不名誉な召喚
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ハッと目が覚めると、とても煌びやかで豪華なベッドに寝かされていた。
ガバッと跳ね起き、現状を把握する為にキョロキョロとあたりを見渡す。パーティーができそうなくらいだだっ広い部屋。ふかふかで低反発なキングサイズのベッド。
そして隣には…メイド服の15歳くらいの女の子が、にこにこして立っていた。
「おはようございます、〇〇さん」
そして優雅にお辞儀をする。その仕草は、まるで洗練された老執事のようだった。
俺は困惑して、その女の子に説明を求めようとした。
しかし、その思惑を察したようで、女の子は話し始めた。
「困惑しているようですね。無理もありません。」
そして、水を1杯持ってきてくれた。
飲んで大丈夫なのだろうか…と思いもしたが、喉の渇きに逆らえず、ゴクゴクをコップをからにする。
「一息ついたようですね。では、簡単に。唐突ですが、この世界は、貴方の夢の中です。」
え?ゆ、夢の中だって!?それにしては、嫌にリアル過ぎないか!?
そんな俺の考えをよそに、女の子は話し続ける。
「実は、北の大地で恐ろしい魔王が出現しまして、それで王様の命令により、現実世界でRPGゲームを1番やりこんでいる貴方を召喚致しました。要するに、勇者にあたります。」
メターい。でもたしかに、王様、魔王、勇者、なんてキーワード、RPGの世界だ。
にしても…RPG、そんなにやりこんでたのか、俺。
でも、夢の世界なら、ほっぺをつねれば目覚めるんじゃ…
「ほっぺをつねった所で、この世界からは脱出出来ません。魔王を倒さない限り。それにもし、この世界で死んだら、現実世界でもジ・エンドです。」
ジ・エンド…。それはつまり…
「死ぬ、という事か?」
「はい。」
サーッと血の気が引いていくのがわかる。魔王なんて、俺が倒せるわけがない。俺の人生、これで終わりか……。
「大丈夫ですよ。RPGなら、やりなれているでしょう?ゲームと同じようにやれば、すぐ脱出出来ますよ。」
にこり、と女の子は微笑む。ちょっと怪しい気もしたが、今は信じるしかない。
その時、チリンチリーンと遠くで音がした。すると女の子はいかにも勇者!という服を俺に渡してきた。
「着替えてください。王様がお呼びです。」
着替えながら、俺は思った。なんか…上手いこと頑張ろう、と。