空から王都へ
いつものダンジョンを攻略するパーティに加えてステラさんを含むオレたちは、イネルバの街の南門から出た先にある草原にいた。
直径500メートルくらいの円が地面を掘り起こすことで描かれている。その中にはDの文字も描かれているのだが、地上からはよく分からない。上空から見ると綺麗に見える。
黒ランク冒険者のカード授与式の帰りに最大限大きくなったゴールドで街に帰還したら、大騒ぎになったのだ。
オレたちは門番のレオンさんにこっぴどく怒られた。その後急遽このヘリポートならぬドラゴンポートが作られ、以後、この街での離発着はここから行うように厳命された。
ゴールドが光に包まれ、巨大化していく、光が収まると丁度このドラゴンポートにピッタリおさまるぐらいの大きさの巨大ドラゴンが出現していた。
黄金色に輝く巨体はフサフサした毛に覆われており、背中には1対の鳥のような翼がある。翼だけ見ると、ドラゴンではなく鳥のモンスターを思わせるが、顔立ちと体つきはドラゴンそのものだ。
今日はステラさんが、王都クリシュナであるコーカス王国冒険者ギルドの年次総会に出席するために旅立つ日だ。オレたちは冒険者ギルドに護衛として指名依頼を受けて同行する。
「それじゃあ、レオンさん、デイジーちゃん。行ってきます。」
門番のレオンさんと、冒険者ギルドの受付嬢であるデイジーちゃんが見送りに来てくれている。その他、ステラさんのファンと思われる冒険者の面々も多数遠巻きに見ている。ビルやガンツたちもいるな・・・
「ああ、気をつけてな。」
「マスターぁ、寂しいです。」
ヒシ!、グリグリ、
あ、またデイジーちゃんが、ステラさんのオッパイに顔を埋めている。この子も本当にステラさんのオッパイが好きだねぇ。・・・まぁ、オレも大好きだが・・・
「ほら、デイジー、いい加減にしなさい。」
「ああん、もうちょっとぉ、」
デイジーちゃんがステラさんに引き剥がされる。
「じゃあ、行ってくるわね。」
ステラさんが、デイジーちゃんと、遠巻きに見ているファンに手を振る。
「ステラさん、失礼しますね。」
「え?、きゃあ!」
オレはステラさんをお姫さまダッコする。
「アキラさん、恥ずかしいわ。」
ステラさんが抗議の言葉を発しているが、オレはかまわずそのまま、ゴールドの背中に飛び乗った。ステラファンからも怨嗟の視線が突き刺さるが知らん、ステラさんはオレの女だもんね。
一般人のステータスしかないステラさんじゃ、乗るのに苦労しそうだったからな、これは必要なことだったんだ。役得だったけどな。
ゴールドの背中でステラさんを降ろし、前傾姿勢でゴールドの背中に掴まる。
「ほら、ステラさん。オレの背中にしっかり掴まって。」
「はい。」
ステラさんは、素直にオレの背中にしがみついてくる。ムフ、オッパイが背中に・・・この感触・・・たまりませんな。
背中の感触を楽しんでいると、アリエスがオレの前に入り込んで来た。
「ご主人さまも、私の体にしっかり掴まって。」
「ああ。」
オレはアリエスのお腹に手を回して、しっかり掴まった。
他の面々も前後に乗って、ゴールドの背中にしがみついた。
『では、ゆくぞ?』
ゴールドはゆっくり羽ばたいてフワリと浮き上がり、グングン上昇していった。
初めてゴールドに乗るステラさんは、大興奮だ。
「見て、アキラさん。あたしたちの家が見えるわ。あっちに見えるのはリタンブール?、こうして見るとわりと近いのね。あ、王都もかすかに見える?」
ゴールドはイネルバの街の上空を一度旋回した後、王都クリシュナに向けて飛行する。
30分もすると、王都上空に到達した。
馬車で行った時は2日かかったんだよな。馬車での移動が休憩とかの時間を抜いて正味1日6時間くらいで、時速20キロで走行してたとして、2日で・・・240キロくらいの距離か?
それを30分とすると・・・時速480キロ?、まぁ、馬車での移動だと、完全に直線で行く訳にもいかないから、実際の飛行距離はもっと短いと思うけど、流石ドラゴンだなぁ。
「もう、着いちゃったんだ。なんか、旅したって実感がわかないわね。」
ステラさんも呆れている。
王都の上空も一度旋回する。
城壁の櫓から兵が手を振っていたので、こちらも振りかえす。
西門前の平原に着陸体勢に入る。こちらにも大きな円が土を抉ることで描かれており、その中にDの文字があった。オレたち用に急遽作られたドラゴンポートだ。
ゴールドはそこにゆっくり着陸した。
オレは再びステラさんをお姫さまダッコして飛び降りる。
他の面々も降りてきて、ゴールドが光に包まれ、やがて幼女の姿になる。首にはオレが渡した婚姻魔石のペンダントと従魔タグがかかっている。あれって、ドラゴン化している時はどうなっているんだ?何処かの不思議空間に収納されているのだろうか?
「あの・・・アキラさん。もう降ろしてくれませんか?」
真っ赤になったステラさんが遠慮がちに言ってきた。
「・・・はい。」
オレはしぶしぶステラさんを降ろす。
「ようこそ、王都クリシュナへ。また会えましたな。アキラ殿。」
「こんにちは、ローレルさん。またお世話になります。」
王都守護隊隊長のローレルさんが出迎えてくれた。
「ローレルさん。お久しぶりです。お世話になります。」
「これはステラさん、お久しぶりです。イネルバ冒険者ギルドのマスターになったそうですな、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「ささ、迎賓館までの交通規制は済んでおりますぞ、馬車へどうぞ。我々が先導します。」
見ると、ギルドの箱馬車がドラゴンポートの横に止まっている。この前、来た時にここに置いたままになっていたやつだ。帰りはゴールドに乗って帰ったからな。御者のサムソンさんだっけか?、彼には悪いことをしたかもしれない。
皆で馬車に乗って走り出すと大きな歓声が湧き起こった。その中を軽く手を振りながら走り抜けて行く。ゴールドとブルーはこの雰囲気が楽しいのか、身を乗り出して観衆に手を振っている。
やがて迎賓館に着くと、ローレルさんたちは手を振って、離れていった。
迎賓館の扉をくぐり、中に入る。
「「いらっしゃいませ。お姉さま!!」」
アイとレイがステラさんに抱きついて挨拶していた。
うん、日常の風景だな。




