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こちら、魔導学術教導院天原極東支部『代行部(オルタナティブ)』  作者: 植原 榊
運・命・邂・逅~限界を超える少女と限界を降す少年~
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02

諸事情にて仕事に追われて次話が遅れましたが私は元気です。

 それに気付いたのは何時だったか。

 いつもなら起きる筈だった現象が発生せず、残酷な結果だけが過ぎていった。

 原因は、現象を起こすための電気のリソースが無かった事。

ただこれに尽きる。

 無情な現実に気付けたのは、不幸中の幸いだったが……終わりへの線は刻一刻と迫ってきていた。

 冷酷な現実を変えるために、新たな拠点から飛び出しひたすら走る。

 つまり私の――――――――。


「遅刻したぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 目覚まし時計の電池が切れていたのだった。



◇◇◇◇



「はっ…はっ…はっ…はっ…」


 大橋を隔てた人工島を対岸に見据える、最寄りの下宿に泊まり、転入初日である明日の準備は万端だ、………と安心していたのだが。

 まさか……小さい頃から使い続けていたお気に入りだからと持ち込んだ、目覚まし時計の電池が切れていたとは思いもよらず、見事に初日から寝過ごしてしまっていた。


「はっ…はっ…はっ…はっ…」


 しかも内外を行き来する交通機関が、規定の時刻以外厳しく規制されていたのもあり……。

 そのような経緯から、なんとしても初日から遅刻にだけは避ける為、大橋の歩行者用通路を走り始め……現在時刻、9:15。

 通常授業に参加するのであれば開始時刻から15分程遅刻し、転入による所要の待ち合わせの集合時間まで、残り15分となった段階で……橋の中腹辺りに彼女は差し掛かっていた。


「このままでは30分に間に合わない……!」


 事実、橋を渡り始めたのが8:40であり、中腹に至るまでの経過時間を考えると9:30集合予定には決して間に合いはしないだろう。

 道中で運良くバス等の交通機関を利用出来る……なんて事は無く、今まで橋を自分以外の誰か・何かが通過した事は無かった。

 これでは待ち合わせに間に合わず、印象が最悪で始まってしまうと考えた彼女は一つの策を実行する。


「本当は島内じゃないと駄目って言われたけど―――《身体付与:速力強化》《身体付与:脚力強化》」


 立ち止まり、力みと呼吸に合わせ体の周りの空気が一瞬だけやや震える。

 左腕に身に付けたブレスレットが、呼応するかのように数瞬ほど発光し、それと共に、全身に張り付く薄い黄色い光の波を纏う。


 魔導師による魔導使用認可地域外での魔導の行使は、実際ある程度厳しく取り締まられているのだが、取り締まる側も魔導師である故か、現場を含む魔導師達にはあまり守られていない。

 取り締まる魔導師達も、大橋は正確には認可地域外だが……実際ほぼセーフだろうと、緩めの対応を行っているのを後に知るのだが、知ってか知らずか、認可地域外での超個人的な問題解決に魔導を行使した事によるお咎めは無くなっていた。


「《    》」


 先程までと3倍近く加速した彼女は、初動の踏み込みでコンクリートの表面に小さな皹を作りながら、ツインテール状に結んだ髪を揺らしながら、一歩一歩跳ねる様に自動車より速く進んで行く。




―――それを眺める壊れたブリキ人形が一つ。



◇◇◇◇



 大橋を渡り、少し進むと小さな広場に出る。

玄関広場と呼ばれる入島と出島を記録する場所である、広場を更に進んで行くと、更に大きな場所に出た。

 先程と比べ、より広い広場の中心に、淡い青に発光する歪な円錐形の大きな水晶が聳えていた。

 聳える水晶が溢れんばかりの存在感を発揮している為、島内の住人達から単純に水晶広場と呼ばれているこの場所は、悩んだら迷わずここで悩めと言われる程に、施設やその他の建物が、様々な部門事にエリア分けされている島内を、巡る上の始点となる場所である。

 水晶広場の入り口で、膝に手を当て肩で息をしている少女は顔だけで、水晶広場に付けられた時計を見て、なんとか笑っている。


「ふ、ふふふ……。ま、間に合った……! 良かった、本当に良かった……! あははは。」


 安心感から思わず出てきた笑い声も、疲れでやや乾いている。

しかし、間に合った事に代わりは無い。息を整える為、深呼吸をする少女。


「……あー、話しかけて大丈夫、ですか?」

「ふぅ、あ……すいません。大丈夫で………!?」


 時計を見て、沁々と喜ぶ少女の背後から、困ったような声が投げ掛けられる。

 少女が振り向き、硬直する………そこには、ガッチガチにキメにキメた―――不良がいた。



◇◇◇◇



 180cmを超える身長に、肩辺りまで伸びたドレッドヘアーと真っ黒なサングラス。

 ベスト姿とはいえ、100人が見ても100人が不良だと断言するこの青年は、なぜ反応が止まったのか分からないからか、顔を傾げる。


「……大丈夫、ですか?」

「……えっ、あっはい! 大丈夫です!押忍!」


 目の前の青年の見た目の衝撃で、少し呆けてしまった少女に青年は声をかける。青年の声に現実に引き戻されて思わず釣られて答えたが、なにが大丈夫なのか、大丈夫と言った彼女も分からないだろうが、青年は一瞬首を傾げたが頷き、手元の紙の束に目をやる。


「特徴的な長いツインテールと低身長、黒が混ざった明るい栗色の髪色、ブレスレット型の発動機、あー………貴女、が転入生の?」

「はい!」


 元気良く返事をした少女に、不良は薄く笑みを浮かべながら言う。


「あー、では自己紹介をぼ……私から。三葉剃人だ……です。宜しく……お願いします。」

「あっ、はい! 宜しくお願いします!」


 頭を下げそうに無いその見た目で、簡単に頭を下げてきた剃人に驚きつつも礼を返す少女。


「私は朝日……斗昂朝日です!」

朝日「2話でやっと名前がでましたよ! 主人公なのに! でも、もう安心です!」

アルク「おめでとう! 一話で最初に名前だけ出た私が祝福するよ!2話で二番目にフルネームが出た斗昂朝日君!」

朝日「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

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