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転生魔王の高校生活  作者: 咲実
第一章 入学式と言う名の始まり
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1魔目 魔王は登校するのも大変

4月……日本とは四季のうち春と呼ばれ始まりの月でもある。人によっては新たな出会いや新たな学校……人によっては職場に向かうものもいるかもしれない。


そして角を曲がれば食パンを加えた可愛い女の子と出会ったりとかするんだろう。そして東京の池袋に向かう男が一人……名前は鳴海 善人(よしひと)と言う。今年高校一年になった男だ。彼は自宅から学校に向かいつつ待ち合わせ時間に間に合うように急ぎ足だ。そして角を曲がった瞬間……巨大トラックとかち合った……


「あ……」


ガツン!っとでかい音をたて善人は吹っ飛んだ……間違いなくこれで死んだ……体はぐちゃぐちゃ血みどろで見るも無惨だろう。見るに耐えないのはすぐに予想がついた……そのため運転手はぶつけた光景を見ることができなかった。


そのため気づかなかった……ぶつけられた善人は普通(・・)に立って(・・・・)何かを呟いたのを……













「遅いわね……」


そう呟いたのは可愛い少女だ。赤みがかったセミロングの髪は見るものを魅了し、背は普通くらいだがスタイルも良い。声は低めだが人をどこか惹き付けるし少しつり上がった目はMな男子には人気が出そうだ。


彼女は高橋 聖華(せいか)……ここで待ち人がくるのだが明らかに時間をオーバーしている。大方また寝坊したのだろう。昔からそうである。すると、


「ワリィ遅れた」

「遅すぎ」


やって来たのは善人……まあ待ち人と言うのはお分かりだと思うがこいつである。


「で?何だって今日着たのが初めてのはずの制服がそんなに汚れてるの?」

「そこでトラック跳ねられた」

「あんたね……」


聖華は頭を抑える。別に怪我どうこうではない。そんな程度で怪我する体ではないのは周知だ。


「見られたの?」

「いや、跳ねた事実に驚いてこっち見てなかった。まあ跳ねたこと事態忘れさせた(・ ・ ・ ・ ・)から大丈夫だろ」

「運転手は良いけど見られてないわよね?」

「それならわかるって」


善人が言うと聖華も肩を落とす。もういいといった感じだ。


「行きましょ、学校にまで遅れたくないでしょ?」

「ああ」


善人と聖華はそう言ってあるきだした。












先程から何をいってるのか分からないと言う人もいるかもしれないため今のうちに説明しておこう。


この二人はまず人間ではない。いや、人間として生を受けてはいるものの体が人間ではないのだ。


まあトラックに吹き飛ばされても平気なやつが人間と言われてもそれこそ信じられないだろうが……


そしてその正体であるが……この二人はこっちの世界から見れば異世界と呼ばれる世界にて【魔族】と呼ばれる種の生き物だ。今は何故か魔族の肉体のまま人間の両親から生まれると言う不可思議な転生の仕方をして魔術等々を駆使して学校の健康診断を人間として診断されるようにしているが正真正銘魔族である。しかもただの魔族ではない。



まず善人は魔族の中でもトップに君臨した男でその当時は魔王・サタンと呼ばれた。圧倒的な魔力と身体能力(まあ人間から見れば魔族は全て身体能力高いのだが)と88の眷属魔獣を操る最強の存在……その力をもって魔界を治める最強と呼ばれた存在だった。



そして聖華……彼女はサタンだった頃の右腕・ルキフグス。

善人がサタンだった頃から色々世話になり面倒な書類整理とかやってもらったりもしていたし、精神的にも支えられていた。しかし何故かこの世界ではルシファーとかアスタロトとか魔族でも偉い部類におかれるけど異世界では万年平社員と言うか窓際に追いやられるタイプだった。


まあそれは置いておくとしてだ……とにかく所謂この二人は転生者なのだ。

何で転生したかと言うと……まあ死んだからだ。殺されたといっても良い。または討伐されたとも言える。


元々魔族は嫌われ者だ。見た目怖いし人を騙すし嘘もつく殺す。だがそれは人も同じだろうと思うが魔族は嫌われ者であるのに違いはなく挙げ句の果て天界が人間にいらん力を与えその中から勇者が出てきてその仲間も出てきて……遂に魔王城での決戦を迎えサタンだった善人もルキフグスだった聖華も善戦したが結局首を跳ねられて死んだ……


だが勘違いしてほしくないのだが別に殺されたことに関して恨みはない。なぜなら結局弱かったこっちが悪いのだ。魔族は完全実力主義で負けたのは弱いからこそ……勝った相手に恨みを持つのは所詮負け犬の戯れ言でしかない……というのが魔族だ。ドライともとれるがそれが性質だとしか言えない。


それに今は今で別の目標がある。死んで人間として人生に生まれ変わり(体は魔族のままだけど)……しかもここは外国では戦争があるにせよ基本的に平和だし襲われることもない。ビバ平和だ。人の上に責任を感じる必要もないし勇者に聖なる力を向けられない。痛い目に遇う必要もないと最高の世界に来たのだ。


今まで病気はせず(この世界に魔族を犯せる病原菌は存在しない)健康診断は全て魔術で暗示をかけて切り抜けてまで維持し続けた(まず注射針が刺さらないし血なんぞ抜かれれば人間じゃないことがすぐにばれるから)平和……ならば目指すはこのまま平和な人生だ。そう……転生した魔王・サタンこと鳴海 善人の目標は《公務員》である。













「おい、あれって鳴海 善人じゃね?」


学校に近づくにつれ人が増えてくると誰かが呟いた。


「マジかよ……《血海 魔人》かよ……」


血海 魔人……失礼きわまりないこのアダ名は中学時代まで遡る必要があるのだが善人は190ちょっとの身長に肩幅もあり筋肉質だ。しかも眼もつり上がり気味で鋭い眼光である。これで目立たないわけなく喧嘩を毎日吹っ掛けられ仕方なく応戦……魔族である善人が負けるはずがなく返り討ちにするのだが血から加減を失敗して大怪我させたことがあり返り血で髪まで真っ赤になったことがあった。それ以来血の海に濡れ悪魔みたいな人間と言う意味でとんでもないあだ名をつけられた。

と言うか善人は悪魔ではなく魔族である。因みに悪魔は異世界では魔族のパシリとして扱われている。


因みに大ケガさせてしまったやつは魔術で少し痛い目にあった程度まで大急ぎで修復しておいた。


だが高校にまで噂が流れてるとは……面倒だ。すると、


「あれ?隣歩いてるのかわいくね?」

「すっげぇ可愛いじゃん」


聖華が別の意味で目立った。まあそうだろう。男型の魔族は基本的に恐ろしい容貌だ。


余談だが魔族には男型、女型、獣型と3種が存在し、こちらの世界でオークとかみたいな容貌が獣型で善人や聖華のような人間に近い姿をしたもはそれぞれ男型と女型と称される。


そして女型は基本的に綺麗だ。何せ男の精吸い取る種族もあるくらいで(聖華は違うが……)男女問わずに息を飲むような容姿が多い。


そのため聖華は目を引くのだ。そのため昔から一緒にいると《美女と野獣》と呼ばれた。

なので告白も多くされたが全部断っている。何故か……は何となくわかっている。いや、良く気付かない小説のキャラとかいるがそう言うのとは善人は違った。デリカシーとか細かい女心に気付くほどの機微はないが聖華が自分に対してどのような想いを向けてるのか分かるくらいには聡かった。


無論、既に魔王時代の分まで含めて数千年単位になる付き合いになる相手をそういう風に見れるかは別だ。いや、綺麗だし好きだとは思う。ただそれがLIKEの好きかLOVEの好きかの区別がつかない。だからもう少しだけこのままの関係でいたい……


(と思い続けて既に十六年目に突入するんだよな……)


そんなことを内心ボヤきつつ善人は聖華と共に校門を潜る。





こうして始まるのだ日常的に味わうことになる非日常……平和と普通を望む魔王の混沌と異変の高校生活が……幕を開けたのだ。

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