はじめての夜
アリエスとオレはリビングのソファーで向かい合っていた。
「アリエス、オレは異世界からきたみたいなんだ。この部屋もね。」
「はい、そんな感じがします。この部屋には見たことがないものがたくさんあります。」
「うん、そして多分、この世界の人にはないスキルも多くもってると思う。これらのことは誰にもしゃべっちゃいけないよ。命令だ。」
「はい、わかりました。絶対だれにも喋りません。」
「よし、じゃあ、この世界とアリエスのことを教えてくれ。オレは無知な異世界人だからね。」
「はい、えと、私の知る限りのことでよろしければ、お話します。この世界には二つの大陸があります。ガナン大陸とモルジア大陸です。そして二つの大陸には多くの国があります。私たちがいるのはモルジア大陸の中のコーカス王国です。ここはその南の端にあるイネルバの街ですね。イネルバの街は北、東、西にダンジョンがあり、そこから取れる素材で経済が成り立っています。」
「なるほど、そのダンジョンに主に潜るのが冒険者だよね?、冒険者には魔法を使うものもいる?」
「はい、ファイヤーボールやアイスボールなどの魔法を使う冒険者は少数ですがいます。強力な遠距離攻撃の使い手として重宝されています。」
「剣や槍をつかうスキルなんかもある?」
「はい、私は剣のスラッシュと槍のスタブが使えます。」
「ダンジョン掌握ってスキルを聞いたことある?」
「いいえ、ありません。もしかしてご主人さまの秘密のスキルでしょうか?」
「ああ、そうだね。やっぱりオレだけのスキルみたいだ。いいかい、秘密だからね?」
「はい、勿論です。」
「それでスキルはどうやって発動する?」
「武器を構えて叫べば発動します。」
音声認識?、もしかしてオレもウィンドウを使わなくても叫ぶだけでスキルが使えるかな?、
「ウィンドウは使わない?、空中に浮かぶ窓みたいなの。」
「はい?、声に出すだけですよ。ウィンドウはよく分かりません。」
やはり、他の人はウィンドウは使ってないんだ。
オレはメニューウィンドウをドラッグしてアリエスとオレの真ん中にもってきた。
「これは見える?」
「?、ご主人さまの指・・・ですよね?」
やっぱり見えてないな・・・でも、この世界にはオレ以外にも異世界から来た迷い人がいるようだし、その人たちはどうなんだろう?
考え込んでいるオレを輝く瞳でアリエスは見ていた。
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アリエスが仲間になりたそうにこちらを見ています。
仲間にしますか?
[YES/NO]
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ウィンドウが出た。
こんなベタな・・・だが勿論YESをクリックだ。
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アリエスが仲間になりました。
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アリエスのステータスウィンドウが出た。
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名前:アリエス
種族:銀狼族
性別:女
年齢:15
レベル:25
HP:250/250
MP:100/100
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オレよりレベル低いんだ。オークダンジョンに入ってたって聞いたからてっきりオレよりレベルが上だと思ってたけど。
「ところで、アリエスの家族は?」
「モンスターにやられて二人とも死にました。父も母も冒険者だったんです。兄弟はいません。」
「そうか、辛いことを思い出させちゃったね、ごめんね。」
「いいえ、お心遣い感謝します。」
「あと、アリエスも冒険者だったんだよね?」
「はい、今も冒険者ですよ。奴隷になったとはいえ。犯罪を犯した訳じゃないですから。これが冒険者カードです。」
アリエスは銅色のカードを見せてきた。
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アリエス
所属:冒険者ギルド
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「そか、じゃあ一緒にダンジョンに潜るのに問題はないね。」
「はい、足を引っ張らないように頑張ります。よろしくお願いします。」
「あ、オレはアリエスより下の青銅だからね。今日登録したばっかりの。」
「え・・・そうなんですか?、でも、ご主人様はいろんなスキルをもってるようですし、きっと私よりも強いですね。」
「それはどうかな?、よし、話はこれくらいにして晩ごはん食べにいこうか?」
「はい。」
玄関でアリエスにはオレが使っているつっかけを履かせた。アリエス用に靴と服を買わなくちゃいけないけど。冒険者ギルドで魔石を換金してからだな。あ、ポーションとかも売れるかな?、これからも手に入る目処がたったから、売ってもいいよね?
玄関扉をクリックしてイネルバの路地裏に出た。後ろについてきたアリエスが目をまん丸に見開いて驚いている。
「すごいです。なにが起きているか良くわかりませんが、とにかくすごいですご主人様。」
アリエスのお尻には尻尾がある。それがブンブンふられていて最大限に興奮しているのが伝わる。
「秘密だからね、アリエス」
オレは口に人差し指をあてて、シーってしぐさをする。
「はい、勿論です。」
アリエスは手を額にあてて敬礼した。尻尾はあいかわらずブンブンふられていた。
「アリエスちゃん!、」
ごはん処さつき軒に入るとウェイトレスのイヌ耳少女がアリエスに抱きついてきた。
「ダンジョンで大怪我したって聞いて心配してたのよ。その後全然姿見ないし。噂では奴隷になったって話も聞いたけど。」
「心配かけてごめんね、ミリアちゃん。ダンジョンで大怪我して奴隷になったのは本当よ。でも、このご主人様に買っていただいて、怪我も綺麗になおしてもらえたの。」
イヌ耳少女はそこではじめてオレに気付いたようで、声をかけてきた。
「昼間もきてくださったお客さんですね。私、アリエスちゃんと同じ村出身のミリアといいます。この度はアリエスちゃんを助けていただきありがとうございます。そして、これからアリエスちゃんをよろしくお願いします。」
イヌ耳少女あらため、ミリアちゃんは深々と頭を下げた。
リックさんといい、ミリアちゃんといい、まったく、アリエスは愛されてるな・・・
「もちろんだ。もうアリエスはオレの大切なパートナーだからな。」
「大切なパートナー・・・」
アリエスが顔を真っ赤にしてなにかつぶやいていた。
「よし、じゃあ飯を食べよう。アリエスもたっぷり食べるんだぞ。」
「はい。」
二人で鯖味噌定食を食べた。アリエスも器用に箸を使いこなし、ごはんを何杯もおかわりしていた。おかわり自由はやっぱりいいね。鯖味噌定食二人分で銅貨1枚だった。
家に帰る前に冒険者ギルドに寄って魔石とかを換金しようと思ったんだけど。夕方の冒険者ギルドは人でごったがえしているのが遠目にも分かり、断念した。あんな中に入っていくなんて無理ゲーだ。絶対、バカにからまれる。
「じゃあ、お風呂に入ろうか?、背中を流してくれアリエス。」
「・・・はい。」
二人で湯船につかった。オレの上にアリエスが乗っかっている。やっぱりちょっと煤けている感じがするな。しっかり磨かねば。
アリエスに背中を流してもらった後、オレもアリエスの体を隅々まで洗った。最初は恥ずかしがっていたが、最後は気持ちよさそうに身を委ねてくれた。
バスタオルでよく拭いて、髪をドライヤーで乾かした少女は輝く宝石のようだった。
アリエスをお姫様抱っこして寝室に運んでベットに寝かせる。
その後オレは本能に身を委ね、アリエスと結ばれた。