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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
後半、好きの種類
17/32

事件の発端

ここから後半ですー。







 さて、ここからはとある事件についてお話しましょうか。

 重大事件かと言われると首を捻りますけれど、レンにとっては大事件でしたし、私にとっては気持ちを整理することができた節目のようなものだと思います。


 まず、味噌がなくなりました。


 ええ、そうです。味噌汁中毒のレンにとっては生命線とも言える味噌です。ほら、大事件でしょう。

 以前お話したと思いますが、レンのお母さんは半ば誘拐される形でオーラリネリア王国にお嫁に来ました。……私も似たようなものですが、私は自分の意思でここにいます。そこは大きな違いです。


 なんとその時、レンのお母さんが意地でも放さなかったのがこの味噌壺なのだそうです。


 オーラリネリア王国は島国なので、ワカメや昆布には困らなかったと思います。しかし醤油や味噌といったものはレンのお母さんの祖国、桜花国の特産品です。大戦中は鎖国状態だったと聞きましたから、入手はさぞ困難だったことと思います。


 私は、味噌がなくなったと告げた時のレンの顔を一生忘れることはないでしょう。


「は……?」


 十秒後に世界は滅びます、とでも宣告されたかのような顔をしていました。日課の味噌汁摂取を終えた直後のことです。……そう、今でも変わらず続けているのですよ。夜中の味噌汁タイム。


「今のが……ラスト味噌汁……?」


 おいおい大袈裟な言い方だなあと思いましたが、間違ってはいないので頷きました。先に教えてあげた方がよかったでしょうか。でもそうすると神棚にでも飾って腐らせそうな気がしました。神棚ないですけど。


「桜花国からお取り寄せできないの?」


「その味噌は少々特殊でな。王室御用達だと母上が言っていた。しかし我が国は桜花国から姫を拐った挙げ句、冷遇して国外追放にしたのだぞ。味噌を売ってくれると思うか?」


「私が味噌屋なら絶対売らない」


「だろう?」


 私の世界ではどこにでも売っているものですが、魔法やドラゴンよりもお目にかかれないものだったのです。叔母かエレーヌに頼んで向こうの世界から持ってきてもらえないかとふと考えたのですが、味が全然違うのです。王室御用達と聞いて納得でした。

 そしてレンは十歳児の癖に舌が肥えています。スーパーの味噌で妥協するとは思えませんでした。


「あ、それなら私がこっそり買って来るとかどう? 壺持っていけば売ってもらえるでしょ、たぶん」


 名案だと思いました。黒目黒髪というのは桜花国の人の特徴らしく、よく桜花国出身かと訊かれることが多かったからです。それなら簡単に紛れ込めそうですし、一見さんお断りの店だとしても、店の模様入りの壺を持っていけば大丈夫だと思ったのです。


 しかしレンが真っ青になりました。


「ダメに決まってる! さっきの話を聞いていなかったのか!? 王妃だとバレたらどうなるか」


「じゃあ味噌汁やめる? できる?」


「……、それでもダメだ」


 味噌汁と私の安全を天秤にかけて若干ぐらついたようですが、すぐ私を優先してくれたのでよしとしましょう。


「ぼくがなにか手を考える。だから危ないことはするな」


「……わかった」


 と、口では言いましたが、私が諦めると思っているのなら大間違いです。

 翌日、私は味噌壺を持って大陸へ向かう船に乗っていました。パスポート的なものはエレーヌに協力してもらってなんとかしました。レンの懸念は最もですが、私には大丈夫だという確証がありました。それについては後でお話しします。


 という訳で、今回は異世界に来て初めての海外旅行をしたお話です。




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