大袈裟すぎる計画【レン目線】
パジャマパーティーの話を思いついてしまいました。クロウ先輩初登場です。
「よお」
バン! という派手な音を立てて執務室の窓が空いた。不遜な声には覚えがある。振り向けば、凶悪な笑顔を浮かべた黒髪の男がいた。紫水晶のような瞳は爛々と輝いていて野生の獣を思わせる。彼によってトラウマを植えつけられた者が見れば失神しそうなシチュエーションだが、ぼくはなんと声を掛けたものか迷っていた。というのも。
「ふふふっ!」
「むー……」
二人の幼子が両腕にしがみついていたからだ。これでは彼が『最凶』と呼ばれ、たった一人で軍隊を壊滅させるような人間といえども形無しというか。「よっこいしょお」と窓から堂々と不法侵入してくると、幼子達を床に降ろした。
「ほら、二人共。カルロヒューレンに挨拶しろ」
「こんにちは! いいお天気ね!」
「……こんにちは」
無邪気に挨拶してくる二人に「こんにちは」と挨拶する。そしてちゃっかり呼び捨てにしてきた男に視線を戻す。
「……久しぶりです、クロウ殿。各地を漫遊されていると聞いておりますが」
独立魔法研究機関、通称『魔法塔』。その創始者の一人にして数えきれない程の武勇伝と伝説を持つ規格外の人物。この大陸においてクロウ殿に恩のない国はなく、全ての国と対等に付き合えると言っても過言ではない。我がオーラリネリア王国もそうだった。
「まあな。この国に来るのは……四年ぶりか? まあどうでもいいが」
秘法によって半不老不死になって以来時の流れに疎くなった、との噂は本当らしい。しかしいつも一緒の夫人の姿が見当たらない。
「夫人はお元気ですか?」
問うと、ばつが悪そうに目を逸らした。相変わらず夫人には弱いようだ。
「あー、まあ、もう一人のガキの面倒を見てる。で、今回はあいつの要望なんだよ」
「はあ。いつの間にもう一人お子さんが……おめでとうございます」
「どうも。……ってか話の腰をバキバキ折るんじゃねぇよ。それでだな。この前偶然ディーとカフカに会ったんだが『パジャマパーティー』とかいうのをやったらしいな」
「あ」
大体の事情は察した。クロウ殿は懐から封筒の束を取り出して机に放り投げた。一枚一枚検分していくが、眉間のシワが深くなることを止められない。ギルドラン赤龍王国、カディルワース白龍王国、桜花国、ディグリース小魔法王国、リベリヲン皇国、魔法塔……クロウ殿と付き合いがある王族やら権力者やらがこぞって『パジャマパーティー』をしたいという旨を記していた。
「……それで、クロウ殿はどのような方法を提案したのですか?」
この人が無計画で動く訳がないのだ。案の定違う書類をぽいと投げて寄越す。
「ギルドランのロゼ、カディルワースのシェル、桜花の翡翠、オーラリネリアのエレーヌ。四大国の守護龍協力の元、異空間を作ってそこに全員お招きするって計画だ。もう他三ヶ国の了承は得ている」
確かに、書類にはもう署名が入っていた。あとはぼくが署名すれば国と国をどれだけ跨ぐのだというこの『パジャマパーティー』とやらが開催される。
「……平和になったもんだ」
「全くだ」
ぽつりと呟けば、クロウ殿は呆れ半分に反応してくれた。さらさらと署名をすると、クロウ殿はもう一枚違う書類を取り出した。
「こっちにも頼む」
「……これは」
そちらも他三ヶ国の署名が入っている。思わずクロウ殿の顔を見ると、ニイッと唇を歪めた。
「ま、そのくらい許してもらわなきゃな」
クロウ先輩の話は書いていて一番楽しいので、そのうち載っけるつもりではいます。自作のもので推しキャラと言ってはアレなのですが、推しです。




