ある赤髪の冒険者
あたいはトレイシー、イネルバの街を拠点とする銅ランクの冒険者。
その日もオークダンジョンに潜って順調に狩りをしていた。
しかし、敵をあなどったばかりに窮地にたたされた。あたいは普段3匹までの群れをソロで迅速に倒して安全マージンを保っていたのに、調子に乗って4匹の群れに手を出してしまったのだ。
自慢のバスターソードで2匹目の首を落としたとき、奥から新たに4匹のオークが現れた。
「くっ、ここは一旦退くか。」
踵を返して、逃げ出したあたいをオークたちは追ってきた。しかし、前方にまたオークが3匹現れた。あわてて横道に入るも、その先でまたオークが2匹。とび蹴りをくらわせて、横をなんとかすり抜けて走るもまた分岐路手前にオークが4匹、もう、かんべんしてぇ。
逃げた先に次々とオークが現れ、もう何匹のオークに追われているのか訳が分からなくなった。
「たすけてぇ!」
藁にもすがる思いで助けを求めて逃走していると通路の先に三人の人影が現れた。
あたいはその先頭にいたリーダーらしき人物にすがりついた。
「たすけてください。お願いします。」
「下がっていろ。」
あたいをさがらせたその人はオーケストラの指揮者のように指を虚空で躍らせた。
すると、氷の矢が4本続けざまに放たれ、オークの群れの先頭に突き刺さった。
「「「「プギャアア」」」」
またたく間に先頭のオークたちが凍りついた。なにあれ?、技名を叫んでいなかったわよね?、あんなことができるんだ。
「ブリザードの範囲外まで後退だ。」
あたいたちは先頭が凍りついたことで止まったオークの群れから走って距離をとった。
「ブリザード!」
ゴォオオオ!
極寒の嵐が吹き荒れた。
その後に残されたのは凍りついたオークの群れだった。
ブリザード?、アイスボールの上位スキル?、これだけのオークを一度に凍らせることができるなんて、この人、すごい・・・
「よし、手分けしてトドメをさすぞ。お前も手伝え。」
「は、はい。」
その後、あたいはその人のパーティメンバーと思われる女性たちとオークにトドメを刺していった。
この子たち、背中から続く首筋に奴隷紋らしきものがチラリと見える。あの人の奴隷?、でもなにか生き生きしている。大事にされてるのかな?
あの人は次々とドロップアイテムをリュックに入れていっている。この量がどんどん入ってあのリュックは全然ふくれる様子もない。魔法の鞄かな?
しばらくして、やっとトドメを刺し終わり、ドロップ品の回収も終わった。
「・・・・あのぅ」
あの人にちゃんとお礼を言わなきゃ。
「助けていただき、ありがとうございました。」
「ああ、いいっていいって、美味しい狩りができたし、気にしないで。あ、そうだトドメをさすのも手伝わせたし、これは、駄賃だよ。」
そう言ってその人はオークの魔石四つと、オーク細切れ肉四つを渡してきた。
「ええ、そんな、ご迷惑をかけたのに受け取る訳には・・・」
「あなたも、危険を冒してここまで来てるんだから、必要でしょう?、とっときなよ。」
「あ・・はい、ありがとうございます。あの、あたい、トレイシーって言います。あなたのお名前をお聞かせ願えませんか?」
「オレはアキラだよ。よろしくね、トレイシーちゃん。じゃあ、オレたちはこの先に行くから、気をつけてね。」
「アキラさんですね、ありがとうございました。」
アキラさん。なんて強くて優しくて、かっこいいんだろう。あたいもこの人の仲間になりたい。
だけど、もしかして奴隷にならないと仲間になれないのかな?、秘密も多そうだもんね。
・・・・アキラさんの奴隷の彼女たち、幸せそうに見える。この人の奴隷にならなってもいいかも・・・




