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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
前半、馴れ初め
15/32

タネアカシ

 叔母は私達の話を聞き終わるなり爆笑しやがりました。


「なに!? そんなことになってたの? よかったねぇ王妃様だよマリサ!」


 椅子に座ったまま足をバタバタさせているので、赤いハイヒールの踵がカコカコ鳴っています。


「それで、次は叔母さんの番だよ」


 私に睨まれて、叔母はゆっくり紅茶を味わってから話始めました。


「簡単なことさ。私の姉、アリーシャが行方不明になってね。必死に探したらどういうわけか向こうの世界に行っちゃってたって訳。私はどうにかこうにかして、人形を向こうの世界に送る方法を編み出した。それで姉と姪に接触してたの」


 母は有紗と名乗っていました。おっとり天然は貴族で世間知らずだったからということが判明したのです。


「連れ戻そうと思ったんだけど頑固でねぇ。愛する人ができたから帰れるとしても帰らないの一点張り。こうなるともうテコでも動かないってのはわかってたから、見守ることにしたんだけど」


 これに関しては嘘です。母を取り合って叔母と父は大喧嘩していました。視線をやるとにっと口の端を持ち上げました。わざとです。


「まさかあんな早く死んでしまうとは思わなかった。私はマリサを引き取らなきゃって躍起になったね。っていうのも、マリサがこっちの言葉をペラペラ話すのを聞いていたからさ」


「こっちの言葉?」


 私が聞き返すと、叔母はオーバーに肩を竦めました。


「おやおや、自覚がなかったのかい? マリサ、今あんたは日本語を話していないんだよ」


「……は?」


 寝耳に水でした。私はずっと日本語を話していると思っていましたから。叔母はまたもや大笑い。


「たまげたねぇ。おかげで向こうじゃ気味悪がられてたろ? 親戚にもあんな嫌われて」


 言われてみれば、言動が変だと嫌われていました。それはこっちの言葉を使っていたせいだったようです。長年の謎が解決された瞬間でした。


「いずれはこっちに連れて来られたらいいなぁとは思ってたけど、まさかへーかに先を越されるなんてねぇ。私が幸せにしてあげるつもりだったのがとんだ誤算だよ」


 叔母はじとっとレンを睨めつけました。レンは視線だけ斜め上に逃げました。叔母はにっこりと、大輪の赤薔薇を咲かせるような笑顔を浮かべました。


「うちの姪をよろしくお願いしますね、陛下?」


END


――――


※オマケ



 ある日、私が廊下を歩いていた時のことです。


「マリサ様、お疲れ様です」


 背後から掛けられた声に振り向くと、長い髪の女近衛が立っていました。改造された軍服を着られるのは七賢だけ。少しずつ勉強していたので、彼女が七賢の一人だとわかりました。


「どちらさま?」


「最初に王を狙った刺客で、です」


 気味の悪い女でした。私が黙って睨みつけると、掠れた笑い声を漏らしました。


「おや、意外ですね。掴みかかって来るかと思ったんだが」


「そうしたいところだけど、絶対勝てないだろうから」


「ふ、ふふ。聡明な方は、大歓迎。そう、そう、王の人間不信が治ってよかった」


 私が感じていた得体の知れない異様さ。それが塊になったような感じがする女でした。こいつはレンを試したのだと思います。信頼している人に裏切られたらどうなるか。一時の感情で国を傾けてしまうのか。


「レンは合格、ということでいいのね?」


「首が繋がってるってぇことは、そーゆーこと、ですわ」


 かつて独裁王によって国がズタズタになったことを思えば、国民誰もが暴走する王を二度と戴きたくはないでしょう。それでも私はこの不気味な女を許せない。


「あなたのやり方は嫌い」


「でしょうなぁ。しかし、理解してもらおうとは思わない、ぜ」


 女は霞のように消えました。以来、その姿を見ません。



前編はこれで終了です。

すぐ後半……と行きたいところですが、七賢議会についてたぶん解説忘れたので、レオン&リーンの『酷似の仮面』を間に挟むことにします。

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