オークダンジョン
「アキラさん、今日からオークダンジョンに行くんですか?」
ステラさんが朝食の席で聞いてきた。テーブルにはアリエスが作ってくれたフレンチトーストにコーヒー、ハムエッグがある。
「はい、そのつもりです。」
「そう、オークダンジョンは他の冒険者も多く入っていて、人同士のトラブルになることも多いから気をつけてね。特に奥の方には盗賊が潜んでいる噂も聞くわ。もし遭遇したら、殺すのを躊躇しちゃだめよ。」
「はい。わかりました。」
絡んでくるバカがいるのか、いやだなぁ。
イネルバの街の西門に行くとレオンさんがいた。
「おはようございます。レオンさん。」
「お、アキラか、おはよう。もうコブリンダンジョンは卒業したのか。」
「はい。」
「・・・よし、OKだ。頑張れよ。」
「はい、ありがとうございます。」
西門からオークダンジョンに続く道は他とは違い、石畳で舗装されていた。ダンジョンに近づくと道の左右に串焼きなどを売る露店がちらほらと出てきた。
醤油焼きの臭いにつられて一つの露店に声をかけた。
「おっちゃん、これはオーク肉かい?」
「ああ、オーク細切れ肉の醤油焼きだ。美味いぞ。」
「三本くれ、」
「あいよ、三本で青銅貨三枚だ。」
「んじゃ、これで、」
「まいどあり、」
アリエスとシルフィに一本ずつ渡して皆で歩きながら食べた。
できたては熱々で美味かった。
「美味しいです。ご主人様。」
アリエスが醤油だれを頬につけながら笑顔で言ってきたので、指でとってやってその指を舐めると赤くなっていた。
オークダンジョンの入り口はピラミッドのようになっていた。入り口に冒険者ギルド職員がいるのは勿論、他の冒険者も多数いた。閑散としていたコブリンダンジョンとはえらい違いだ。
冒険者カードを見せて中に入った。中はこれまでと違い、石造りの人工的な壁となっており、やはり全体に薄っすら発光している。そして入り口すぐの広場もかなり人がいた。
「これは・・・・予定を変更して二番目に近い袋小路を確保しにいくぞ。」
予定では、入り口すぐの最初の袋小路を確保して帰るつもりだったが、こんなに人がいたんでは気取られる可能性が高いので、次の目標に切り替えることにした。
マップを見ながら。目的地を目指す。通路は幅十五メートルくらい、かなり広くなっている。しばらくするとミニマップに赤い点が写るもスグそばに黄色い点、他の冒険者の反応があり、戦闘中であることが伺われる。
目視できるところまで近づくと、二体のオークを五人の冒険者が囲んでいる。危なげなく戦闘をしているようなので、邪魔をしないように横を通り過ぎた。
そんな現場を三箇所通り過ぎて、目的の袋小路の直前になって、やっと赤い点二つだけの反応を見つけた。
「前方に敵二体、狩るぞ。」
「「はい。」」
「ウィンドバリア」
シルフィがバリアを展開し、オレはアイスボールを撃つ準備をした。
前方に棍棒を持った豚顔でデブの人影、オークが二体歩いてくるのが視認できた。
相手もこちらを見つけたようだ。
「プギャアアア!」
雄たけびを上げて走り寄ってくる。
「いきます。」
アリエスが左横に広がりながら突っ込んでいく。
「ウィンドカッター」
その開いた射線を用いてシルフィがすかさずウィンドカッターを叩き込む。
オレはクリック連打でもう片方のオークにアイスボールを五つ叩き込む。
ザシュ!
シルフィのウィンドカッターがオークの顔に突き刺さった。
ザシュ!
怯んだオークの首をアリエスのロングソードが叩き落した。
ドンドンドンドンドン!
オレが狙ったオークはなすすべなく氷付けとなっていた。
近寄って鋼の傘でついてトドメをさす。
オークたちは光の粒子となって消えていった。
後にはそれぞれ白い魔石と肉塊が残っていた。
「ご主人様、ロースがでましたよ!」
アリエスが嬉しそうにドロップアイテムを持ってきてくれた。どうやらロースは当たりらしい。
もう片方は、モモ肉だった。ロースの方は後で皆で食べるか。
魔石をアイテムウィンドウにいれるとオークの魔石(小)となっていた。
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オークダンジョン(1)を掌握しました。
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「よし、今回はこれで戻ろう。」
無事人気のなくなったダンジョンの袋小路の一つを確保し、オレたちは引き返した。




