冒険者ギルド
冒険者ギルドは四階建ての大きな石造りの建物だった。剣と斧が交差するエンブレムがあり、[冒険者ギルド]と日本語で看板が出ていた。
日本語が文字としても使われていたのはありがたいが、なんとなく雰囲気台無しだよ……と思ってしまった。
入り口は木製の大きな両開きのドアとなっており、現在は営業時間なためか開放されている。そのドアをくぐって中に入った。
中は学校の教室一つ分くらいの広さとなっており、手前の壁側に各種依頼を張り出すためのものらしい掲示板があり、奥側にカウンターがある。カウンターの右側奥は二階へ続く階段がある。
カウンターには受付が二つあり、それぞれに受付嬢が座っていた。
受付の一つに近づき、声をかけた。
「こんにちは」
「こんにちは、ようこそ冒険者ギルドへ、新規の登録ですか?」
金髪碧眼にメガネをかけた清楚そうな美女に輝く笑顔でそう言われた。……あかん、惚れてまいそうや。名札を見ると[ステラ]と書かれている。ステラさんね、覚えたぞぉ。
「はい、新規登録をお願いします。」
「それでは、こちらの用紙に記入をお願いします。それと登録料銀貨一枚いただくことになりますが、大丈夫ですか?」
「あ、そうだ。先に魔石の買取りをおねがいします。いいですか?」
「はい、では、このトレイにのせてください。」
さて、どのくらい魔石を出そう。さすがに手持ち全部はまずい気がする。200くらいでいいかな?
オレはリュックから取り出すふりをしてアイテムウィンドウをドラッグしてリュックの開け口にあわせ、そこからスライムの魔石、赤と青をそれぞれ100ずつ出した。
ウィンドウって、他人に見えないのかな? 見えてるとまずい気がするけど、メニューのはずっと出っ放しだし……見えてないことを祈る。
トレイにてんこ盛りになった魔石を見てステラさんは若干驚いていたが、すぐに冷静になり、奥にトレイを持っていき、3分ほどで帰ってきた。
「青スライムは一つ銅貨2枚、赤スライムは一つ銅貨3枚ですので、それぞれ100で合計金貨5枚となります。お確かめください。」
「はい、確かに。」
宝箱から出てきたのと同じ金貨がでてきた。これであの金貨も使えることが確認できたな。これで手持ちは合計金貨15枚。それにしてもあれだけあって、金貨5枚かぁ・・・これなら全部だしても良かったなぁ、次きたら残り全部だそう。
「では、新規登録のほうをお願いします。この用紙に記入すれば良いんですね。」
「はい、※印のところは必須ですので必ず書いてください。それ以外は空白でもかまいません。」
なになに、※名前、種族、※性別、※年齢、得意分野、住所、か……
「住所のところは空白でもいいんですね? 正直、私もいまさっきこの街に来たばかりで書ける住所がないので、ありがたいのですが……」
「ええ、冒険者の方は住所不定の方が多いですから。ただ、活動拠点を移す場合は言ってくださいね……黙って居なくなっちゃいやですよ。」
ステラさんは少しうつむきがちに赤くなって見上げる感じでそう言ってきた。ってなにその思わせぶりな表情、オレに惚れてるんかぁ?……あかん、これは完全にステラさんの術中にはまっている気がする。胸がどきどきする。
「はい、分かりました。移動するときは必ずステラさんに言います。」
敬礼してステラさんにそう言うと登録用紙に書けることを書いた。
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名前:アキラ・クラタ
種族:人間
性別:男
年齢:25
得意分野:魔法
住所:
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「これでお願いします。」
オレは登録用紙と金貨一枚を差し出した。
「はい、では、少々お待ちください。」
ステラさんはまた奥に行くと3分ほどで帰ってきた。手には青銅色のカードと拳大の水晶がある。門の詰所で見たのと似てるが、それにはカードを差し込むスロットのような穴が開いていた。
「お待たせしました。さきにお釣りの銀貨9枚をお渡ししますね。」
「はい。」
これまでの流れから、ここのお金は金貨1枚が銀貨10枚と同じで、銀貨1枚が銅貨10枚と同じってことが分かったな。
「では、この水晶に手を触れてください。」
ステラさんは水晶のスロットにカードを入れてオレに差し出してきた。
言われた通りに水晶に触れると、ピカッと光った。
ステラさんは、水晶からカードを取り出すとじっくり見た後、手渡してきた。
「はい、これがアキラさんの冒険者カードです。どうぞ。」
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アキラ・クラタ
所属:冒険者ギルド
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青銅色のカードにこの二行だけが書かれていた。
「名前しか書いてないんですね。」
「はい、個人情報の開示は表面上名前だけにしています。ただ、目に見えないだけで、このカードには先ほどアキラさんが書いた情報の他に魔力パターンも水晶で記録しました。各ギルドでは詳細がわかるようになっています。」
「そうなんですか?」
「はい、では、簡単に冒険者ギルドについて説明しますね。冒険者はこのカードの色によってランク分けされています。上から、黒、白金、金、銀、銅、青銅、ですね。クエストの受注や、素材の買取り実績の積み重ねによってこのランクは上がっていきます。先ほどの魔石の買取りも後付けで記録してありますから安心してくださいね。ランクが上がると買取り価格が割り増しになる他、入れるダンジョンも増えますから、頑張ってくださいね。」
「ランクによって入れる、ダンジョンが変わるんですか?」
ダンジョンってこの世界にそんなにいっぱいあるのか?
「はい、ダンジョンの難易度によって、冒険者が入れるものは区別されています。」
「この街の近くにはどんなダンジョンがあるんですか?」
「東に青銅ランクでも入れる[コブリンダンジョン]、西に銅ランク以上が入れる[オークダンジョン]、北に銀ランク以上が入れる[トロールダンジョン]があります。」
オレが攻略して出てきた南の[スライムダンジョン]は発見されてなかったのか、まぁ、出口塞がってたもんなぁ。
「わかりました。丁寧な説明ありがとうございました。」
「はい、分からないことがありましたら、何でも聞いてくださいね。」
「はい、では、今回はこれで失礼します。」
冒険者ギルドをでると、南門に向かった。忘れない内に仮入場証を門番さんに返しておかないとな。
南門に到着すると、あの門番さんはまだいてくれた。
「さっきのやつか、身分証は手にはいったか?」
「はい、これです。それと仮入場証をお返しします。」
「うむ、確かに。……アキラか、じゃあ改めてこれからよろしくな、オレは見てのとおりこの街の門番のレオンだ。」
「はい、レオンさん、これからよろしくお願いします。」
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