SS 呼び出しされた【レオン目線】
陛下に呼び出しされたところの、レオン目線になります。
オーラリネリア王国二階、謁見の間に続く通路はやけに静かだ。自分と半歩後ろを歩くリーン、二人分の足音がやけに響く。これはと思ってリーンへ声を掛けた。
「おい、気づいてるか?」
「うん、人払いがされてるね。ってことは陛下の呼び出しは重要任務かもねぇ」
内容にそぐわない朗らかさに眉をひそめてみせると、リーンは唇を尖らせた。
「ひょっとして君、僕が空気の読めないアホっ子だと思ってる?」
「いや、お前に限ってそんなことはないと思ってはいたんだが」
おれが緊張しないよう、わざと明るく振る舞っていることは予想していた。でもアホっ子の疑いもほんの少し。それが伝わってしまってんだろう。背伸びして肩に頭をぶつけてきて、早足で追い越された。おれも歩調を速めて追いつき、素直に謝ることにする。
「悪かったって。まあ、その、気を張ったところで下される命令は変わらないよな、うん」
「そうですよーだ」
リーンが早足をやめた。その拍子にこつんと手の甲同士が当たる。するとリーンがさっと周囲に視線を走らせた。人の気配がしないと改めて確認したのか、つんと小指でつつかれる。おれが要求に応じて小指を絡ませると、ふんわりと柔らかく笑った。
ああ、本当に可愛いことをする。
おれ達はやむを得ない事情の政略結婚だ。本来であれば貴族の養子になっただけの、元平民のおれには手が届かないはずの人。生粋の名門貴族令嬢。
いや、と惚気に走りそうになった思考をぶった切る。今彼女は隣で楽しそうにしている。それでいい。
しばらく歩けば謁見の間の大扉が見えてくる。扉の前に誰かいたので、そっと小指を解く。誰かはすぐにわかった。陛下の命令に縛られず、自由に王宮を歩ける黒髪の女性といえば一人しかいない。
「どうかなさいましたか、マリサ様」
リーンが声を掛けると、彼女はゆっくりと振り向いた。改めて見ても、表情の読みにくい方だとつくづく思う。しかし即断即決かつお転婆で大胆……常識の枠に収まってくれないリーンと似たタイプの女性なのは察した。
「マリサ様は陛下にご用事ですか?」
だから、訊いて返答に詰まっているのは珍しいことだった。どうしたものかと考え始めると、つん、と袖が引かれた。見ると、リーンが首を傾げていた。
「ねぇレオン、僕はマリサ様とお話ししててもいいかな?」
彼女は非常に察しがいい。そして割と頑固だ。許可を求めているが、ダメだと言ったところで引かないのは明白だ。おれがすることといえば。
「……まあ、確かに命令の中にリーンの名前はなかったな。別にいいんじゃないか」
こじつけて許可を出すこと。リーンはにこっと笑った。
「ありがとっ」
マリサ様のところに向かうと、なにか小声で話し始める。東側の控室を使うことにしたようだから、謁見が済んだら迎えに行くことにする。おれはおれで、いつもは衛兵が開ける大扉を自分で開けて入った。




