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6話 初日

周りには何もない空間、そこに少女と9つの頭を持った蛇がいた。


「どうですか彼は?」

「今のところはいい感じ。女の子を連れて旅に出たところだよ」

その蛇は見た目に合わない少年のような声で話す。


「女の子ですか……」

少女は眉間にしわを寄せる。


「あはははは、そう嫉妬しないの。でも今回は上手くいきそうじゃない?」

少年は軽やかに楽しそうに笑う。


「嫉妬なんかしていません! 上手くいくでしょうか……」

「まあ、上手くいかなくてもフォローはするさ。ま、僕は

 あんまり干渉できないけどさ」


「どうか無事で帰ってきますように……」



----



俺とラフはまず魔物の村を見て回ることにした。

まず比較的人間と仲が良いという村に行ってみることにした。

その村はいた村から歩いて二日ぐらいらしい。

いくら争いが終わったとはいえ、まだ人間と魔物はそんなに仲良くなったわけでもない。

そもそも魔物と人間が一緒に行動することが危険だよな。


「龍になって飛んでいくのはだめかな?」


「だめです。龍の姿はこの姿より疲れます。それに龍になったら目立つじゃないですか」


「目立つって?」


「龍は珍しいんですよ。私も家族以外の龍とはあったことがありません」


「そうなのか、てっきり普通にいるものかと」

龍は珍しいものなのか。普通に群れで飛んでいたりするのかと

思っていた。しばらく雑談しながら森の中を歩く。


「遠いなぁ」

もう日も暮れてきている。あの村はどれだけ

はずれにあったんだよ。


「ここ辺りで野宿しますか。もうすぐ結界の外ですしね。

 まあ、結界があるとはいえ前みたいに誰か来るかも知れませんが」


「えっ? まだ結界の中だったの?」

今日一日朝からずっと歩いていたというのに……

その結界とやらはどんだけ広いんだよ。


二人で野宿の準備を始める。

といっても火もすぐにつくので燃えるものを集めるだけだが。


ラフが作ってくれた食事を食べる。

「やっぱり、おいしいな」

そう、本当においしい。この世界に来てから

おいしいものしか食べてないなぁ。


「ありがとうございます。これくらいでよければいつでも作りますよ」

いつでもか……

「これなら毎日作って欲しいな」

「ま、毎日ってそれって!? つまりっ」


「どうしたんだ? そんなに慌てて。これからの旅で毎日一緒じゃないか?」

「ああ……そういうことですね……」


ラフが明らかに落ち込む。なぜ落ち込むんだ?

ひょっとして毎日って、ラフはそういうことを想像していたのだろうか。

でも、その発想になるのはおかしくないか。

どうしてそうなる。


その後、俺は魔法の練習していた。

といってもまだ火、氷以外は使えない。


村で魔法について様々な話を聞いた。

魔法とは、魔素を使って様々な現象を起こすことらしい。

基本的にこの世界で起こっていることでできないことはないらしい。

もちろん欠点もある。魔法は体力を使う。

干渉する魔素が多ければ多いほど体力を使うのだ。


起こすための方法は二種類ある。

魔素に干渉し、イメージで起こす方法と特定の言葉、魔言を唱える方法だ。


これには長所、短所がある。

イメージだけで起こす方法だと、よっぽど強くイメージしなければ

ならない。魔言はこれと違ってすぐに使うことができる。

しかし魔言だと使えるものが限られてしまう。特定のものしか

使うことができないのだ。イメージで起こす方法はそれと違って

幅広く、様々なものを使うことができる。



そういえば魔法を使えるようになってから拳銃を使ってない。

いまなら撃つこともできるだろう。

そう思い、銃を取り出し構える。


「ライさん? 何をしているんですか?」

ラフが隣から聞いてくる。


「まあ、みてな」

今なら魔力もある。

周りの魔素に干渉し拳銃にこめる。不思議と拳銃が少し重くなった気がした。

そのまま引き金を引く。パンッという乾いた音が響く。

目の前の木に穴が空いていた。後ろの木にも穴が空いているようだ。

どこまで貫通しているんだろうか。

まさかこんなに威力が高いとは。


「うわっ、驚きました。なんですかそれ?」

「拳銃っていって……まあ、俺のいた世界にあったものかな」

「そうなんですか。私を助けてくれた時もこれを使ったんですか?」


「いや、その時は使ってないな」

「すごい威力ですね……」

俺も驚いていた。


そういえばワープは魔法なのだろうか?

魔素についても意識したことはないが……


「そういえばもう一つ見てほしいものがある。ワープというんだが、

 ちょっと見ていてくれないか」


「はい? 分かりました」

村では結局使うことはなかった。

これから一緒に旅をすることになるんだし見せておいたほうがいいよな。

そう思いワープを使いラフの後ろに移動する。


「えっ! ライさん!?」

「後ろだよ」

「えっ?」


ラフが後ろを振り向く。

またラフの後ろにワープする。

「ええっ!? あれ!?」


「これが俺の持っている魔法? みたいなものかな」


「瞬間移動みたいなものですか……?」

まあそんなものだな。

俺はワープについて説明する。


「それって魔法ですかね? 近いところなら一瞬で、

 遠いところだとイメージしないといけないところなんてそっくりですよね。

 なにか消費するものとかあるんですかね?」

そう言われてみればそうだ。魔法とそっくりだ。

そういえばワープを使うとき心なしか疲れている気がする。


「それがあればいつでも村にも帰れますね」

「そうだな」

やっぱり村のことがまだ気になっているのだろうか。

まあワープがあればいつでも帰れる。そう心配することも

ないだろう。



そうしている内夜も遅くなっていた。

「そろそろ寝るか。俺が先に見張りをするから」

まだ結界の中とはいえ見張りは必要だろう。


「いえっそんないいですよ。連れてきてもらったんだし私がやりますよ」

「いいって。途中で変わってもらうしな」

「絶対ですよ? 絶対起こしてくださいよ?」

「分かった分かった」

まだ納得していないようだったがしぶしぶ寝始めた。

ひょっとしてずっと見張りをする気だったんじゃないよな?



暇だ……

特にすることもないので魔法の練習を始める。




「もうそろそろ変わってもらおうかな」

魔法の練習始めてから大分時間が経った。

ラフを起こそうとする。


「ラフ、おーい」

「んにゃ……」

「起きろー」

「ライさん?」

ラフが目を開けこっちを見る。

お、起きたかな?


「大好きです」

えっと……俺は告白されたんだろうか?

ちょ、えっ?今確かに……

俺が焦っているとラフはまた目を閉じ寝息を立てて眠り始めた。


「くぅ……」


寝言だったのか。

そうだよな。寝言だよな。


ラフに告白されたのかと思って喜んでしまった。

なんか起こしにくくなってしまった。

気持ちよさそうに眠っているなぁ……


結局そのまま朝まで見張りを続けた。


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