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1.爆発オチから始まる異世界生活

 いつものように通学路を歩いて登校していた時、突然視界が閃光に包まれた。それが全ての始まりだった、たぶん。




 気がついたら辺りがずたぼろになっていた。建物とか、どう見ても完璧に廃墟でしかない。


 地面はアスファルトが半分以上はげちゃってるし、残った半分もぼろぼろにひび割れまくってる。おまけにあちこちに大きなコンクリートの塊がごろごろ転がっていて、道を歩くのも大変そうだ。そして人の気配はまったくない。


 なにこれ。もしかしてさっきの閃光って爆発か何かだったのか。はっ、そうすると私は無事なのか!?


 そう思って自分の全身を見回す。傷はないがそれ以外がすべておかしい。


 私はさっきまで学生服に指定のカバンで歩いていた。しかし今私が着ているのはグレーの迷彩服に似た妙な服だ。肘にはサポーターみたいなのがついてるし、やたらポケットがついたごついベストを重ね着している。


 そのくせ下は紺色のプリーツスカートで、ニーハイ丈の白いソックスとひざ下丈のがっしりした編み上げブーツを履いていた。なぜ下半身だけ防御力が低そうなのか。


 その時、自分の腰に何かがぶら下がっているのに気がついた。もしかしてこれは銃のホルダーではなかろうか。ちゃんと銃らしきものも収められている。実物を見たことはないから断定はできないけど。


 おっかなびっくりその銃らしきものを取り出してみる。ずしりと重い。やっぱり銃……なわけないね、きっとモデルガンだろう。


 ともかく、周りがこうなっているのはさっきの閃光のせいってことでいいとして、なぜ私がこんな格好をしているのか、その理由がさっぱり思い当たらない。


 私が首を傾げたその瞬間、頭の中に突然無機質な電子音声が聞こえてきた。


『転移の完了を確認しました。これよりステータスを表示します』


 そしてその声に続くように、目の前の空中に半透明のステータスウィンドウらしきものが表示された。

 え、ちょっと待ってステータスって何、それだとまるでゲームじゃん!


 あわてながらもステータスとやらを確認してみる。ちょっとわくわくしなくもない。いや素直にわくわくする。


『PAGE 1』

 部友ぶゆう 愛羅あいら

 レベル 1

 HP 15/15

 力 5

 知恵 14

 体力 9

 素早さ 13

 器用さ 11

 運 10


 ……そもそもの基準が分からんので、この数値が高いのか低いのか分からない。とりあえず非力だと馬鹿にされていることだけはよーく分かった。


 つかこれ、間違いなくRPGだ。そっかー私ゲームの世界に転移? 転生? しちゃったっぽいね? しかもこの格好からいって、ファンタジーよりはSFとかに近い世界とみた。


 私は改めてステータスをチェックする。たぶんどこかで装備とかスキルも見られるはずだ。案の定、レベルや基礎ステータスが表示されたページをめくると、次のページにはこう表示されていた。


『PAGE 2』

(装備)

 ハンドガン (S) 8/8

 軽装迷彩服


(持ち物)

 弾丸 (ハンドガン) 100

 回復キット 10


(スキル)

 世界を救う愛 Lv.1

 鑑定 Lv.1

 ハイディング Lv.1


 ……一か所だけ謎の記載があった気がする。まず「鑑定」、これはそのまんまだろう。そして「ハイディング」、これはたぶん隠れる系のスキルだろう。


 それはいいとして何だ「世界を救う愛」って。この世界は一体私に何を期待してるんだ。こちとら彼氏いない歴=年齢のごく普通の女子高生だぞ。慈愛的なものも持ち合わせてないただの小市民だぞ。


 うん、これについては保留しよう。できればずっと忘れたままでいよう。このスキルはろくなことにならないと、私の野生の勘が告げている。




 ともかく、ここでじっとしていてもらちが明かない。ちょっと周囲を調べてみよう。まずはこの世界について知っていかないと。


 右を見ても左を見ても廃墟ばかりで方向感覚がおかしくなりそうだったけど、とりあえず回れ右して来た道を戻ることにした。




 そうしてがれきを避けながら歩いているうちにあることに気づいた。周囲にコンクリートとかアスファルトとかの残骸はたくさんあるのに、信号機とかの機械っぽいものの残骸はほとんどない。


 ここは機械とかがあまりない異世界なんだろうか。でも銃は存在している。何かアンバランスな気がしなくもない。


 しばらく歩いたが、ずっと同じような景色が続いている。ふと物音が聞こえた気がしたので足を止めた。


 装備に武器防具があるってことは戦いがあるってことで、それすなわちどこかに敵がいるってことだ。何がいるか分からないうちは警戒しておくに越したことはない。


 物陰に隠れ息をひそめると、目の前に勝手に半透明のウィンドウが開いた。『発動中:ハイディング』と表示されている。よく分からないけど隠れることに成功したっぽい。




 そのまま周囲を警戒しながら待っていると、がちゃがちゃという音とともに謎の物体が現れた。


 バスケットボールくらいの大きさのそれは、ごちゃごちゃした機械の寄せ集めのような姿をしていた。パーツを適当に動かして地面を這っている。うわ虫っぽくて気持ち悪。


 どう見ても敵っぽいんですが。いやでも一周回って友好的な何かかもしれないし。敵ならハイディングしてる今のうちに先手必勝だけど、もし友好的だったらそれはまずい。


 などと悩んでいるうちにその機械もどきは私の目の前まで迫っていた。それは首? らしきパーツをこちらに向けると、次の瞬間私めがけて飛びかかってきた。


「わーっ!!」


 情けない叫び声を上げながらぎりぎりのところで避ける。袖がちょっと裂けたかも。何するんだこのやろう。


 これであいつが敵だと確定したので、こちらも遠慮なく反撃に移る。腰のハンドガンを抜いて機械もどきに向けた。


 機械もどきは着地すると、首を伸ばしてこちらを見ているような動きをしている。ぴたりと止まった次の瞬間、またこっちに飛びかかってきた。今度は落ち着いてかわす。


 こいつ、行動パターンは結構単純かも。飛びかかってきた直後が反撃のチャンスだな。これだけ近くにいれば初心者の私でも当てられるだろう。よーく狙って、引き金を、っと。


 ぱん、という音がして機械もどきのど真ん中に命中した。機械もどきはピコーン、と謎の電子音を上げると動かなくなる。


 よっしゃ、私の勝ちだ! それにしても一撃で終わりとは、私が強いのかあいつが弱かったのか。どちらにせよ幸先いいスタートだな。


 私は初めての勝利の快感に酔っていた。そのせいでぎりぎりまでそれに気づかなかった。




 ……あ、さっきの機械もどきが増えてる。さては最後に仲間呼びやがったな、あいつ。


 新たに現れた機械もどきは三体。それが器用にタイミングをずらしながら交互に飛びかかってくる。さすがに避けるだけで精一杯で、こちらから攻撃している暇がない。無駄に連携が取れてるのが腹立たしい。


 あー、ちょっとこれまずいかも……ちょっとでもかわすのが遅れたら一巻の終わりっぽいよね……まだ走馬灯は見えてないけど時間の問題かもしれない。ゲームだと、こういう時に強キャラがさっそうと現れて助けてくれたりするんだけどなあ……。


 自分の命の危険だというのにどこかのんびりとそんなことを考えていたら、どこかで破裂音がして、いきなり機械もどきの一体の首がぼろりともげ落ちた。さらにもう二発の破裂音の後、残り二体の首もきれいにもげた。


 私がぽかんとしていると、いきなり現れた誰かがナイフで次々に機械もどきをしとめていった。今度は謎の電子音は鳴らなかった。




「大丈夫か、君?」


 その強キャラはナイフを手にしたまま尋ねてきた。赤いメッシュの入った長めの黒髪で、迷彩服と厚手のジャケットにがっちりと身を包んでいる。少したれ気味の目をした真面目そうなお兄さんだ。大学生くらいの年齢かな。


 さらに彼の後ろの物陰からもう一人現れた。手にしているのは猟銃みたいな細長い銃。さっき機械もどきの首を落としたのはこの人の射撃だろう。


 彼は一人目の男性と同じくらいの年頃で、ひまわりのような鮮やかな金色の短い髪が特徴的だ。こちらは迷彩服のみの軽装で、大きなサングラスをかけていて顔立ちはよく分からない。


「カイ、その子大丈夫?」


「大丈夫みたいだ。少し驚いているだけだろう」


 カイと呼ばれたナイフのお兄さんが私を見て答えている。彼らが何者かは分からないけど、とりあえずお礼を言っておくべきだろう。


「あの、ありがとうございました。あれに囲まれて困ってたんです」


「ああ、無事でよかった。俺はカイ、彼はレイトだ」


「あ、私はアイラです」


 二人が苗字を名乗らなかったので、私も名前だけ名乗ることにした。できることならフルネームは名乗りたくないし。


「君、どこから来たの? 見ない顔だね。一人で大丈夫?」


 銃を下ろしたレイトが、口元に人懐っこい笑みを浮かべながら気軽に話しかけてくる。がっちりした体形と不釣り合いな、柔らかくて優しい声が特徴的だ。


「……私、どこから来たのか分からないんです。そもそも、ここがどこかも分かりません」


「えっ、そうなんだ。だったら行く当てもないよね? 一度僕たちの拠点に来るかい?」


「そうだな、こんなところを一人でふらふらしていたら危ないぞ。どうする?」


「あ、でしたらお邪魔させてもらってもいいですか」


 右も左も分からないだけでなく機械もどきまで出るようなところに一人でいたくないし、この二人の申し出に乗っかることにした。

 なんでも、彼らの拠点はこの近くにあるらしい。二人は機械もどきの残骸を担ぐと、私を案内するように先に立って歩き出した。




 拠点まで案内してもらう途中、もう一度自分のステータスを確認してみた。機械もどきを倒したし、レベルとか上がってないかなーと思ったからだ。


 レベルは上がってなかったが、名前の表示が「アイラ」に変わっていた。さっきそう名乗ったからかもしれない。だったら適当に名乗ったら表示がまた変わったりするんだろうか。変な名前で固定されたら嫌だから試さないけど。


 そしてステータス画面を眺めているうちにあることに気が付いた。いつの間にか三ページ目が追加されている。この短時間で何が起こった。


 期待半分不安半分でページをめくる。そこには、こう記載されていた。


『PAGE 3』

(LOVE度)

 カイ 1/100

 レイト 1/100


 ……LOVE度ってなんなんだー!! 嫌な予感しかしないぞ、このパラメータ!!



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