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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
前半、馴れ初め
14/32

予定調和すぎません??


 私の唯一の心残りは味噌汁です。


 いや、突然なにをと思うかもしれませんが合っています。毒の影響もなくなってレンを追いかけ回しているのですが、すっかり人気者になってしまい会議やら会食やらが目白押しになってしまったのです。ですがデスクワークは七賢さん達が手分けしているはず。絶対私のことを避けていました。後で確認取ったらそうでした。ひどいです。


 そしてとうとう見送りの日になっても会うことはできませんでした。目の前ではエレーヌが珍しく溜息をついています。


「いい加減にして欲しいの……」


 同感でした。私だって暇ではありませんでした。味噌汁の作り方を書いていたら、エレーヌに「読めないの」と言われてしまったのです。日本語で書いていたのに気づいて慌てて翻訳しようとしましたら、驚いたことに私、この国の文字は読めるのに書くことができませんでした。なので味噌汁の作り方ひとつ書くのに物凄く時間がかかりまくったのですよ。


「忙しいんでしょ。しょうがないよ。それ、後でちゃんとレンに渡してね」


「任されたの」


 さて、元の世界に帰るかと気合いを入れたところで、カツカツと足音が近づいて来ました。なんとかギリギリ間に合ったね、と嫌味のひとつでも言ってやろうかと準備していましたら、ドアが開いた時には吹っ飛んでしまいました。レンはいつもより装飾の多いマジモンの王子様みたいな服を着ていました。実は式典用の正装です。呆気に取られつつ、私はエレーヌの手にあるブツを指差しました。


「あの、味噌汁の作り方……」


 レンはそちらを一瞥すると、腰からすらりと剣を抜いて一閃。鞘に戻した時にはレシピだったものがはらはらと床に舞い散りました。


「ちょっと、人がせっかく書いたのに、?」


 語尾が変になったのは仕方ありません。レンがぎゅうっと私を抱きしめてい、た、んです。エレーヌが「ぴゃっ」と鳴いて口を覆いました。落ち着け、これは別れの挨拶だと私は私に言いました。その努力は一瞬で打ち砕かれました。


「正式に、ぼくの妃になってくれ。ぼくはマリサが欲しい」


「いいよ」


 これは口が勝手に動きました。自分でもびっくりです。軽く即答されたのがやはり不満だったのか、解放してくれたレンもちょっと不機嫌そうでした。


「なんか、あっさりしすぎてないか……? これでも言うのに結構勇気が要ったのだが」


「ごめんごめん。ついぽろっと」


 レンは鳩が豆バズーカを食らったような顔になりました。


「ぽろっと!? 重大な決断なのにぽろっと!?」


「熟考したところで考えは変わんないんだし、いいんじゃない?」


 私は恋愛事には疎い方です。ですが、なんなんでしょうね、ええ。私がいないとダメなのではと思ったというか、目が離せないといいますか。欲しいと言われたらあげるしかないそもそも欲しいものを訊くつもりだったしそれで私が欲しいと言われたらあげるしかな☆○▲□★♪……………。

 率直に言えばっ! レンと向こうの世界を天秤にかけたらレンの方が重かったというだけの話ですあーあーあー! なんで!? 知らない!


 とにかく、私が顔に一切出さなかったせいか、レンはさっと青くなりました。


「熟考して断られたらかなり傷つくんだが……」


「それで? 私はこの後どうしたらいいわけ?」


「左手を貸してくれ」


 ということでしたので左手を出しました。そして薬箱にラピスラズリをそのまま削り出したような指輪が収まったのです。こういう風習は異世界でも同じなのですね。面白いですね。


「じゃあマリサはずっとこっちにいるの?」


 成り行きを見守っていたエレーヌの問いに、私は「うーん」と唸りました。


「私のわがままだけど、またこっちに戻って来られる確証があるなら一旦向こうに行きたいな。叔母に言わなきゃいけないだろうし」


 エレーヌはこくこくと頷きました。


「マリサがわたしの鱗を持っていれば道は開きやすいはずなの」


 なら一旦戻ろうかな、と言おうとしたところ、エレーヌの表情が途端に険しくなりました。


「どういうこと? 向こうの世界からなにか来るの」


「ここにか!?」


 エレーヌは頷くと、私とレンの前に立ちました。


「わたしの庭に転移してくるとはいい度胸なの。やっつけてやるの」


 私達が緊張した面持ちで宙を見つめていますと、エレーヌの言った通りグニャリと景色が歪みました。そしてそこからべしゃっと吐き出されたものは。


「……人形?」


 エレーヌが呟いた通り、床に顔面を打ちつける形で突っ伏している人形でした。さながら金髪の女お化けとでも言いましょうか。見守っていると、ピクリと動き、ぐいんとあり得ない動きをして立ち上がりました。そして首をゴキリと鳴らし一言。


「ん? ここどこだぁ?」


 それはなんと、私の叔母梨々でした。問いただそうと口を開きかけたところ、レンが叫びました。


「グランサーシャ卿!?」


 ぎょっとしましたよ、それはもう。叔母はヘラヘラ笑いながら右手を振りました。


「あ、へーかじゃないですか、こんちはー。エレーヌ様もご機嫌麗しゅう。………ん? んんん? おーや!? そこにいるのはマリサじゃないか!」


 そこまで一気に言い放ちやがりますと、突然真顔になりました。


「で、ナニコレ?」


 それはこっちが訊きたいです。




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