ドラゴン無双
柔らかいなにかが体に巻きついてきた。
なんだこれ?、スベスベで気持ちいい。
オレはその抜群の肌触りに魅了され、頬ずりし、体をスリスリした。
「キュウウウウ!」
パチ
目を開けるとデッカイイルカみたいなのをオレは抱きしめていた。
いや、イルカにしては胴体が長く、それがオレの下半身に巻きついている。
スリスリ
それが蠢きオレに無上の快感をもたらす。
なんだコレ、気持ちいい。オレもスリスリしかえす。
ああ、気持ちいい・・・気がつけば無心にスリスリしていた。
「キュキュキュウウウ!」
それは光に包まれ、小さくなった。
光が収まるとそこには幼児体形のブルーがいた。
ブルーは口から涎をたらし、ビクビクしている。目も虚ろだ。
そうか、今のはブルーのリヴァイアサアン形態だったのか・・・
オレはまだ呆然としているブルーをだっこしてダイニングに行った。
「おはようございます。アキラさん。ブルーちゃんもおはよう。」
「おはようございます。ステラさん。」
呆然としているブルーをステラさんに手渡す。
「あら?、朝からアキラさんに可愛がってもらったのかしら?、」
「あい、ごしゅじんたまが、いっぱいすりすりしてくれたんでしゅ。気持ちよかったでしゅ。」
「そう、よかったわね。」
ステラさんもブルーに頬ずりした。
本当にスリスリしただけですからね?、勘違いしてませんよね?、
「おはようございます、ご主人様。」「おはようなのじゃ、ご主人様。」
「おはよう。アリエス、ゴールド。」
アリエスとゴールドが抱きついてきた。なにか盛んに体を擦り付けてくる。マーキング?
テーブルにはご飯に味噌汁、焼き魚に厚焼き玉子があった。
「今日の朝ごはんはあたいとシルフィでつくったんだよ。」
「そか、ありがとな。」
オレはトレイシーとシルフィの頭を抱き寄せ、なでなでした。
「「はふぅ。」」
2人は目を細めて気持ち良さそうにした。
トロールダンジョンのボス部屋の前には栗色の髪をした中年冒険者が立っていた。
「こんにちは、ここでギルドカードのチェックですか?」
「こんにちは、ああ、といってもまだ1人も入ってないんだが・・・あ、もしかして君が我が国初の黒ランク冒険者のアキラさんかい?、」
「はい、よろしくお願いします。」
オレは冒険者カードを提示した。他の皆も冒険者カードか従魔タグを提示する。
「・・・はい、OKです。私はデミゴス、冒険者ギルド受付のデイジーの父親なんだ。」
「ほう、デイジーさんの?、娘さんにはいつもお世話になってます。」
「いやいや、こちらこそ。実は私は昔大怪我をして冒険者を引退していたんだ。しかし、君が融通してくれたハイポーションを受け取って回復し、冒険者に復帰できたんだ。ありがとう。」
「そうですか、オレが買取りに出したハイポーションが実際に役に立ってる話を聞くと嬉しいですね。」
「ああ、誇っていいと思うよ。これからもがんばってくれ。」
「はい・・・では、早速、ボス部屋のトロールを片付けちゃいますね。」
オレはブルーを肩にのせて叫んだ。
「ブリザード!」
ミニマップでボス部屋の中の赤い光点の群れの中心をクリックする。
ゴオォオオオオ!
ボス部屋の中を極寒の嵐が吹き荒れた。
「え?、ここからボス部屋の中にブリザードを使ったのかい?、・・・そんなことが可能なんだ。流石、黒ランク・・・、」
「では、失礼します。」「失礼しましゅ。」
オレは呆然とするデミゴスさんに、ブルーを肩に乗せたままペコリと一礼し、トロールダンジョンのボス部屋に入った。
ボス部屋に入るとトロールの素材と魔石が散乱していた。すでにトロールは砕け散った後らしい。それらを回収して奥を見るも宝箱はなかった。今回はハズレか。
掌握ウィンドウが出ないのは、奥にドラゴンダンジョンへ続く入口がポッカリと開いているからだな。
「ご主人様、なんだか力が湧き出てくるようなのじゃ。」
ドラゴンダンジョンに入るなり、ゴールドが言った。なにかからだが薄っすら光っている気がする。
「ここがもともとゴールドがいたダンジョンだからかな?、変身はできそうか?」
「ああ、できそうじゃ、していいか?」
「ちょっと待ってくれ、皆、ゴールドから十分離れるんだ。」
オレたちは、ゴールドから300メートルほど離れる。
「よし、いいぞ、ゴールド。」
ゴールドは光につつまれた。そしてどんどんその光が大きくなる。
光が収まった時、巨大な金色に輝くドラゴンが出現していた。シッポの先は300メートル離れたはずのオレたちの横を通過している。
相変わらず美しいドラゴンだ。金色のフサフサの毛につつまれている。
オレは思わずその体にスリスリした。モフモフたまりません。
『あん、ご主人様、そのようなことは家に帰ってからいくらでもやらせてやるから・・・皆、我の背中に乗るのじゃ、足元を歩かれると、踏んでしまいそうじゃならな。』
「わかったよ、ほら、ご主人様行くよ。」
オレはトレイシーに首根っこを掴まれて一緒にゴールドの背中の中心あたりに乗った。
『では、いくぞ。』
ズシン、ズシン、
ゴールドがゆっくりとした足取りで歩き出す。しかしスケールが大きいせいか、かなりのスピードが実際は出ているようだ。
ミニマップに赤い光点が3つ表れた。
「敵だ。シルフィ、念のためバリア展開。」
「はい、ウィンドバリア!」
風の障壁がゴールドごとオレたちを覆った。300メートルを越す巨体を覆うとは・・・
「おお?、ゴールドに乗っていることでシルフィの魔力が上がっているのか?」
『そうじゃ、今は我も本来の姿になっておるしな。人間形態の時よりも補助効果は高い。む、ご主人様、くるぞ!、我が倒していいんじゃな?』
「おう、たのんだぞ。ゴールド。」
「「「ゴガアアアア!」」」
ドドドドドドド!
ゴールドより少し小さいくらいのアースドラゴン3匹がこちらに気付き、雄叫びを上げて突っ込んでくる。
パカ
ゴールドは口を大きく開けた。
ヒュウウウウウ
そして息を大きく吸い込む、と同時に口の中に光が溢れだす。
ガカカカカ、ビユウウウ!!!!
口の中にたまった光が奔流となって、前に流れだし、超極太のレーザービームとなって吐き出された。
ビームはアースドラゴンたちの上半身を横に薙いでいった。
ビームが通り過ぎた後、アースドラゴンたちの上半身は綺麗になくなっていた。
残った下半分もスグに光の粒子となって消えていった。後には魔石とドラゴンの肉が残っていた。
『どうじゃ、我が光のブレスの威力は?』
「ああ、すさまじいな。ゴールドが味方でよかったよ。」
『そうじゃろそうじゃろ。今夜は我を目いっぱい可愛がるのじゃぞ?』
その後もゴールドの快進撃は続き、奥の広間に到達するまでにアースドラゴン12匹を倒していた。
オレたちは、魔石とドラゴンの肉を回収するだけで良かった。
奥の広間にはゴールドと同じように金色に輝くドラゴンがいた。
ただし、大きさはゴールドの半分くらいで、毛ではなく硬質なウロコに覆われていた。
翼もコウモリのようだ。
「あれがゴールドドラゴンか、」
『遠い昔、我もあれと同じ姿をしていたような気がする。』
「シルフィ、広間に入る前にバリアとシールドの展開だ。」
「はい、ウィンドバリア、ウィンドシールド・・・」
風の障壁がゴールドを2重に覆った。その中にいるオレたちは自身のシールドをあわせて3重の障壁に覆われていることになる。
「ガアアア!」
広間に入るとゴールドドラゴンが雄叫びを上げ、大きく口をあけた。あれはゴールドと同じ光のブレスか?
ガカァ!
それなりの太さのビームがゴールドに直撃したかに見えたがウィンドバリアに弾き返された。
ガカカカカ、ビユウウウ!!!!
ゴールドの極太レーザーがゴールドドラゴンを襲った。
バッ!
ゴールドドラゴンは背中の翼を使って飛び上がり、これを避けた。
『おのれ、ちょこまかと・・・』
オレはアイスアローのウィンドウを展開し、ゴールドドラゴンに放った。
ドン!
ゴールドドラゴンはこれをかわしたかに見えたが微かに翼にかすり、片翼が凍りつき、落下した。
ドドン!
「ゴールドいまだ!」
『おう!』
ガカカカカ、ビユウウウ!!!!
ゴールドの極太レーザーがゴールドドラゴンを襲い、あっと言う間に蒸発した。
後には金色に輝く直径2メートルほどの魔石だけがあった。
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ドラゴンダンジョン広間を掌握しました。
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アイテムウィンドウに入れるとゴールドドラゴンの魔石とでた。
広間の奥に黄金色の宝箱が出た。
おお、またオリハルコンの装備きたか?
宝箱を傘で開けて、バックステップする。
ヒュッ!、パシ!
オレは目の前を通過しそうだった矢を掴み取る。黄金の矢だ。
宝箱の中には金色に輝く大剣が入っていた。
一応、アイテムウィンドウに入れて確認すると[オリハルコンの大剣]とでた。
再びアイテムウィンドウから出して掲げる。
「これはトレイシーが使え。」
「はは!」
トレイシーはオリハルコンの大剣を両手で受け取った。
代わりにオレはトレイシーから鋼の大剣を受け取って、アイテムウィンドウに入れた。
さ、今日のところはこれで帰るか。




