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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
後半、好きの種類
26/32

SS お控えください【レオン目線】




 背後でゴゥンと扉が閉まる音さえ忌々しく聞こえた。今しがた出てきたばかりの謁見の間、その大扉を貫通して玉座にいる王を睨みつける。


 なんて用事で呼び出してくれたんだ。


 思い返しても腹が立つ。お互い忙しい身の上だろうに、人払いしてまでする話がよりにもよって『恋愛相談』とは。


――――


「野郎同士で話し合ったってしょうがないだろ」


 つい素でしゃべってしまったが、陛下は咎めることもせず「確かに」と同意した。


「じゃあ、マリサ様が大扉の前にいたのはそれ関連ですか」


「なんだと!?」


 聞くなり飛び出して行こうとした陛下の後ろ襟を捕まえた。「ふぎゅ」とまずそうな声がしたため丁重に玉座へお戻しする。


「今行ってどうするんですか。二の舞ですよ。今マリサ様の方はリーンが話を聞いていますので、少し待ちましょう」


「そ、そうか……」


 我らが陛下は既に王様の仮面が剥げかけていた。というか今から装っても手遅れであろう。おれも息をついて前髪を掻き回した。


「それにマリサ様みたいなタイプはアドバンテージ握られると弱いタイプです。踏み込むとこ間違えると大怪我しますよ」


「と、いうと?」


「うちの妻もそうなので。上手く距離感保っていないと逃げられます」


「そ、そうなのか……」


 逃げられる、という言葉が相当ショックだったのか、陛下は後頭部に一撃もらったような顔をした。そして次いで出た言葉は。


「大人の付き合いとは難しいのだな……」


 だった。

 これには思わず素で「はぁ?」と返してしまった。このオコサマは素でぶん殴らないとダメだと判断して、反逆罪覚悟で素を出す。


「恋愛なんて大人ぶったままできると思うな? なにがなんでもあのが欲しいって欲望は子どもじゃないと認められないもんだろ」


 陛下が目を白黒させているのがなかなか愉快で、ニヤリと笑う。


「ま、逃げる相手を追っかけ回すのは愚策だな。餌をぶら下げて誘い出すくらいにしとけ。あくまで判断は相手に委ねる、そういうスタンスでな」


 と、語りはするものの、おれはいつも逆に仕掛けられる側なので偉そうなことは言えない。非常に聡い彼女は、おれが罠を張ったところで引っ掛かってはくれないだろう。

 陛下は幼い顔に似合わないくらい眉間にシワを刻んでいたが、反逆罪などと言い出さずにしずしずと頭を下げた。


「忠告、痛み入る」


「……はい。それでは、私はこれで」


「うむ、下がれ」


 一礼して謁見の間を出た。


――――


 さて、リーンの方は終わったかと控室の扉をノックしようとしたところだった。


「――今日は膝に座らせないのかなとかキスしないのかなとか触りたいとか考えるようになりま」


「コラ待てぇ!!!」


 思わず怒鳴り込んでいた。またもやプライベートをペラペラとしゃべってくれたリーンの頭をぐちゃぐちゃに掻き回す。悲鳴かどことなく嬉しそうだから意味はなさそうだが。リーンを苦々しく睨んだ後、マリサさんに顔を向ける。


「マリサ様、今こいつが言ったことは速やかにお忘れください。それと、なにがあったか知りませんが陛下と早く仲直りしてください。落ち込んでいるせいか仕事効率がやや落ちています」


 早口で告げると「うーん、努力はしてみる」と前向きな返答をもらった。陛下も悩んでいたので一応念押しはしておく。


「頼みますよ。陛下の方の用事も済みましたので、おれ達はこれで下がらせていただきます」


 リーンをひっつかんで控室を出た。早足で歩いていると、ぱたぱたと足音を乱しつつ謝られた。


「レオン。僕が悪かったからさ、そう怒らないでよ」


 怒っているのではなく照れているのだと、知っていて言う。やはり敵わないなと溜息をつく。歩く速度を緩めて手を放せば、隣に並んで歩き始める。


「陛下のお話はどうだったの?」


「リーンの方と一緒だ。ったく、なんで他人の恋愛相談なんかに乗らなきゃいけないんだよ。自分のことで手一杯だって」


 と、リーンが前に回り込んだ。足を止めれば、彼女は悪戯っぽく笑って首を傾げた。


「手一杯なんだ?」


 揚げ足を取られた。言葉の端に乗せただけの感情をよく拾ってくる。悟られてしまったので素直に愚痴を吐いた。


「全く、堂々と人前でイチャイチャ出来るんだからしとけって話だよ。忍ばなきゃならないこっちの気持ちも考えろよな」


「レオンもしたいの? 人前で、イチャイチャ」


 じっとこっちを見つめている。蠱惑的な笑みに理性がぐらついた。その余裕に満ちた笑みをいっそ泣き顔に変えてやりたくなるが……。


 おれは手を伸ばして額を弾いてやった。少々強めに。予想外だったらしく、彼女は後ろに仰け反った。


「人のいないところであんまり挑発するな、リリィ」


 横をすり抜けて歩いていくと、少ししてから追いついてきた。



 だから自分のことで手一杯なんだよ、全く。










元の原稿はリーン目線で書いていて、公開するのにマリサ目線に書き直し、SSでレオン目線で書く……。

三人の視点から同じ場面を書いたのは初めてですね。一応、誰の目線からでも書けるように考えてはいるのですが。

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