それでも生きる《花川優奈 詩集》
連載にはしませんが、時々ちょこちょこ伸びている(詩がふえている)かもしれません
《伽藍堂》
頭の中の何かの欠片が抜け落ちる
ポタポタ音を立てて日に日に崩れ去る
嗚呼、いつか頭の中が伽藍堂になって
そうして人はがらくたのように
死ぬのでしょうか
★
《ココロ》
ココロが闇に包まれて
悲しい音を立てる
きっとココロに流れる真っ赤なものが蒼く変わってしまったんだ
ココロが闇にポッカリあって
孤独の音がなる
きっとココロに流れる真っ赤なものが黒く染まってしまったんだ
響けよ響け 悲しい音
聞けよ聞け 孤独の音
★
《私》
私、とは何なのでしょうか
あなた方は私を石像とでも思っているのでしょうか
若しかすると石像ですらないのかもしれません
若しかすると幽霊のたぐいなのかもしれません
ならば私は幽霊らしく
何も云わず
黙っていれば良いのでしょうか
幽霊の私には
言葉を紡ぐ
権利もないのでしょうか
★
《美的せんす》
雨雲がほおづえついて居座っています
それはどんよりとした雲です
いつかそれは大きくなって雨を降らすでしょう
もしかしたら雪かもしれません
それはさらに大きくなって大雨になるでしょう
もしかしたら嵐になるかもしれません
やがていつかそれらは止み、綺麗な青空が広がるでしょう
もしかしたら虹がかかるかもしれません
太陽が元気いっぱい広がっています
辺りを明るく照らしています
いつかそれは眩い程の光を纏うでしょう
もしかしたら見えないほどかもしれません
それはさらに光って誰かの光になるでしょう
もしかしたら辺りに花や草木が育つかもしれません
ですが、やがてそれらは雲に覆われるでしょう
雨が降るかもしれません
移り変わるは、人の心
時にはそれを面倒に思うかもしれません
もしかしたらなくなってしまえば楽なのにと思うかもしれません
でも、私は思うのです
移り変わるからこそあなたはとても美しい
★
《侵食》
脳天とつま先に、黒い何かが落とされた。
ポトリポトリ。
それはゆっくりとでも確実に広がっていく。
じわりじわり。
音を立てて、私の息の根を止めるために。
音を立てて、私の心の臓を染めるために。
ほら、どんどん進んでいくよ。
ポトリポトリ。
真っ黒い何かは蠢いて。
じわりじわり。
音を立てて、私の世界を止めるために。
音を立てて、私の未来を染めるために。
真っ暗な世界に取り込まれたよ。
ポトリポトリ。
立っていることもできないよ。
じわりじわり。
音を立てて、私の世界が崩れていくよ。
音を立てて、私の地面は狂っていくよ。
無音の世界にやってきたよ。
ポトリポトリ。
怖いよ怖い。
じわりじわり。
音を立てずに、私の地図は崩れていくよ。
音も立てずに、私の感覚は狂っていくよ。
イタイイタイ。
ポトリポトリ。
クルシイクルシイ。
じわりじわり。
嗚呼、楽になってきた。
ポトリポトリ。
何も感じないよ。
じわりじわり。
侵食完了。
何処かで誰かがそう呟いた。