新たな仲間と王様
用意された服は、まるで事前に俺の体のサイズを測ったんじゃと疑う位ぴったりだった。女の子にそれを言うと、
「それはまあ貴方の夢ですから」
と返されてしまった(笑)当たり前だな。
部屋を出て、長く広い廊下を歩ていると、こちらです。と言われる。言われるまま扉を開けると、長い長いレッドカーペットがあり、その先にはふかふかで深紅の玉座に王様がふんぞり返っていた。
なんとなくひざまずいとけば良い気がしたので((
とりあえずひざまずく。王様はそれに満足したかのように、フフンと笑った。
(どうすればいいんだ…?)
周りをちらっと見渡すと、王様の警護をしているのであろう、綺麗に並んでいる兵士の間からあの女の子が口パクで、
(あいさつをして下さい)
と、かろうじて読み取れたので、うやうやしく王様に言う。
「現実世界から参りました勇者です。王様、お目にかかれて光栄です。」
うむ、我ながら完璧だ。自分で自分を褒めていると、王様が言った。
「よく来たな、勇者よ。君をずっと待っておった。…さて、私は年だから君の名前を忘れてしまった。もう一度、私に教えてくれるかの?」
なるほど。これは名前を入力するパターンのRPGか。
だから目覚めたとき、
「おはようございます、〇〇さん。」
と言われたのか…
それにしても、名前、か。んー…あ!これにしよう。
「カインドです。」
特に理由はない。なんとなくRPGにいそうな気がしたのだ。
王様は無邪気な子供のように、
「そうそう、カインドという名前じゃったな。今思いだしたわい。フォッフオッフオッ」
楽しそうに笑う王様。内心今思いだしたなんて嘘だろ…とか思ってた俺(笑)
でも、まだまだ聞きたい事はいっぱいある。RPGなら、仲間がいるはずなんだ。それか、変な動物とか。
そこで俺は、おずおずと王様に尋ねようとする。しかし、王様はそれを察したかのように話を続ける。
「あぁ、わかっておる。仲間じゃろ?1人目の仲間は、マリーに任せようと思う。2人目以降は自分で見つけておくれ。おぅい、マリー!マリー!」
すると、どこから出て来たのか、俺の隣にあの女の子が立っていた。女の子はスカートの裾を少し持ち上げ、上品に挨拶をしてくれた。
「申し遅れました。今回、ご一緒に冒険をさせて頂く、マリーフレア・アスカルドです。お気軽にマリーとお呼び下さい。」
女の子…もといマリーさんが仲間のようだ…マリーさんはさっきのメイド服ではなく、実用性が高く、なおかつ上品な冒険用の服を着ている。髪もポニーテールだ。
やはりとても綺麗な人だ。これなら冒険も頑張れる気がする。
そうやる気を出している俺に王様は玉座をスッと立ち、ツカツカとこっちに近寄ってきた。
「君たちは今から冒険に行く。まずは、カールラミア平原を目指しなさい。あ、これ餞別の金の延べ棒な。じゃあ頑張っておくれ。」
うわまじで金の延べ棒だ…正直使い道はわからなかったが、一応貰っておく。マリーさんも実用するのか…?という顔をしていた(笑)
お城を出て、外の空気を吸う。とても広いワールドだ。正直何日かかるのだろうと思っていたが、隣にいるマリーさんはわくわくしているようだ。表情こそ無表情だが、目がキラキラしていた。
そして俺に言った。
「カインドさん。必ず、魔王を倒して元の世界に帰りましょう」