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チビ陛下と私の味噌汁ウォーズ  作者: 佐田祐美子
前半、馴れ初め
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詐欺注意

 それから、私はレンに会おうと幾度も試みました。というのも、味噌汁作っても出てこなかったからです。エレーヌの魔法に阻まれ全く接近できませんでしたが、諦めるどころか腹が立って仕方ありませんでした。


 このやろう、人の話を聞け。


 要はそういうことです。意地です。根性あるのみです。なにはともあれ味噌汁を飲めと。あの子は味噌汁なしに生きていける人間ではありません。閉め出しを食らったイライラと体調の心配で私はすっかりやさぐれました。

 しかも私のお披露目は明日に迫っています。準備をするようエレーヌにもリーンにも言われていましたが、当日話をするのでは遅いと思ったのです。


「まあ、あの方がそうですかな」

「髪の色を見るに、リベリヲンの?」

「きっと桜花国でしょう」

「あの国は地面に座るのが普通だそうですからなぁ」

「動物と一緒ではないですか」


 廊下の隅に座って休んでいると、そんな陰口も聞こえてきます。それすらなんとでも言えと思える程でした。……いえ、ね、廊下に座るのはよくないです。良い子は真似してはいけません……。でも一日中廊下を全力疾走していたのですから、少しくらい大目に見てください。


 そしてこれも大目に見てください。


「君が噂の陛下のご婚約者殿かな?」


 疲れきった顔をのろのろと上げると、恰幅のよいおじさまがにこにこと笑っていました。


「あ……はい、笹森真理紗です」


 ぼろぼろではありましたが、立ち上がってリリアンヌ仕込みのお辞儀を披露しました。リリアンヌはやんわりとしたスパルタなので、付け焼き刃にしては上等なお辞儀になりました。


「桜花国風の名前だね。だとすると、マリサ嬢と呼ぶので合っているかね」


「そうですね」


「私はエルウィン・ウィリントン。君の……この、ことについては、陛下も大層心を痛めていらっしゃる」


 ウィリントン。お魚美味しいウィリントン。


「それはどうでしょう」


 私はつい自嘲しました。だって、味噌汁中毒のレンが味噌汁を飲みに来ないくらいですもの。よっぽど私の裏切りがショックだったに違いありません。母親に裏切られたようなものですから。

 おじさまはさも可哀想なものを見る目になりました。


「マリサ嬢、一度私の後についてきてみるかね」


「え?」


「私の後についてくれば、陛下の前に出られるかもしれない」


 誰かの後についていく、それは試していませんでした。私が迷ったのは瞬き二回。


「わかりました……お願いします」


「結界がどんな作用をするかわからないがね。ものは試しだ」


 前置きをされて、私はおじさまと歩き始めました。歩いて歩いて、ドアを開けたらなぜか裏庭に出ていました。おじさまはポリポリと頬を掻きました。


「いやあ、これは参ったな」


 おじさまが失敗したことを知りました。その情けない声に私の方が申し訳なくなったくらいです。


「いいのです。陛下が頑固なだけですから」


 私の非とは一切言いませんでした。裏切られたと勘違いして、勝手に私を閉め出した。どこに私の非があるでしょう。なのにおじさまは更に「ごめんね」と謝罪を重ねました。いいですよと私が言う前に、ぐらりと視界が傾きました。


「本当に、ごめんね」


 謝るくらいならやるなよ、と突っ込みを入れる暇もなく、私は意識を手放しました。考えてみると疑うべきであったと思います。切迫した状況というのは本当に怖いものですね。皆さんも詐欺には十分お気をつけください。




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