ギルドマスターステラ
あたしはステラ、イネルバの街の冒険者ギルドのマスターだ。
このイネルバはダンジョンから産出される素材で経済が回っている。それだけに冒険者の数も多く、ポーションの需要は大きい。
だが、それに対する供給は薬師ギルドの劣悪なもののみだった。人の手で作り出されるポーションはどうしても出来上がりにムラができるし、時間がたてば劣化もしてしまう。非常に品質管理が厄介な代物だ。
それに対してダンジョンから産出されるポーションは品質は高くて均一、そして劣化がまったくない。つまり、いくらでも備蓄ができて、市場に対する供給調整が自由自在なのだ。
しかし、このイネルバ周辺にはポーションをドロップしてくれるスライムが出現するダンジョンがない・・・・はずだった。
数日前に訪れた新人冒険者、アキラさんはスライムの魔石を大量に買取りに出してきた。
これは彼がダンジョンでスライムを倒し、ほぼ100%ドロップするといわれているポーション、マジックポーションも大量に所持しているであろうことを意味する。
次に彼が訪れた時、前回以上の大量のスライムの魔石を買取りに出してきた。
あたしは、彼を二階の個室に連れていき、ポーション、マジックポーションも買取りに出してくれるように懇願した。あまり自信はなかったが自分の体を使って誘惑してみた。
彼はあたしの体に夢中になってくれた。そして、信じられないほど多くのポーション、マジックポーションを買取りに出してくれたのだ。
そして、あたしはその功績が認められ、もともと空席だったここのギルドマスターに大抜擢された。
いまのあたしがあるのはアキラさんのおかげだ。彼にはとても感謝している。だから、あたしは今もギルドの受付に立つ。アキラさんが狙ってきているであろう朝の混雑時間が過ぎた時間に・・・
今日も朝の混雑がひと段落し、現在ギルド内は閑散としている。あたしは受付の子に声をかける。
「メアリー交替するわ。一休みしてちょうだい。」
「はあい、マスター。よろしくお願いします。・・・待ち人来るといいですね。」
「ふふ、そうね。」
部下の子にからかわれるのも、なにか楽しい。あたしは、アキラさんに恋をしてるのかもしれない。ポーション目当てで誘惑したのは事実だが、最近、いつも気がつけば、アキラさんのことを考えている。アキラさんの事を考えると胸がくるしい。とても切なくなる。
開け放たれたギルドの扉から遠くに人影が見えた・・・・あの歩き方は・・・アキラさんだ!、
「おはようございます。ステラさん。」
「おはようございます。アキラさん。」
「ステラさん。ギルドマスターになったそうですね。メアリーさんに聞きましたよ。おめでとうございます。」
「ありがとうございます。これも、アキラさんのお陰です。」
「お祝いにってのも、おかしな言い方ですけど、今日はすごいものを買取りにだしちゃいますよ。」
「あら、何かしら?、期待しちゃうわね。」
ちょっと待ってアキラさん。それを最初から出しちゃうと二階に行く口実がなくなっちゃうんじゃないの?
「それでは、このトレイにお願いします。」
あたしは、アキラさん用に用意した特大トレイを出す。
アキラさんは、リュックから次々と品物を出して、トレイに入れていく。あれって、魔法の鞄よね?、どう考えても入ってる量がおかしいもの。
次々に品物が入れられていき、最後に出てきた物に、あたしの目は釘付けになった。あ、あれは、ハイポーション?、アリエスちゃんの大怪我を治したって聞いてたからもしやと思ってたけど・・・やっぱり持っていたのね。
「では、これでお願いします。」
「は、はい、少々お待ちください。」
あたしは、高鳴る鼓動を気取られないように、トレイを奥の査定室に持っていった。
・・・たしかにハイポーションだわ、それも五本。これがあれば大怪我で引退を余儀なくされた高レベル冒険者の復職も夢じゃないわ。本当になんてもの持ち込んでくれたの、アキラさん・・・ありがとう。
でも、これじゃあ、二階に行けないじゃないの、どうしてくれるのこの火照った体。
「おまたせしました。今回新たに出してくださいました。スライムの魔石大は金貨一枚。ハイポーションは白金貨一枚で買い取らせていただきます。それがそれぞれ5こずつ。コブリンの魔石小が43、中が7、コブリンの短剣が7本で、合計で白金貨5枚、金貨7枚、銀貨9枚、銅貨6枚となります。お確かめください。」
「確かに、ありがとうございます。」
「ありがとうございました。」
あ、アキラさんが行っちゃう。もう、もう、もう!!、アキラさんのばかぁ。
このムラムラした気持ちどうしてくれるのよぉ。こうなったら、アキラさんの家に押しかけて襲っちゃおうかしら、でも、アキラさんの住所、いまだにわからないのよねぇ。




