天空都市建設へ
「アキラさん、ライトガルドに町を作りましょう!」
「はい?!」
ここはイネルバの街のステラ邸のリビング。ステラさんと並んで長椅子ソファに座っている。
レッドドラゴンたちには簡易テントと保存食を渡してライトガルドに残してきた。あそこは下界とは隔離されてるから安全だろう。
「ライトガルドのスライムダンジョンを管理するのに町が欲しいの。」
「それをなんでオレに言うかな?、領主さまか国王様に進言すれば良いのでは?」
「だって、アキラさん。アイ、レイとも結婚するんでしょ?、やっぱり、それなりの屋敷が必要だし、領地もあった方がいいわ。」
「それでライトガルドを開拓しろと?、」
「ええ、レックスくんたちレッドドラゴンたちの協力があれば可能だと思うの、彼らはゴールドちゃんを心酔してるみたいだし、そのご主人さまのアキラさんの言うこともきっと聞いてくれるわ。彼らの居場所もできるし。」
「確かに…でも、モニカさまと約束したダンジョンモンスターの解放もしなくちゃいけないしなぁ…」
「ある程度軌道にのれば、細かいことは補佐官にまかせちゃえばいいのよ。アキラさんにはダンジョン掌握があるんだから、ダンジョン攻略にのりだしてもそう長く家を空けることもないでしょうし。」
「うーん…」
「ねぇ、おねがあい…」
ステラさんが寄りかかってきて、上目使いで見上げてくる。指でクリクリ、オレの胸をつついてくる。
「ああ、もうわかったよぉ。ったく、ステラさんにはかなわないなぁ。」
「ふふ、ありがとうアキラさん、愛してるわ、」
ステラさんが抱きついてくる。
「この小悪魔めぇ、」
そのままオレはステラさんを長椅子ソファに押し倒した。
コンコン
オレは迎賓館のリビングのドアをノックした。
「入れ」
中から男の声がした。
オレとステラさんは、ドアを開けて中に入る。
迎賓館のリビングのソファには金髪をオールバックにし、整った口ひげをした壮年の紳士がいた。
コーカス国王ガルム17世である。
「失礼します。」
オレとステラさんは、国王陛下の正面の長椅子ソファに並んで座った。
「陛下、わざわざご足労いただき、ありがとうございます。」
「よいよい、今日はあまり執務がなかったのでな。それにしてもアキラどのたちは今イネルバにいるはずではなかったのかの?」
「はい。実はオレには特殊なスキルがありまして、それを使ってここに来ました。」
「…ほう。」
陛下が目を細める。
「陛下、スキルのことは内密にしていただきたいのですが…」
「うむ、わかった。転移系のスキルを持つものは狙われやすいからな。」
「ありがとうございます。それで早速ですが、そのスキルを使って陛下をお連れしたいところがございます。」
「ふむ、いいだろう。アイとレイが愛した婿どのを信用しよう。どこへなりと連れて行くが良い。」
オレは立ち上がり、リビングの壁をクリックした。
するとそこには人が数人入れそうな岩の窪みが出現する。
陛下が目を大きくして驚いている。
「さ、陛下、狭苦しいところで恐縮ですが、この中へ入ってください。」
「わかった。」
オレたちはその窪みに入る。そしてそこから出ると、岩がゴロゴロと転がる湖畔の草原だった。
「アキラどの、ここは?」
「ライトガルドです。」
「なに?、あの浮遊島のか?」
「はい。こちらへどうぞ。」
草原をしばらく歩き、ライトガルドの外縁部へと来る。
そこには雲海が広がり、その下には大小様々な島、青い海が見えた。
「おお、なんと美しい。」
陛下が目を見開いて感動している。
「陛下、こちらの者たちをご覧ください。」
「ん?」
そこには赤い服を着て赤い髪をした少年少女たちが片膝をついていた。
「この者たちは?」
「ミッドガルドの戦乱から逃れてきたレッドドラゴンたちです。」
「なに?、」
「レックス、」
「はい。」
先頭にいた少年が光の粒子に包まれ、その姿が大きくなっていった。
光が収まるとそこには30メートルほどの赤いドラゴンがいた。
陛下が目を見開いて驚いている。
「ゴールドどのと同じ人化したドラゴンだったのか…他の者たちもか?、」
「はい。」
オレたちは再び湖畔にいた一際大きな岩の前にいる。
「陛下、あの岩の亀裂…スライムダンジョンです。」
「なに?、あのポーションとマジックポーションをドロップするスライムか?、」
「はい。」
「ふむ、無人だったイネルバ近くの浮遊島に従順なレッドドラゴンの難民、そこにスライムダンジョンか…」
オレたちは迎賓館のリビングに戻って紅茶を飲んでいた。勿論ダージリンだ。
「…町を作って管理したいな。」
陛下がボソリと呟いた。ステラさんと同じ結論に達したようだ。
「はい。」
「やってくれるのかな?、アキラどの、」
「はい。」
「冒険者ギルドも全面的にバックアップします。」
ステラさんが口添えしてくれた。
「しかし、そうなると流石にアキラどのには爵位を持ってもらわねばならんが…良いのかな?、」
「必要なことです。いたしかたありません。」
「わかった。ライトガルドの開拓、アキラどのに一任するので進めてくれ。国としても全面的にバックアップする。」
「ありがとうございます。」
こうしてライトガルドの開拓計画が進みだした。




