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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
後半、好きの種類
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桜花国




 桜花国が内陸にあるのにどうやって鎖国をしていたか、説明しましょう。


 それはずばり、巨大な岩壁に覆われていたからです。ドームのようにすっぽりと。そのため、限られた手段でしか内部に入ることはできなかったのです。破壊もできなかったのには理由があります。実はその岩壁、桜花国の守護獣である地龍が亡くなって石化した姿だったのです。死してなお国を守ろうとしたその行為は、大戦から桜花国を遠ざけたそうです。


 最も、私が訪れた時には岩壁はありませんでした。ここで出てくるのが魔法塔の創始者達です。戦後間もなく、桜花国はオーラリネリア王国に復讐しようと創始者達に持ちかけました。ところが創始者達は提案を蹴ると共に、凶悪な力で岩壁を破壊したそうです。


『外を見ろ。テメエが復讐する相手はどこにもいないんだよクソジジイ』


 この台詞が桜花国の王にトドメを刺したと言われております。王は隠居し、帰還したレンのお母さん――風花姫が実権を握っています。


『間もなく~桜花国大鳥居前~桜花国大鳥居前~』


 その車内アナウンスで私は目を覚ましました。そして窓の外を見て唖然としました。そんな馬鹿なと思いましたからね。けれど私の目の前には、凱旋門のように巨大な鳥居が堂々と建っていたのです。


 私が到着した時にはもう夜になっていましたから、幻想的な雰囲気も五割増しくらいでした。鳥居からずっと一本道に長い大通りがありまして、提灯がずっと連なっているのです。懐かしい、和の灯り。道行く人々は洋服が半分、和服が半分といったところで、見渡す限り黒い頭なのです。並ぶのは全てぬくもり溢れる木造家屋。

 気分はタイムスリップですね。これから一杯、と考える人が闊歩しているような時間帯のせいか、私の脳裏にはふと新橋という単語がよぎったくらいです。


 しかし私の目的は味噌です。更にいえば、とっくに私の不在に気づいて追っ手が来ているはずです。私はすっと人混みに紛れました。池袋駅や新宿駅の乗り換えを思えばこのくらい簡単です。

 あちこちで味噌の壺を見せていたら、お店はすぐに特定できました。やっぱり有名な店でしたので。


 特に迷うことなくお店に辿り着きましたが、ここで問題が起きました。……やはり夜でしたので、お店はもう閉まっていたのです。どこかで一泊するしかない、と溜息をつくと、視界の端を金色が掠めました。振り返ると、それは角を曲がっていくのが見えました。その時見えた横顔に驚いて、私は追いかけることに決めました。


 人生初の尾行でした。

 特に追いかけてどうしようかという考えもなく、角を曲がること三回目、突然目の前に人が降ってきました。比喩ではなく、本当に降ってきたのです。屋根の上からひらりと。悲鳴を呑み込んだ私ににっこりと微笑みかけて。


「こんばんは。乗ってくれるかどうかは賭けだったけれど、度胸のあるお嬢さんでよかったわ」


 動きやすそうに着崩した着物に似つかわしい、腰まで真っ直ぐ伸びた黒髪を揺らし、緑の瞳に妖しげな光を湛える女性です。一児の母とは思えないくらい若々しく美しい人。もちろん私は初対面ですが、察しはつきました。


「風花姫、ですね?」


「ええ。カルロヒューレンの母、そして貴女のお姑。日之桜風花です。聡明な子は大好きよ、真理紗さん」





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