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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
前半、馴れ初め
13/32

お見舞い

「ぼくは今度から皆にどんな顔で会ったらいいんだ……」


 私のベッドの隣の椅子に座り、項垂れているのはレンです。誤解も解けて仲直りしました。山積みの仕事はレオンさんを含む七賢の人達が強盗のように奪い取っていったとのこと。


「大丈夫よ。今まで虚勢張ってたんだなぁ、可愛いーって思われるだけだから」


「それが嫌なんだが!?」


「内心笑われてる王サマもそれはそれでいいんじゃない?」


 私の提案に絶望していくレンは見物でした。動画にしておきたかったですね。


「嫌だ……」


「でもどうしようか、これで私が病死したなんて発表したら、あのおじさまがまずいんじゃない?」


 レンははっと顔を上げました。考えてなかったと書いてある顔を。


「……すまない。なにか対策練るから……うん」


「マリサ」


 次いで窓から入って来たのはエレーヌです。


「マリサ、もうすぐ帰れそうなの」


「本当?」


 エレーヌがこくこく頷くのを見て、私はこの世界でやり残したことを考えました。真っ先に出てきたのがこれだとは我ながらどうかと思いますが。


「じゃあ味噌汁の作り方を書いておかないとね」


「なぜだ?」


 レンの問いにはこっちがなぜだ、でした。


「え、私が帰ったら誰が味噌汁作るのよ。いつか来るレンのお嫁さんも作り方がわからないと大変でしょう」


 レンはそこで黙りました。顔にはなんて書いてあったでしょう。確かに、となにを言っているんだこいつは、が半々といったところでしょうか。失礼なことです。


「少し、考える時間をくれ」


「いいけど」


 よくわからないまま許可を出すと、レンはふらふらと出ていきました。首を捻っていると、エレーヌが近くに飛んできました。


「マリサ、渡すものがあるの」


「お土産?」


「というよりお守りなの」


 エレーヌがくれたのは、髪飾りでした。青くてキラキラ光っていますが宝石ではないなと思いました。それが花のように重ね合わせられていて、グラデーションになっています。どこかで見たことあるなと思っていたら、エレーヌの左目の下にある鱗、そこに視線が行きました。


「これ、もしかしてエレーヌの鱗?」


「そうなの。今回マリサが拐われたのはわたしのせいでもあるの。気づいていたけれど、王族でもないのに国の守護をしているわたしが力を奮うわけにはいかなかったの。けど、これがあれば大丈夫なの」


「……私が貰っていいものなの?」


「わたしも異存はないの。それにカルロの指示なの」


 すると、いつも無表情のエレーヌが「はあ」と溜息をつきました。途端に表情が憂いを帯びます。


「ここまでしているのだから、わかってもいいと思うの……」


 それは、どっちに。と訊いたら両方だと答えられそうな気がしました。


「マリサ様、お見舞いに来ましたよー」


 微妙な空気を柔らかくしてくれる朗らかな声の主、リーンがやって来ました。後ろにはレオンさんもいます。


「じゃあ、わたしはお散歩に行くの」


 エレーヌはいつもの調子に戻って窓から出ていきました。レオンさんが来たから退散したようにも見えました。


「大変でしたねぇ。傷痕も残ってしまうのですよね?」


 リーンが私の肩の包帯を見て困り顔になります。


「特に支障はないかなって」


 そこまで気にするほど痕は残っていません。貴族だったら大問題でしょうが、日本ではそこまで大騒ぎにならないでしょう。そう考えていたのですが、リーンとレオンさんは各々勝手に解釈しました。


「マリサ様はもう嫁ぎ先決まってますからねー」


「名誉の負傷だもんな……わかる、わかるぞ……」


 二人にも仮の嫁であることを説明したい衝動に駆られましたが、そこはそれです。最後まで隠し通します。


「お披露目終わったら次は結婚式ですね。いつになりそうですか?」


 リーンの無邪気な問いに返答しかねていると、意外にも答えたのはレオンさんでした。


「少なくとも三年……いや、五年後くらいになるんじゃねぇかな……」


 それに首を傾げる私とリーン。レオンさんは気の毒そうな顔で重々しく告げました。


「マリサさん、頼むからそれ以上伸びてくれるなよ……」


 なるほど身長の話だったようです。




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