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羊皮師  作者: 宮代きい
序章
1/5

第一話 ギルドと魔法と少女

 

 羊皮紙(ようひし)――――――動物の皮を加工して作られる書き写しの材料。


 この羊皮紙が書き写しの材料。つまり、紙として使われるのは、主に記録や報告、依頼等だ。

 例えば、神殿ギルドの聖典を書き記すのに作られる冊子。商業ギルドの保有している店の売上報告書。冒険者ギルドの掲示板に張り出されている依頼書。これら全てに羊皮紙が使われている。


 古くから貴重とされてきた羊皮紙はいつの日からか、その使い方に幅が広がっていき、貴族やギルドの間だけで使われる高価な物という認識が消えた。少なくとも我が国では、貧困な一般市民であっても、家計簿。手紙。地図。絵画。看板。最近の流行で言えば、伝記等の小説。これら全てを羊皮紙が担っている。

 当然、誰もが今までそういった紙の使い方をしてこなかったわけではない。だが、昔は主流だったパピルス紙では限界があった。羊皮紙と比較して寿命も短く脆い。さらには、両面使えない等の扱いづらさが目立った。

 そして、その問題の全てを解決した羊皮紙が紙の主流に成り代わって約一世紀。紙一つとっても大層な進歩だ。


 だが、半世紀も前までは、今の様に幅広く誰にでも使える程に安い物ではなかった。


 最も古くに作られたのは約二世紀前。

 当時は恐ろしく貴重な物だった為、パピルス紙を主にして併用していた。パピルス紙もそれなりに高価な物ではあったが、羊皮紙は群を抜いており、パピルス紙の約一万五千倍。値段にして一千金貨。それは、たったの一枚で冒険者ギルドの最高位である第八位色の《黒色》の冒険者を三人雇える程の巨額。


 これだけ貴重且つ高価だった理由。それは主に生産にあった。

 生産を始めたばかりの頃は、その方法が確立されていない状態だった上に、寄生虫や皮膚病等の疫病が特に流行した時期と被った事が要因だった。動物がこれらの病に掛かってしまうと、その動物からは綺麗な原皮が搾取できないからだ。


 だが、半世紀程の時が経ち、病の流行も過ぎる。さらには確立された生産工程を学んだ羊皮紙職人の数も増え、安定的な生産する事が出来るようになった。

 当時、羊皮紙の制作は生産ギルドの傘下にある"畜産ギルド"が担っていたが、供給が需要に追いつき始めて大きな利益が見込めるとされた為に、同じ生産ギルドの傘下に新しく『羊皮紙ギルド』としてギルドを新設し、その製法技術を独占させた。


 だが、それから約一世紀。随分と値は落ちたが、高価な事にはあまり変わりなかった。値段にして80金貨。一枚の価値が第六位色《紅色》の冒険者を一人雇える程。その価値は、値段の桁も雇える冒険者の位色も二つも下がる結果となった。これでも大幅な値下がりとも言えるかもしれないが、それだけ値が落ちても一部の富裕層を除き、一般市民が私用で家計簿や手紙に使う事はとてもできない。

 最適化された生産方法に広大な生産工場が三つ。羊皮紙の生産作業者が120人。これ以上に無い程まで安定したギルドはあまり無い。他の生産品であれば、時期や流行によって需要が大きく振られる為、売上の停滞も止む終えずに生産量を減らしたりするが、羊皮紙はその限りではない。晩年、生産は続けられている。

 つまり、これ以上に安価になる筈はない―――そう思われていた認識は、やがて大きく改められる事になる。


魔法。


 この世界には魔法がある。魔法とは、特異な人間が持つとされる『魔力』という不思議な力を使って引き起こすことが出来る現象の総称の事を言う。

 今では魔法ギルドが立ち上げられてうまく組織されているが、彼らが希少とされていた時代は、その殆どは忌み嫌われ虐げられてきた。

 殆ど、というのも地方によっては信仰の違いより、恵みを齎す者とする村などが極少数ながらも存在していたからだ。だが、奇妙な目で見られていた事に変わりはない。

 長年苛まれ続けた特異な人間にしか扱えなかった筈の魔法。それが、虐げてきた者達にでも簡単に扱える方法を見つけた時、世界は変わった。それも、とても大きくだ。

 その方法とは―――


羊皮紙に魔法を"封印"する事が出来た事だ。


 魔法を使えない。つまり、魔力を持たない者と言われていた人間にも、羊皮紙に封印された魔法であれば使う事が出来るという訳だ。

 だが、彼ら"魔力を持たない者"には使う事ができるというだけで、封印する事はできない。結局、封印するには魔法を使える人間が必要だった為"魔法を使える者"を『魔法使い』という尊重される呼び方になった。


 そして、その結果として今の街並みが大きく変わることとなった。


 半世紀前。夜になった暗い街中にあるのは、月明かりと窓や扉から漏れる蝋燭や松明の灯りだけだった。それが、今では魔法で作られた半永久的に道を照らしてくれる街灯が25メートルごとに置かれ、街中であればいつでも活動する事が出来る程に明るい。

 薬草を塗って時間を掛けて癒していた身体の傷や病は、治癒魔法を掛けたり、生成魔法から作るポーションで即時回復され、解毒剤ですら必要無くなっている。

 馬に乗った弓手の放つ矢が飛び交ったり、大勢の人間が強く握り締めた剣を振り回すような戦場も激しさを増し、今では炎や雷や水に変わり、随分とカラフルになった。


 活躍の場はそれこそ"全て"

 魔法の汎用性は日に日に増していき、同時に羊皮紙も大量に生産されていった。間に合っていた筈の供給は大きく不足。その高すぎる需要に答える為、既に大きな工場をさらに増やし、人を増やし、挙句の果てには、さらなる効率を得る為に製造過程に羊皮紙に封印された魔法を使い出したのだ。

 だが、こうして大きな利益を上げた羊皮紙ギルドは、傘下に入っている筈の生産ギルドの全体収益を毎年最低でも250%を上回る結果を出し、生産ギルドも所属する"産業ギルド同盟"の生産ギルドの実質の代表は、羊皮紙ギルドに成り代わっていった。


 同時期。新しく立ち上げられる事となった魔法ギルドは少数だった。当初は、虐げられてきた憤りや恐怖から所属する事を拒んだ者が多かった事が原因だった。

 だが、魔法使いが居なければ魔法を使う事は誰にもできない。国はさらに、魔法ギルドに属する魔法使いの総称を《魔法師》と呼び、その社会地位を高めた。さらに、彼ら魔法師だけが"羊皮紙に魔法を封印した物"―――マジックスクロールの作成が許される制約が出来上がった。


 作成が制限されている表立った理由は二つ。

 一つ目は作成されたマジックスクロールの管理。これは流通を管理する為だ。例えば、市民に販売出来るマジックスクロールは明かりや収納を拡張させる魔法などの生活の助けになる魔法だけ。冒険者には位色に合わせたレベルの治癒魔法や攻撃魔法。神殿ギルドは全ての治癒魔法や一部の人間にのみ使用が許された転移魔法などだ。

 二つ目は羊皮紙に描く魔法陣に、一切のミスが許されない事だ。これは、意図せずとも魔法陣の線1つ間違えただけで、全く別の魔法になるからだ。魔法使いには、その魔法陣からどんな魔法の種類かを見分ける事が出来る。それでも、詳細まで分かる魔法師は極少数だ。さらに、使用する事しかできない人々には、それを見分ける事は当然できる筈もなく、なんの疑いもなく使うだろう。


 この制約のおかげで、需要の増したマジックスクロールの作成権利を独占した事により、商業ギルドの次に収益額の高いギルドとして成り上がった。こうして他のギルドよりも歴史の浅い魔法ギルドが、国を支える四大ギルドの一つに数えられるようになったのだ。


 現在、魔法師の人口が3%を占める、此処"ヴァミニアム王国"は、領土、人口、経済に置いて最も大きな国だ。

 今もなお、数え切れないまでに発展したギルドやその連合、同盟の規模はどんどん大きくなっている。

 最強の冒険者。最高の信仰者。そして、最上の魔法師。その全てを揃えられた此処"ヴァミ――――――


「あーーー!!もっと簡潔にして!」


 縦長の広い部屋。大きな楕円形の黒曜石できた真っ黒な机に、15の木製の椅子と最奥にある豪華な一つの椅子が等間隔で据えられた広い会議室。その全ての椅子には、丈の長い全く同じの黒のローブを着た人間が座り並ぶ。

 そんな空間に荒げた幼い声を響かせた主は、その1つだけの豪華な椅子に座る少女。明らかに周りより座高が頭二つ低いその少女は、長く伸ばした金髪と碧い瞳が特徴的な、輪郭の柔らかい将来性に満ちた顔立ちをしている。

 そんな麗しい少女の険しい表情を伺っているのは、少女の真反対にある扉を背に椅子からたった一人だけ立ち上がっている男。部屋の扉を背にして座る健康的な中肉中背な体をした若者で、決して良いとは言えない目つきは、浮かべている苦い表情のせいで更に悪化していた。短髪に切り揃えられた前髪から見えるぐっしょりと濡れた額から垂れた雫が、机に広げた羊皮紙を汚す。


「え・・・と、これでもっていうか・・・その・・・近隣国に対して、これほど優れた魔法師は居ないという点を大きなアピールポイントとすれば・・・」


 フェードアウトして行く乾いた声。変わらない少女の表情に、湧いてきた焦りが喉を焼いて声がでないのだ。

 始めて出席する四年に一度の"大"定例会議で、自分の詰めの甘さを他の役員達に露見させてしまった。普段通りの定例会議であれば、しっかりと謝罪した後に、場を改めてからやり直しも出来るかもしれない。だが、この場はそう言った事が許されるような"緩い"会議ではない。

 役員は全員で7人。外交委員長と副委員長に一人ずつ。財務委員長と副委員長に一人ずつ。人事委員長一人と副委員長が二人。半年毎の定例会議はこの7人だけで行われる。内容は、定例報告と役職毎に出席したギルド会議からの議題討論。つまり、分からない事は誰かに聞くことのできる会話のある会議だ。

 しかし、今行っているのは"大"定例会議。役員ではない8人が加わる少し特別な会議だ。その内7人は此処"魔法ギルド"に置いて、いや、此処"ヴァミニアム王国"に置いて最強の7人。

 彼らは、その余りある力を認められて特別な呼ばれ方をする。


 大魔法師。


 それは、いくつかある魔法師という称号の最上にして、人間という枠の最高位の人達を指す。そんな彼らを含んだ大定例会議はとんでもないプレッシャーだ。心拍が早まる感覚に頭の中はどんどん真っ白になっていく。対面に座る少女の顔を写していた筈の視界は、いつの間にか汗で模様を描いた羊皮紙に移っていた。


(落ち着け・・・落ち着け・・・)


 彼――グレンス・スクリーヴンは、大きく深呼吸した。目を閉じて落ち着いていく心拍をしっかりと感じ取る。

 幾度か深呼吸を繰り返し、目を見開いて取り戻した視界を元の位置に戻す。先程まで直ぐ近くに感じていた少女の顔を改めて見ると今では遠くに感じる。


(2週間掛けて考えたアピールポイントを全部並べる必要はないんだ・・・自分の持つ魔法ギルドのイメージを一言に・・・!)


グレンスは覚悟を決めた。


「お待たせしました。では、続けます」

「ええ、どうぞ」


 落ち着きのある綺麗な声。対面の少女の右隣に座する美しい女性の物で、この大定例会議の時のみ進行役を担う大魔法師の一人。


「最上で最強な最高の魔法ギルド!」

「採用!」

「はい!すいませっ・・・えっ?」


 1つ返事の答えにあっけを取られた。

 確実に怒られる。『その、ふざけた回答はなんだ!』と、誰かに言われると思って身構えて居たが、あまりにも拍子抜けだった。


「それじゃあ、今のを魔法ギルドからのアピールコメントとして出しといてね、ベルクリナ」

「承知致しました」


 今回決議した魔法ギルドのアピールコメント。使用されるのは、国王会議だ。

 これは、自国の大きなアピールポイントとして、魔法ギルドを強く推薦するという、重要なアピールコメントを考える物だった。

 近隣国では未だに街灯は愚か治癒魔法を使える魔法師は極少数で、このヴァミニアム王国に依頼をする国も少なくない。魔法提供として強者の地位を確立したこの国をより一層、魔法に注力してその事を広めていこうという国王の意志だった。


 少女の顔は、先程までの険しい表情からは一転し、ニッコリとした満足げな表情を自分の左隣に座る男―――ベルクリナ・シェーランに向けていた。副外交委員長であるグレンスの直属の上司であるベルクリナは外交員長という役職の男だ。グレンスとあまり変わらない程の年齢だ。長身で細身な体付きで、少し伸びた金髪と柔らかな表情が張り付いた様な顔がとても印象的な気の良い人だ。


「ほ、本当に今のでいいんでしょうか?」

「いいんじゃない?っていうかそれくらい単純な方が強そうじゃん」


 自分に向けられた、幼い少女の声と明るく眩しい表情に、副外交委員長としての大きな充足感を感じながら腰を落とす。

 書き連ねた13行の魔法ギルドのアピールポイントは、最後の一文以外は無駄になってしまった。


「本日の大定例会議はこれで終了としますが、他に報告しておきたい事はありますか?」

「一つ、よろしいでしょうか?」


 美しい声に反応して左手を小さく上に伸ばしたのはベルクリナだった。進行役を勤める美しい女性はベルクリナを一瞥すると、『どうぞ』と言うように頷いて合図をした。


「私だけが先日出席した四大同盟ギルドの外交会議の案件は、先程お渡しした羊皮紙に取り纏めてあります。ただ、一つだけ記載されていない項目があります」

「記載漏れ、という事でしょうか?ベルクリナ殿。であれば追加で報告書の提出を要求致しますが・・・違うようですね」

「はい。記載してないのは"緊急案件"だからです。これから、口頭で報告させて頂きます」


 ベルクリナの表情が一変した。グレンスの普段見ている柔らかな雰囲気は一切感じない。初めて見る真剣な鋭い目つきをした上司にグレンスは萎縮した。

 終了間近で、和やかだった雰囲気は一転して空気は重く冷たい。全員が真剣な顔でベルクリナを伺う。


 普段の定例会議では、羊皮紙に記載して配布した上で担当役員ごとに口頭での詳しい解説をするのだが、大定例会議ではそれは省除されている。

 それでも口頭解説が行われるのは三つの重要案件がある時だ。急用案件、採決案件、そして今から行われる緊急案件の三つ。毎回2つか3つは必ずあるが、その内のどれも前者の二つだけ。先程のギルドスローガンも採決案件の一つだ。

 そして今、ベルクリナが神妙な面持ちで口にする緊急案件とは、文字通りの緊急に周知もしくは対策を講じなければならない物。


「ここ最近、文化遺産を狙う強盗が頻発している事は、先の会議でお話した通りです。そこで、つい先日。警備兵38人全員を皆殺しにして、大神殿に強盗が押し入りました」

「大神殿に・・・?あそこに盗むような物は無いと思っていましたがね」


 ベルクリナの左隣に座る、机に肘を偉そうに構えて鼻で笑うように話すのは、同じ役員の人事委員副長。ルナス・リーグランド。グレンスとは2つ違いのまだまだ若い男性。平均より随分と低く感じる座高は、身長の低さを表している。手入れのされたロングになりつつある黒髪と黒縁の眼鏡のおかげで知的な印象を与える。


 大神殿とは、神殿ギルドの所有する土地で"聖地"とも呼ばれる場所。その大神殿には、神殿ギルドの創始者でもある教祖が説いた教えの一つにある、『神の遺物』と呼んだ物が其処にある。

 それは―――


「まさか、クリスタル・・・ですか?」


 グレンスの問いに、ルナスが呆れ顔を見せる。

 クリスタル。近年では魔石と呼ばれる事もある。青の強い光を放つその神秘物は、現在大神殿でしか確認されていない"鉱物"だ。

 他の鉱物同様にそれなりに硬質ではあるが、削り出しや加工は完全に不可能だ。

 いや、正確に言えば可能ではある。だが、一度でも削り出したその部分は、その光を失って風化したような脆い石となる。そうなってしまえば、鉱物としては一切の価値の無い物となる。理由は現在も謎のままだ。そもそもクリスタルは、ある村にある小さな入口の洞窟の最奥に見つかった物だ。教祖もその村の出身の人間で、今もその鉱石の位置は変わってはいない。

 そして、大神殿と呼ばれる場所は、まさにその小さな入口の洞窟の最奥の事を指している。


「そんな訳無いでしょう。あれ程に巨大な鉱石をどうやって持ち出すんですか?まだ完全に掘り出されてすらいないと言うのに」

「えっ・・・?そんなに大きいんですか?」


 今度は、大きなため息を吐かれた。この場で話を停滞させているのは自分だと気付いたグレンスは羞恥に駆られて押し黙った。


 クリスタルはその洞窟の最奥の壁一面全て埋める程に巨大な鉱物だ。

 広場になる程までの大々的な掘り出し作業が行われたが今は完全に終了とされている。その理由は二つ。これ以上の掘り出し作業は空洞が大きくなりすぎて洞窟そのものが潰れてしまうという見解が出た事。それと、巨大すぎるが故にそもそも運搬は不可能だと判断し一生そこから動かさないと定めたからだ。


「他で大神殿に置いてある物って・・・もしかして!」

「はい。そのまさかです」


 ルナスの声と同様にその何かにグレンス以外は全員気付いたように息を飲んだ。

 信じられないとでも言いたげな表情をした最奥に座する少女のポツリと漏らした呟き。


「未解読のマジックスクロール・・・」

「はい、その通りです。()()


 役員でも大魔法師でもないもう一人の会議参加者の切羽詰まった表情は問題の深刻さを表していた。




 ――――――――――――




 マジックスクロールを発見したのは半世紀前。


 当時は、クリスタルの掘り出し作業が活発的に行われており、今のように広大に掘り進められては居なかった。

 入口から数百メートル進んだ所に繋がる洞窟の最奥にある自然に出来上がった空洞。その空洞の壁一面に広がる青い輝きが幾重にも反射して洞窟の中を照らしているおかげで、この洞窟には灯りを立てる必要のない程明るい。そんな中で行われるクリスタルの掘り出し作業。


 最初は、岩壁から青い鉱石が拳程の大きさだけが露出していただけだった。それを長年掛けて掘り進めた結果、今のように壁一面をクリスタルが染めてしまう事になったのだ。このクリスタルの掘り出し作業は短調な物で、ただひたすらに岩壁に鶴嘴を振るうだけの大雑把な作業だけだ。

 

 それが、何年掛かっても終わらない理由。それは掘り出す対象物が大き過ぎるという事以外にもう一つあった。

 それは神殿ギルドの依頼を受けていた採掘ギルドは、十数人しか作業者が在籍していないという事。今更な事だが、これ程の広大な鉱石を掘り出すのに十数人では明らかな人手不足だったのだ。

 当初はその問題となっている大きさが計りきれないという事もあり、雇われている採掘ギルドとしても、これ以上人手に資金を回して取り分が減ってしまう事を気にしていたのだが、いつまで経っても終わらない事に痺れを切らした採掘ギルド会長は、結果として冒険者ギルドから人手を借りることにしたのだ。


 雇ったのは全7つの冒険者パーティー。その中で最も高い位色だったのは、第四位色《赤色》の冒険者パーティー。

 何故、冒険者の中で最も低い第一位色《黄色》冒険者を6パーティーも雇ったのに、たった1つ《赤色》冒険者パーティーを雇ったのか。

 それは、冒険者の人知を超えたような身体能力に期待してのことだった。何百キロもあるモンスターを放り投げた、とか。目にも止まらぬような速さで森を走り抜けた、とか。そんな神の気が混じったような物をだ。出せる金額のギリギリ。それが《赤色》冒険者パーティー1つと、そのお釣りで雇った《黄色》冒険者の6パーティーだったという訳だった。

 だが、その人知を超えたような身体能力とやらは、結果で言えば採掘に生かされる事はなかった。


 結果としては目的だった人手不足解消は果たされたのだが、まだそれほど広くはない洞窟の中での作業は一度に10人が精一杯だった。それに合わせて、雇ったパーティーも能力より人数を重視した事もあり、一つのパーティーに丁度10人前後だった事から、作業には一度に一つのパーティーでローテションをする事となった。


 そして、ある日。その日の作業当番は、一人の幼い少女の所属する9人の冒険者パーティーだった。

 少女以外の8人の男達はそこそこの体格で力もある。だが、長く伸ばした金髪に碧い瞳の少女にはそんな物はない。普段であっても軽い雑務や補助に使われるような力仕事では使い道の無い労働力だった。当然、そんな作業を少女にやらせても進まない事は明白だった為、結果として男8人での作業となった。それでも一応賃金を貰う上で少女も労働は課せられることとなり、昼間の作業終了後の道具の片付けという雑務を授かった。

 

 そして、平凡以下の作業効率で作業を終えた、その日の夜。

 夕方から片付けを開始していた少女は、完全に日が沈んでも帰ってこなかった。そこで、数人が再び大神殿に足を踏み入れた時だった。


 作業をしていた時には、想像も付かない程に広大な洞窟になっていたのだ――――――




未だに、一章も書き終わってないので更新速度は遅めですが、宜しくお願いします。

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