盗賊
オークダンジョンでの待ち伏せ戦法にもあきたので先に進むことにした。
次に確保する予定の袋小路近くで後方から近づく赤い光点三つに気付いた。止まって迎え撃とうとしたが、こちらが止まると赤い光点も止まって近づいてこない。視認できない絶妙の間隔を保っている。ミニマップがなければオレも気付かなかっただろう。これはなんかきな臭い感じがするな。
しょうがないので先に進むと確保する予定の袋小路にも赤い点が三つあった。これは、やっぱり、ステラさんが言っていた盗賊ってやつなのかな?
「どうやら、この先に盗賊が待ち伏せているらしい。後ろからも追尾されている。」
「はい、そのようですね。」
アリエスが耳をピクピクさせている。
「ええ!、そうなんですか、どうしましょう?」
シルフィはオロオロうろたえてる。
「おちつけ。まず、シルフィ、今のうちにウィンドバリアを展開するんだ。」
「はい、ウィンドバリア。」
オレたちの周りに風の防壁ができる。シルフィ、アリエスの髪が風にそよぐ。
オレはウィンドボールのウィンドウを展開した。
「いいか、盗賊に会ったら。オレがまずクリックだけで前方のやつらにウィンドボールをぶつける。そしたら、全力で走ってやつらがいる袋小路の先に行くんだ。」
「「わかりました。」」
しばらく歩くと袋小路があり、ガラの悪そうな男たちが三人いた。
「おっと、ここは行き止まりだぜ。」
リーダー格らしきスキンヘッドが言った。
「引き返すにしても通行料をいただくがな。」
後ろの男たち三人も姿を現した。下卑た笑いを浮かべている。
「おっさん。いい女つれてるじゃねぇか。命だけは助けてやるから、女と金目のものを全ておいて失せな。」
「断る。こいつらはオレの女だ。誰にも渡さん。」
オレは前方の男三人をターゲットにウィンドボールを三発ずつ連続クリックして撃ち出した。
「なんだとぉ?、ずに・・・がっはぁ・・」
スキンヘッドとその左右にいた取り巻き二人がウィンドボールにあたって、のけぞる。
「今だ!」
オレたちは、駆け出した。その間もオレはクリックしてウィンドボールを撃ち続ける。
男たちは見えない拳に殴られ続けるように翻弄されている。
「こいつ、無詠唱だと・・が・・は・・」
オレたちは、男たちの横をすり抜け、袋小路の一番奥に到達した。
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オークダンジョン(2)を掌握しました。
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よっしゃあ、後はずっとオレのターンだぜ。
「このぉ、調子に乗るなよ。ウィンドボールなんか、いくら当たっても効きゃしないんだよ。」
スキンヘッドの男が振り向いて叫んだが、その目にもうオレたちは写っていないはずだ。オレの支配領域のダンジョンの壁が手前にあるからな。
「なに?、何処にいった?」
スキンヘッドはキョロキョロしている。
オレはファイヤーボールのウィンドウを開き。クリックして、一発ずつ男たちに放つ。
壁からほぼゼロ距離で放たれたファイヤーボールになすすべなく当たった男たちは燃え上がる。
「「「ぎゃああああ!!」」」
「頭!」
後方からついて来ていた男たちがその様を見て騒いでいる。
「ファイヤートルネード!」
オレはその男たちの中心をミニマップでクリックする。
ゴオォオオオ!
炎の嵐が吹き荒れた。
「「「ぎゃあああああ!」」」
炎が止むと六人の盗賊たちはすべて黒こげになって倒れていた。
アリエスとシルフィが抱きついてきた。
「さすがですご主人様。」
「私たちはずっとご主人様の女です。誰にもわたさないでください。」
二人とも若干震えている。やっぱり怖かったんだろうな、人の悪意って心にくるもんな。
オレは二人の頭を優しく撫でた。
さて、この盗賊たち、どうしようかな。
このダンジョンの入り口では冒険者ギルド職員がカードチェックをしていた。オレのような転移魔法まがいのことができれば別だが、普通に考えれば、犯罪者登録されていない冒険者カードを持っている可能性が高い。
偽造かな?なら、こいつらの体を探ってカードを持っていっても意味がないかもしれない。
しょうがない、死体ごと持って帰るか。
オレはアイテムウィンドウをドラッグして、スキンヘッドの死体にタッチした。すると死体はフッと消える。アイテムウィンドウには[ゲイルの死体]と出た。
「ご主人様、やっぱり空間魔法つかえるんですね。すごいです。」
アリエスとシルフィが目を丸くして驚いて、尊敬の眼差しを送ってくる。でも、これって空間魔法・・・なのかな?、違うような・・・ま、いっか。
残りの死体も収納して・・・・冒険者ギルドに行くか。
結局、いつもの時間に冒険者ギルドに訪れた。アリエスとシルフィはステラ邸で留守番させてある。
「おつかれさま、ステラさん。」
「おつかれさま、アキラさん。」
「ステラさん、ちょっと奥の部屋で話したいんだけど。」
「え、本当?・・・もう、アキラさんたら・・」
ステラさんが何か勘違いしているんだろう、真っ赤になって体をクネクネしている。
「盗賊のことですよ!」
「!?、わかったわ、ギルドマスターの執務室に来てちょうだい。」
オレはギルドマスターの執務室でオークダンジョンの奥で盗賊を撃退したことをステラさんに伝えた。
「確かに盗賊は偽造カードを持っている可能性が高いわね。死体はもって来たのね?」
「はい、オレの収納空間にあります。」
「収納空間・・まぁ、それはいいか。じゃあ、裏の倉庫の方に出してちょうだい。」
死体を出して、検分した後、オレたちは再びギルドマスターの執務室にいた。
ステラさんとテーブルを挟んでソファーに座っている。
「やっぱり、やつらは偽造された冒険者カードを持っていたわ。でも死体から魔力パターンを読み取って身元は特定できた。大盗賊のゲイルとその一派だった。お手柄よ、アキラさん。これはやつらに懸かっていた賞金の金貨150枚よ、それとやつらの所持金、金貨45枚、受け取って、」
「はい、ありがとうございます。」
オレはステラさんから金貨の入った袋を受け取った。
ステラさんは、立ち上がって抱きついてきた。
「でも、あんまり無茶はしないでね、あなたにもしものことがあったら、あたしもう生きていけないから。」
「はい、こんないい女置いて死にませんよ。絶対。」
オレはステラさんの頭と背中を優しく撫でながら言った。




