ロイヤルエンゲージ
オレは何故か迎賓館のリビングの床に正座をさせられていた。
正面の長椅子ソファの中央にはステラさんが腕を組んで座っている。その両側にアイとレイが寄りかかり、さめざめと泣いている。
「どう言うことなの?、アキラさん。ゴールドちゃんやブルーちゃんにまで婚姻魔石のペンダントあげてるのに、アイとレイがまだなんて・・・この子たち、あたしに泣きついてきたのよ?、」
「あ・・・いや・・・その、なんというか、王族との結婚って、荷が重いというか・・・ほら、偉い人とかと、いろいろ話さなくちゃいけないし・・・」
そう、正直いってやっぱり王族との結婚ってめんどくさそうだから、後回しにしてしまっていた。
「アキラさん!!」
「はい!」
「あたしが最初に誰に渡すつもりか聞いた時に、アイとレイの名前もはっきり出しましたよね?」
「はい!」
「じゃあ、とにかくその気持ちを2人に伝えなさい。さ、アイとレイもアキラさんと向き合って。」
「「はい。」」
アイとレイがオレの正面の床に正座して向き合った。潤んだ瞳で赤くなってやや上目使いで見上げてくる。
あぅ、可愛いじゃないか、王女さまたち。
オレはジャージのポケットに手を入れ、緑色になった婚姻魔石のペンダントを2つ取り出した。そう、実は用意はしていたのだ。
「アイ、レイ、これを受け取ってくれ、オレの嫁さんになって、ずっと一緒にいてくれ。」
「「はい、喜んで!!、アキラさま、かけてください。」」
2人は首を差し出してくる。
オレは2人に婚姻魔石のペンダントをかけた。
2人はオレに抱きついてきた。
「アキラさま、大好きです。」「婚姻魔石、もらえないんじゃないかとずっと不安でした。」
「アイ、レイ、待たせてすまなかったな。」
コンコン
王城の一室のドアをノックした。
「どうぞ」
透き通るような女性の声がそれに応じた。
「「失礼します。お母さま。」」
アイとレイがそう声をかけて入っていく。正装したオレとステラさんは扉の前で待機だ。
しばらくすると、中から声がかかる。
「「アキラさま、ステラお姉さま、お入りになって。」」
「失礼します。」
オレとステラさんは室内に入った。
中は12畳ほどの部屋だった。王城の一室にしては少し寂しい感じがした。
テーブルを中心に応接セットがあり、正面に2つ並ぶ1人掛けのソファの1つににプラチナブロンドの淑女が座っている。その両側の後ろにアイとレイが立っている。
「お初にお目にかかります。黒ランク冒険者のアキラです。」「冒険者ギルドグランドマスターのステラです。」
オレとステラさんは、頭を下げる。
「アイとレイの母、ルイ・コーカスです。はじめまして、アキラさん、ステラさん。」
ルイさんは立ち上がり、頭を下げた。
「ささ、お掛けください。」
オレとステラさんは、ルイさんの正面の長椅子ソファに並んで座った。それを確認してルイさんも座る。
「お2人のことは、アイとレイからよく聞いていますわ。とてもよくしてくださっているようで、ありがとうございます。」
「いえ、こちらこそ、アイ王女とレイ王女にはよくしてもらっています。」
ここで、メイドさんが紅茶を持ってきた。
「ありがとうございます。」
オレは、それを一口飲む。
「・・・」
「・・・」
重い沈黙が流れる・・・うう、緊張してきた。
「ルイさん、アイ王女とレイ王女と結婚させてください。」
オレとステラさんは、深々と頭を下げた。
「世界に26人しかいない黒ランク冒険者に娘を娶ってもらえるなんて光栄ですわ・・・ね、陛下?」
「うむ、そうだな。」
奥にあった扉が開き、国王ガルム17世が入ってきた。
「こっ国王陛下!!」
オレとステラさんはあわてて立ち上がろうとするが、陛下がそれを手で制した。
「よいよい、楽にしてくれ、これからは親子になるのだろう?、」
陛下がルイさんの隣の席に座る。そしてルイさんと共に深々と頭を下げた。
「アキラどの、ステラどの、アイとレイをどうかよろしくたのむ。」
「こちらこそ。これからよろしくお願いします。」
こちらも、頭を下げ返す。
「さて、できればアキラどのには、我が国の貴族になってもらいたいところなのだが・・・」
「それは、ご勘弁ください。かわりといってはなんですが、これをお納めください。」
オレはフタの部分に羽の飾りがついた独特な形の薬ビンを差し出した。
「これは?、ポーションやハイポーションとは違うようだが・・・」
「エリクサーです。」
「なにいぃぃ?!」
ガタ!
陛下は驚いて立ち上がった。
「陛下、落ち着いてくださいな。」
「ああ、すまん。」
陛下は座りなおし、テーブルに置かれたエリクサーをまじまじと見る。
「これが、伝説の霊薬、エリクサーなのか・・・いかなる病も治し、永遠の命を得られるとも言われている。」
「今陛下が言った効果があるかどうかは定かではありませんが、ダンジョンモンスターが外の世界で生きることを可能にはできました。」
「なに?、では、アキラ殿の従魔のあのカイザードラゴンはもしや?」
「はい、彼女は隠しダンジョンの中で5000年以上生きて知性を持ち、孤独と空腹に苦しんでいたのです。それを救ったのが、このエリクサーです。」
「なるほど、計り知れない効果があるのは確かなようだな。これを本当にもらってもよいのか?」
「はい。」
「・・・わかった。これほどの品を献上できるなら、身分云々で文句を言うものはもはやいまい。アキラ殿、アイとレイのこと、あらためて、よろしくたのみましたぞ?、」
「ははっ、必ずや幸せにしてみせます。」




