リング
「お待たせしました。オーク魔石小が9、中が11、黒オークロースが6、オークバラ肉が3、オークモモ肉が4、オークタンが2、オークの短剣が4で、金貨17枚、銀貨5枚になります。確認してください。あと、トレイシーちゃんのPT登録もしておいたわ。」
「・・確かに、ありがとうございます。」
冒険者ギルドにいつもの時間にオレたちは来ていた。ステラさんから買取り金を受け取る。
受付横には買取り価格表が出ていてオレはいつもそれと照らし合わせて合計金額を計算して確かめていた。例えば黒オークロースは1つ銀貨5枚で6つだと金貨3枚になる。
因みにポーション、マジックポーションは共に銀貨1枚、ハイポーションも一応書かれていて白金貨1枚となっている。白金貨1枚って金貨1000枚と同じだったかな?日本円に換算すると約1億円だよ、さすが欠損すら直す伝説の品だね。ステラさんによるとここのギルドではこの間オレが買取りに出したものしか実績がない。その時のギルド内では、伝説が現実になったって大騒ぎだったそうだ。実は価格表のハイポーションの買取り価格はその後に急遽書き足されたものだ。伝説の品だったから、買取り価格は設定されてなかったんだよね。まぁ、あの時はステラさんのギルドマスター就任のご祝儀のような感じで出したので、ステラさんの言い値でオレは納得した。そしてそれが唯一の実績となり、価格表に載ることになったわけだ。
「アキラさん、オークの短剣を出して来たってことはシルバーオークを倒したのね?」
「はい。」
「そう、じゃあ、ボス部屋の直前まで来ているのね。オークダンジョンのボス、キングオークに挑むのなら、もう一度装備を見直して万全にしておきなさい。油断は禁物よ。」
「わかりました。」
冒険者ギルドを出て、武器屋に向かう。現在の装備は全員が防具に皮鎧、武器はオレが鋼の傘、アリエスが鋼の長剣、シルフィが鋼の槍、トレイシーが鋼の大剣だ。トレイシーのは元々彼女が持っていた装備だ。
武器は鋼シリーズが揃ったところだし、このままでいいかな。鎧も皮鎧が動きやすくて良いと思うんだよね。金属製の鎧はどうも、動きが阻害されそうで、好きになれない。
などと、考えていると[武器・防具の店 ブライアン]についた。
扉をあけて、店内に入る。
「いらっしゃい。」
「おっちゃん、こんにちは。」
いつもの普通のおっちゃんが出てきた。このおっちゃんが看板に書いてあるブライアンさんらしい。
「今日はどうしたい?、あんちゃん。」
「とりあえず、ここで買った鉄の長剣と鉄の槍を買い取ってくれ。ダンジョンで鋼のがでたんでもう使わないんだ。」
「あいよ、・・・それほど傷んじゃいないな。両方で金貨1枚でいいか?」
「ああ、それでいい。それと、今の鋼の武器と皮鎧をそのままに、強化を図れないかと思うんだけど、なにかないかな?、」
「それなら強化リングなんてどうだい?、中級以上の冒険者の多くがつけているぞ。」
おっちゃんがカウンターのガラスケースの下を示しながら言った。
ほうほう、指につけるだけで、強化が図れる優れものか、魔力が強くなる魔力リングに、素早くなる隼リング、力が強くなる剛力リング、防御が強くなる鉄壁リングか・・価格は一律で一つ金貨5枚か、正直高いか安いか良く分かんないな・・・
おっちゃんに魔力リングをケースから出してもらった。それを自分の左手の中指に嵌めてみる。
若干ぶかぶかだった指輪は嵌めるとシュッと縮まり、ピッタリとなった。そして内側から溢れるような力を感じた。おぉ、これは、なんかいつもの倍の威力の魔法が撃てそうな気がする。うん、具体的な数値の裏づけはないけど、これは買いだな。
「おっちゃん、じゃ、これとあわせて魔力リングを2つと、隼リング1つ、鉄壁リングを1つくれ。」
「あいよ、じゃあ、全部で金貨20枚だな。」
強烈な視線を感じて横を見るとアリエスたちが凄いキラキラした目でオレを見ている。あ、これもしかして、オレが女の子たちに指輪を送るって重大イベントに発展してる?・・・まてよ、これ、ステラさんのも買わないとまずいんじゃ・・・
「あ、おっちゃん、鉄壁リングもう1つ追加だ。」
「あいよ、じゃあ、金貨25枚だな。」
まとめて買うから、値切ろうかな・・と思っていたが、女性への贈り物の意味合いが強くなると、それは野暮だなと思いなおし、そのまま払った。
その日の晩、ステラ邸のリビングにオレとステラさん、アリエス、シルフィ、トレイシーはいた。
オレはいつもの黒ジャージ、ステラさんたちは、白いスリップを着ている。トレイシーの分も昼間にメイド服屋で黒のとセットで買ってきた。勿論メイド服の方も採寸してオーダー済みだ。
オレが長椅子ソファに座り、皆は立っている。
「それじゃあ、ステラさん、隣に座って」
ステラさんは、オレの隣に座って、左手薬指を差し出してくる。そこにおれは緑色の魔石がついた指輪、鉄壁リングを嵌めた。嵌めた途端、指輪はピッタリになる。
オレはステラさんにキスをしてハグをする。
「ありがとう、アキラさん、じゃあ、寝室で待ってるわね。」
ステラさんは、指輪を愛おしそうに見ながら、寝室に消えていった。
「じゃあ、次はアリエスだ。」
アリエスがオレの隣にちょこんと座る。真っ赤になって、もじもじしてめちゃくちゃ可愛い。左手薬指をおずおずと差し出してくる。そこにオレは青い魔石の指輪、隼リングを嵌める。
アリエスは飛びついてきて、キスをしてきた。
「ありがとう、ご主人様、大切にする。」
テテテテテ
アリエスは寝室へ小走りに消えていった。
「シルフィ、来て、」
「はい、」
シルフィが隣にすわって、左手薬指を差し出してきた。そこに赤い魔石のついた魔力リングをはめる。
「ご主人さまと同じリング、嬉しいです。」
シルフィにキスをして、ハグをした。オッパイがムニュって音がしたかと思うくらい押し付けられた。
シルフィも寝室に消えていった。
「お待たせ、トレイシー、座って、」
トレイシーが隣に座り、左手薬指を差し出してきた。そこにステラさんと同じ緑色の魔石のついた鉄壁リングをはめた。
「ありがとう、ご主人様。」
ハグをしてキスをした。トレイシーのキスは最後まで待たせただけに少々情熱的だった。
トレイシーと手を繋いで皆の待つ寝室へとオレたちは入っていった。
さぁ、夜はまだまだこれからだぜ。




