのか。たまたま出会ったりするのかなあ。


 この拠点だけでも結構たくさん人がいるのに、どうやら歩いて行ける範囲にもまだたくさん人がいるみたいだ。滅亡寸前からそこまで盛り返すとか、結構この世界の人間もたくましいと思う。






 そして私たちは、三人一緒にバリケードの外に出た。ここから先は、マーキノイドがうろついている危険地帯だ。いつでも戦闘に移れるように全員身構える。


 前から順にカイ、私、レイトの順で隊列を組む。そういえば昨日もカイがナイフによる近接攻撃、レイトが後方から銃撃で支援というコンビネーションだったか。


 そういえば、システム的にはパーティを組んだ扱いになっているのか、カイとレイトのステータスも一部だけ見られるようになっていた。


『PAGE 4』

(同行者)

 カイ

 レベル 12

 スキル 近接攻撃強化 Lv.9

     回避強化 Lv.5

     指揮官 Lv.2


 レイト

 レベル 11

 スキル スナイプ Lv.9

     ハイディング Lv.7

     気配察知 Lv.4


 ……二人ともレベルが高いのは分かるとして、明らかに戦闘向きのスキル構成じゃん……いいなあ……。スキルってこれからでも習得できるよね? できると言ってくれ。


 ともかく、ちょっとくらい何か出てもこれなら大丈夫だろう。明らかに二人とも私よりはるかに強いし。




 そこまで考えて、ふと気づいた。私から彼らのステータスが見えるってことは、逆もありってことでは。


 ということは私のあの謎スキルの存在がばれるかもしれない。いやばれたところでたぶん困らないけど、ちょい恥ずかしい。大体名前が仰々しいにもほどがある。何なんだ「世界を救う愛」って。できることなら隠しておきたい。


 いや待て、そもそも彼らはステータスウィンドウを開けるのか? どうも昨日から彼らと話している限りでは、彼らにはレベルの概念がないように思える。私は元々この世界の人間じゃないし、ステータスが見られるのは異世界人の特権みたいな感じなのかもしれない。


 まあとりあえずは放っておこう、変に探りを入れるとやぶへびになるかもだし。うかつなことをして異世界人だとばれて、騒ぎになったら面倒くさい。






 しばらく歩いても何も出ない。いや出てこない方がいいんだけど。


 足場はがれきだらけで歩きにくいけれど、がっしりしたブーツのおかげでそこまで困らない。大きながれきを超える時は前を行くカイが手を貸してくれる。


 カイは近接戦闘を得意としているだけあって、大きくてがっしりした手だ。男子と手をつなぐことなんて小学校のとき以来なかったし、どうしていいかちょっとだけ困る。


 しかしうかつにときめくと謎スキルが発動する。それはできれば避けたい。うかつに発動させると謎が悪化する気がする。


 私はつとめて心を無にしながら歩き続けた。幸い、カイもレイトもマーキノイドを警戒していてずっと無言だったので、平静を保つのはそこまで難しくはなかった。




 さらにどんどん進んでいた時、最後尾のレイトが足を止めた。それに気づいたカイが立ち止まる。なになに、どうしたの。


「……来た。構えて」


 普段はよく喋るレイトが言葉少なに銃を構えて物陰に隠れた。そういえば彼のスキルに「気配察知」っていうのがあったな。それでいち早くマーキノイドの存在を察知したのだろう。


 私もハンドガンを構えて別の物陰に隠れ、ハイディングを発動させる。そういえばこのスキルの効果って何なんだろう。名前からすると隠れやすくなるとかそういうのなんだろうけど。まあレイトも持ってるスキルだし、発動しておいて損はないだろう。


 カイはナイフを構えたまま一人立っている。私とレイトに背を向けたまま、前方に気を配っているようだ。




 すぐに、小さなカチャカチャという音が聞こえてきた。その音は少しずつ大きくなっていく。そちらを見ると、遠くから機械の塊みたいなものがいくつか近づいてきていた。見覚えのあるポーンが数体。


 ポーンは先に首を壊しておかないと、倒したときに叫びを上げて他のマーキノイドを呼んでしまうと二人が教えてくれた。


 そのくせポーン自体の耐久度は低いため、首を落とそうとしてうっかり一撃で倒してしまい、次のポーンが続々と来るというわんこそば事故が多発しているのだそうだ。


 だからまずレイトがスナイプショットで首を落とし、それからカイがナイフでとどめを刺す。それがいつものやり方だとか。実際今もそうやってあっという間に二匹ほど倒している。


 私は万が一こちらまでポーンが来たらいつでも撃てるよう、ポーンたちから目を離さないようにしていた。


 とはいってもさすがに二人は手慣れたもので、私が手を出すまでもなく、全部で五体いたポーンがそろそろ全滅しそうだった。


 恐ろしいほど真剣な顔をしたレイトが後ろを振り向いたのは、その時のことだった。




 彼が見ている方から、自転車くらいの大きさの機械のかたまりが跳ね飛んできた。大きさも動きも、ポーンとは全然違っている。鑑定の結果は『ナイト・アルファ:ナイト種の最も一般的な個体』だった。


 前にポーンを鑑定したときに「ポーン『種』」と表示されてた時点で嫌な予感がしてたんだけど、やっぱり他の種類もいたのか。二人はナイト種を知ってるのかな。


 接近するナイト・アルファに遅れて気がついたカイが、ナイフを構え険しい顔をする。私とレイトがまだハイディング中だからなのか、ナイト・アルファはカイに一直線に向かっていった。


「ナイト種か、おそらくナイト・アルファだ! こんなところに出るとは珍しい、よそに被害が出る前に潰すぞ!」


 そう叫ぶと、カイは突進してくるナイト・アルファを迎えうち、そのまま激しくやりあっている。レイトもナイト・アルファの背後からスナイプ射撃を続けているが、どうにも致命傷を与えられていないらしい。


 彼らの動きを見ていると、どうもカイはナイト・アルファの胸元を狙って攻撃を加え続けているようだった。どうやらそこが弱点らしい。けれどお互いの立ち位置が悪いせいで、レイトがうまく胸元を狙えていないように見える。もどかしいけど、私の出る幕じゃない。うかつに飛び出せば二人の邪魔をしかねない。


 けれど、二人はもう結構な時間やりあっている。カイの表情がどんどん険しくなってきている。大丈夫かな。


 その時、カイがわずかに足をもつれさせた。ナイト・アルファがそこに襲い掛かる。



 ぱあん、ぱん。



 カイが危ない、と思った瞬間、私は反射的に前に飛び出てナイト・アルファを撃ってしまっていた。その行動でハイディングが解除されてしまったらしく、視野の隅に出ていた発動中ウィンドウが消える。


 そしてそのナイト・アルファは怒り心頭といった様子でこっちに突進してきた。やっと獲物を仕留められそうだという時に邪魔されたのが気に食わないらしい。


 えーっと、これどう避けたらいいんだろう? 闘牛士的な?


 私が迷っていると、目の前のナイト・アルファが大きく飛び上がった。あ、やばいこれボディプレスされる。


 次の瞬間、私の視野いっぱいにごちゃごちゃした機械のかたまりが広がった。






 天国って青いんだ、知らなかった。とってもきれいな空の色。あー、短かったな私の異世界生活。


 そうやってぼーっとしていると、その青の中にひょっこりとレイトが顔を見せた。あれ、レイトも死んだ?


「……二人とも大丈夫?」


 レイトが恐る恐る尋ねてくる。あれ、もしかして私は生きてるのかもしれない? そういえば肩と背中が痛い。じんじんする。

 そしてなんか体が重いなあと思ったら、カイが抱き着いていた。……え、抱き着いてってどういう状況だ!?


 あわてて自分の体勢を確認する。私とカイは地面に倒れていて、カイは私の腰の辺りを横抱きにしていた。そして私もカイも全身砂ぼこりにまみれている。まるでスライディングでも決めた後のようだ。


 カイはうめき声をあげながらゆっくりと起き上がり、周囲を確認するとレイトに話しかけた。


「……俺は大丈夫だ。ナイト・アルファはお前がやってくれたのか」


「ああ。アイラちゃんが気を引いてくれたおかげで、急所の胸元が丸見えになったからね。きっちりそこを狙撃したよ」


 そう言って、レイトがすぐ横の地面に倒れているナイト・アルファを親指で指し示す。


「アイラちゃんが危ないかなとは思ったけど、カイが守りに行こうとしてるのが見えたから。僕はあいつを先にしとめるべきかなって。それでアイラちゃん、君も大丈夫だった?」


「えっと、大丈夫です」


 正確にはあちこち打ってて痛いけど、まあここは大丈夫と答えておくべきだろう。この打ち身は、飛び掛かってくるナイト・アルファからカイが救い出してくれた時のものみたいだし。


 全員の安全を確認したカイとレイトは、携帯工具を使ってマーキノイドの解体を始めた。ここは拠点から遠く、狩ったものの全てを持って帰るのは難しいので、エネルギー晶石だけを取り外して持って帰るのだそうだ。


 私はそのすきにパラメータをチェックする。変化があったのはこの辺だ。


 アイラ

 レベル 3(UP!)

 HP 15/20(UP!)

 力 5

 知恵 14

 体力 9

 素早さ 14(UP!)

 器用さ 13(UP!)

 運 10


(装備)

 ハンドガン(S) 5/8

 軽装迷彩服


(スキル)

 世界を救う愛 Lv.1

 鑑定 Lv.2(UP!)

 ハイディング Lv.2(UP!)

 おとり Lv.1(NEW!)


 ちょいちょい上がっているのはいいといて、また微妙なスキル手に入れてるな。スキル欄が隠れるのか表に出るのかはっきりしろといった感じになっている。


 はっ、まさかさっきナイト・アルファの気を引いたせいなのか。どうも行動に応じてスキルを手に入れたりスキルレベルが上がったりしているようだ。


「しかし、ナイト・アルファに出くわすとはな。こんなもの一年に一度出るか出ないかだろう」


「ああ。僕も一度しか戦ったことはないよ。勝ててよかった」


 二人はマーキノイドを解体しながら雑談している。せっかくなので私も解体を見学させてもらうことにした。私が見ていることに気づいたレイトが、解体の手順を丁寧に説明しながら作業を進めてくれた。昨日もそうだったけど、レイトって説明するのが好きなのかも。


 そうして全てのエネルギー晶石を集めると、私たちはまたセンターに向けて歩き出した。



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