入学式前夜
「マコト、勉強は分からないことをそのままにするとすぐについていけなくなる。分からないことがあったら、すぐに学校の先生やお父さん、お母さんに聞きなさい。」
「勉強は絶対に公式を覚えてはいけない。特に算数はな。どうせ高校や大学の内容になると理解できなくなる。だが、小学生の内容から覚えると応用ができない。人間の頭なんて、覚えられることは限られているしな。」
それから……と、いくつか小学校生活での注意事項を話す父を、尊敬の眼差しをもって熱心に聞くマコト。
入学式前日のことです。この父の言葉はよく覚えています。
父、母、一つ下の弟リョウ、祖母の5人家族で、父は寡黙ではありませんが、威厳があり、絶対に口答えはできません。また、話すことは全て正論なので、私は父に絶対の信頼と尊敬の念を持っていました。
明日から小学校ということでしたが、私はひらがなとカタカナの読み書きと、簡単な漢字は書けました。繰り上がりや繰り下がりの足し算と引き算もできました。
教えたのは祖母です。
なぜ、両親ではなく、祖母なのか。それは後で明らかになります。
祖母は上手に教えたらしく、このときの私は知らないことを知りたい、勉強は楽しい!と思っており、小学校の入学は本当に楽しみでした。
学生時代を振り返り、父の注意事項は本当に役に立ったと思います。